お達者!人間よりもうまくリズムを刻むことができるアシカの能力が証明される

2025年5月10日(土)8時0分 カラパイア


リズム感がすごすぎるアシカのロナン PHOTO BY COLLEEN REICHMUTH; NOAA/NMFS 23554


 動物たちが音楽のリズムやビートなどの要素を認識できるかを探る「生物音楽性(biomusicality)」の研究は、生物学と心理学が交差する魅力的な分野だ。


 そんな中、世界的に話題となった「リズムに合わせて頭を振る」能力を持つカリフォルニアアシカが、再び注目を集めている。


 カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCサンタクルーズ)の訓練されたアシカのロナン(16歳、メス)は、新たな研究で、リズム感において人間と同等かそれ以上の精度を示したのだ。


人間顔負けの正確なリズム感を持つアシカ


 カリフォルニアアシカのロナンさん(16歳、メス)のリズム感を証明したのは、米国カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究チームだ。


 ロナンさんのほか、大学生10人が参加したその実験では、112・120・128 BPMのテンポに設定したメトロノームに合わせてリズムを刻んでもらい、その正確さを計測した。


 ロナンさんにとってこの類の実験は初めてではないのだが、112 BPMと128 BPMは未体験。それでもリズミカルなヘッドボブを披露してくれた。


 だが比較的慣れている120 BPMでは、平均15ミリ秒以内の誤差でリズムを刻むことができたという。


 15ミリ秒とは、人間のまばたきの10分の1ほどの一瞬の時間だ。そのリズム感は、参加した大学生たちと同レベルか、それを上回る素晴らしいものだった。



2013年、ロナンさんのリズム感が注目を集める


 2008年生まれのロナンさんは、もともと野生のアシカだった。


 だが栄養状態がよくなく、何度も座礁を繰り返し、挙げ句の果てに道路を歩いているところを発見された。


 当局はそのような状態のアシカを野生に戻すことはできないと判断し、最終的にカリフォルニア大学サンタクルーズ校ピンニペッド研究所に引き取られることになった。


 そこでロナンさんが参加した2013年の研究が、専門家に衝撃を与えることになる。


 それ以前、音楽に合わせて踊るオウムの研究では、音楽のリズムを感じるためには、脳が音声を学習できるよう進化している必要があるとされてきた。


 ところがロナンさんが、この仮説を覆した。アシカは音声を学習できない。それなのに的確なリズム感があることを証明したのだ。



上位1%のリズム感、モデル比較で示された驚異の精度


 だがこの研究に対しては、人間ほどの正確性がないという批判もあった。


 そうした懐疑的な意見によると、ロナンさんのリズム感は、人間とは違う生物学的メカニズムによるもので、人間がリズムを刻むのとまったく同じではないのだという。


 そこでピーター・クック氏ら研究チームは、ロナンさんのリズム感を証明するべく、再度実験を行うことにした。


 今回の研究では、学生たちのデータを用いて、1万人の人間が同じ課題に挑んだと仮定したモデルが作成された。


 その結果、ロナンはリズム精度において「99パーセンタイル」、つまり上位1%に位置することが示された。



リズム感抜群のロナン Joel Sartore/Photo Ark. NMFS 23554


無理な訓練はさせていない。やる気があるときだけ


 現在16歳、体重は約77kg。飼育下で暮らすアシカの寿命は20〜30年ほどといわれている。


 研究者たちは、長年の日々を共に過ごす中でロナンの知性と元気な性格を深く理解している。


 ロナンのパフォーマンスも、人間と同じく練習により確実に向上するという。


 ライヒムス氏はこう語る。「今回の研究で大事なのは、リズム能力だけではなく、経験や成熟が能力にどう影響するかを示した点です。彼女の行動は、単なる反応ではなく、記憶と認知の結果なのです。」


 また、ロナン自身にも意欲がある。彼女がステーションに登るのは「やる気があるとき」だけ。もしその日気分が乗らなければ、実験は行わない。


「彼女にとってこれは“勝ち方を知っているゲーム”なんです。そして、その勝利のご褒美の魚が大好きなんですよ」とライヒムス氏は微笑む。


 実際、彼女が経験したリズムの合計時間は、1歳の人間の子どもが耳にする音楽量に及ばないだろうという。


 それでも10年以上にわたる観察で、ロナンさんのリズム感が向上していることが確認されている。



動物と音楽に関する研究が進む


 生物音楽性(biomusicality)は、動物が音楽の要素(リズムやメロディなど)を知覚・認識・反応できるかを探る学際的研究分野だ。


 ロナンさんの2013年の研究以来、霊長類・ゾウ・鳥類・人間など、種を変えて同じような研究がいくつも発表されてきた。


 カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究チームもまた、種を超えたリズム感の謎の解明に今後も挑んでいく予定だ。



音楽大好きロナンさん PHOTO BY COLLEEN REICHMUTH; NOAA/NMFS 23554


犬は音楽に合わせて踊れるか?


 これに関連し、クック氏が1つ興味深いことを指摘している。


 それは犬のリズム感についてだ。人間と一緒に暮らす犬は、アシカよりもずっと音楽に触れる機会が多いはずだ。だが犬が踊るという話はあまり聞いたことがない。なぜなのか?


 この疑問について、クック氏は「犬にリズムに合わせて踊らせようと、本気で試みた人がどれほどいるでしょうか?」と、ニュースリリース[https://www.eurekalert.org/news-releases/1082071]で問いかけている。


 踊る犬が珍しいからといって、本当に踊れないかどうかは、きちんと検証してみなければわからない。それが科学だ。


 本気で犬にそのような訓練をすれば、じつのところ踊れるのかもしれない。クック氏もそう考えている。


 「十分な時間をかければ、ボーダーコリーあたりならロナンと同じようなことができるだろうと私は思っています」


 実際に2024年のアメリカのテレビ番組「アメリカズ・ゴット・タレント」では、クイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」に合わせて、ボーダーコリーのリズム氏が、飼い主と息の合ったダンスを[https://karapaia.com/archives/52334076.html]披露した。


  この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-025-95279-1]』(2024年5月1日付)に掲載された。


References: https://www.eurekalert.org/news-releases/1082071[https://www.eurekalert.org/news-releases/1082071]

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