種の垣根を越えて移動する遺伝子があるという説が、進化の常識に一石を投じる(オーストラリア研究)

7月28日(土)9時30分 カラパイア

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 あなたは遺伝子をどこから手に入れただろうか?
 
 明確な答えは両親だ。卵子と精子の結合が、あなたを作る遺伝子のユニークな組み合わせをもたらした。

 だが、最新の研究はこの常識に一石を投じる。人体に存在する遺伝物質のかなりの部分が、かつて他の種から飛び込んできたものだというのだ。

 これはカモノハシからヒトまで、動物の進化の重要な推進力なのかもしれない。

・DNAの水平移動という説

 『Genome Biology』に研究論文を掲載したオーストラリア・アデレード大学ポスドク課程のアトマ・イヴァンチェビッチ氏によれば、相当な量のDNAが水平移動するという説は、ヒトや動物の由来の理解を変えてしまう可能性があるという。
 
 最初から解説しよう。まず、跳躍する遺伝子は本当の遺伝子ではない。それは遺伝子の間にある非コード遺伝物質である転移遺伝因子だ。

 人間にはこれが大量にあるが(ゲノムの半分以上が、転移因子で構成される)、その役割の多くは謎とされている。「その1つの役割が、できる限り自己を複製することのようです」とイヴァンチェビッチ氏は話す。

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・転移因子BovB(Bovine-B)とL1

 彼女のスーパーバイザーで、研究論文の共著者でもあるデビッド・アデルソン氏は以前、BovB(Bovine-B)という転移因子が、サイ、トカゲ、カモノハシといった異なる種の間を飛び跳ねていることを発見していた。

 これを詳しく調べるために、すでにゲノム解析が完了している759種の動植物や菌類を対象に、BovBとやはり転移因子であるL1があるかどうか探してみた。

 BovBが異種間を移動できることはあらかじめ分かっていたので、まずこちらの追跡を始めた。その結果、一部のBovBが少なくとも2度はカエルとコウモリの間を転移していたことが判明した。

 またイヴァンチェビッチ氏によれば、ヘビ由来のBovBがウシとヒツジのゲノムの25パーセント以上を構成していたという。

 さらにヒトゲノムの約17パーセントを構成し、BovBよりもおそらくずっと古いL1を追跡した結果、これもまた水平移動するらしいことが初めて確認された。

 こちらは数多くの動植物種に存在し、今回調査した哺乳類の中ではカモノハシとハリモグラ(単孔類。現存する哺乳類として唯一卵を産むグループ)を除く、すべてで確認された。

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 この結果から、この転移因子は単孔類には存在しない可能性が高く、1億6000万年から1億9100万年前のどこかの時点で共通の祖先に転移したと結論づけられた。


・転移因子は寄生虫などを媒介して様々な生物のDNAに侵入した可能性

 イヴァンチェビッチ氏には、そのメカニズムに関する仮説もある。

 決定的なのは、BovBがトコジラミやヒルのような害虫、L1が環節動物やカキのような水棲寄生虫にも発見されたことだ。

 このことから、転移因子は寄生虫あるいはノミや蚊のような吸血生物を媒介して様々な生物のDNAに侵入したのではと推測されている。

 コウモリもまた役割を果たしている可能性がある。

 転移因子は多くのオオコウモリ種で機能しておらず、それはその餌となる昆虫のために水平的な遺伝子伝達が特に起こりやすいことが原因かもしれない。

 つまり、コウモリは自分の体内にあるこれらの因子を抑制する能力を発達させたように思われるのである。そして、同時に、それを他の種に伝達する宿主として振舞っている。
 
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・転移因子のメリットとデメリット

 こうした転移因子のすべてが本質的に悪いわけではない。

 イヴァンチェビッチ氏は、L1がガンや統合失調症のような神経疾患と関連している可能性がある一方で、他の転移因子が胎盤の形成や免疫系を助けている可能性も指摘する。

 彼女は「それが偶然にもメリットとデメリットの両方の作用を発揮していることを示す証拠があります」と説明しつつ、人間のL1もまた機能していないことを付け加えた。

 「まるでゲノムはそれを利用しようとしているか、その機能を黙らせているかのようです」

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・遺伝子の平行移動

 英プリマス大学のキアラ・ボスケッティ氏(今回の研究には参加してない)によると、こうした研究は、これまで”がらくた”と考えられてきた因子も、遺伝子の機能や制御に関連する重要な役割を果たしている可能性があることを示しているという。

 いくつかの事例では、これがDNAの分離や複製、さらには染色体の機能にまで影響を与えている可能性すら窺えるようだ。

 細菌の間では遺伝物質が水平的に移動することはかねてから知られていた。

 これは細菌が抗生物質への耐性を素早く身につけられる理由でもある。しかしもっと複雑な生物でもこれを行なっていることが判明した現在、この知見はますます重要なものとなるだろう。

 このメカニズムがあらゆる生命にランダムでダイナミックな因子を与えているのだ。

References:genomebiology / pnas/ written by hiroching / edited by parumo

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