犬の視覚の話〜犬には世界がどう見えているのか?

9月3日(日)7時0分 the WOOF

私たちは、自分たちに見えているものが犬にも見えていると思いがちですが、犬と人間では世界を同じようには見ていません。人間がもし犬の目を通して世界を見たら、細部はぼやけ、色が褪せて見えるため、とても不安になるでしょう。


我らが愛する犬たちには、世界はどう見えているのでしょうか?


この記事にはこんなことが書いてあるよ!




焦点を合わせる力は弱い



人間の目は遠近順応に優れ、遠くにあるものも近くにあるものにも焦点を合わせて見ることができます。筋肉を調節して水晶体の厚みを調整することで、近くにあるものにも遠くにあるものにも、うまいこと焦点を合わせるのです。一方の犬はこの遠近順応の能力が優れていません。近くにあるもの(70cm以内のもの)には焦点が合わず、ぼんやりとしか見えません


静止視力は悪い


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image by Dawid Sobolewski / unsplash


私たちが一般的に”視力”というとき、そして視力検査で測られる視力は、動いていない物を識別する能力のことを言います。犬の静止視力は人間に比べ4〜8倍悪いそうで[1]、これはPCなどでブラウザの解像度を下げてみると疑似体験ができます。


犬は近視にも遠視にもなり得ます。正視とは「目に屈折異常がない状態」のことで、近視は物の焦点が網膜より前で合う状態、遠視は網膜より後方で焦点が合う状態のことです。1997年に発表された論文[2]によれば、対象となった200以上の犬について全体の平均は正視、一部に遠視や近視の犬も見られたということです。犬種によって違いがある(ジャーマン・シェパードやロットワイラーに近視が多い)という研究もありますが、そうでない研究もあり、はっきりとはわかっていません。


動体視力はまぁ良い


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image by ana erb / Flickr


犬の目は、静止しているものより動いているものに敏感だということが知られています。一般に捕食動物は獲物を捉えて襲う必要があるために、眼球を動かす筋肉がよく発達しており、性格で機敏に動かすことが可能なのです。「静止していれば400m先でやっと見える目標が、動いていれば800m先でも特定できるという程度[3]」とのことです。


夜目がきく


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image by Łukasz Hejnak / Flickr


犬はすぐれた夜間視力を有しています。これは、網膜を覆う脈絡膜の中のタペタム(輝板)が、わずかな光を反射させて眼球の中を明るくし、暗闇でもある程度の視覚を確保できるからです。しかしこのタペタムは昼間もしっかり働いて、光を散乱してしまうため、見る能力を下げてしまいます。暗い中でフラッシュがたかれると、黄色く光って私たちを恐れさせるアノ現象は、タペタムの反射によるものです。タペタムという可愛い名前を覚えておくと、「なんで目が光るの!?」と聞かれたときにちょっと便利です。


視野は広い




image by When “the Emperor with no clothes” happens to be an agility fanatic | ArtAndDogBlog


人間の視野は、まっすぐ前を向いた時でおよそ180度。左右の眼の視野はかなり重なりあっていて、奥行き知覚に適しています。一方の犬は、人間と比べて視野が広いと言われており、中頭種の場合、片目で約150度、両眼視できる範囲(重なりの部分)は約60度[4]ですから、240度ほどの視界があると考えられます。ただしこれは顔の形によって変化すると考えられ、平面的であれば視界は狭まるとみられています。


知覚できる色調は2つのみ


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image by John-Mark Kuznietsov / unsplash


かつては「犬は色を知覚できない」と言われていましたが、1989年のネイツ博士らの研究により、犬が明らかに色を知覚できることがわかりました。ただし、人間に比べて限定的な種類の色しか見えていないこともわかっています。色覚検査などにより、人間は100通りの色調の違いを識別できますが、犬だと2つの色調しか識別できないそうです[3]


犬の色覚は、人間の第2色覚異常(deuteranopic:緑と紫がかった赤を識別することができない)に似ており、「赤ーオレンジー黄ー緑」の範囲が1つの色調として、「青ー紫」の範囲が1つの色調として認識されます。これら2つは白または灰色と違って見えますが、範囲内の色の違いは識別できないのです。覚えておきたいのは、芝生で遊ぶときに赤や黄色のボールをオモチャを使わない!ということでしょうか。




犬に見えている世界を想像するのはなかなか大変ですが、Dog VisionというWebアプリケーションを使えば、犬の世界を疑似体験することができます。ちなみに記事内の画像の一部は、このアプリを使って加工しています。また、スマートフォン用アプリ(iPhone | Android)もあります。


◼︎以下の資料を参考に執筆しました。

[1] Dog Vision

[2] Murphy, C. J., Mutti, D. O., Zadnik, K., & Ver Hoeve, J. (1997). Effect of optical defocus on visual acuity in dogs. American journal of veterinary research, 58(4), 414-418.

[3] 『犬の科学—ほんとうの性格・行動・歴史を知る』(2004)スティーブン ブディアンスキー, 築地書館

[4] イヌの動物学 (アニマルサイエンス)(2001) 猪熊 寿, 東京大学出版会


Featured image credit Jenny Sturm / Shutterstock


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