「お年寄りに席を譲る優しい姉だった」遺族の思い、法廷で静かに響く 相模原殺傷公判

1月16日(木)8時30分 毎日新聞

相模原事件の公判が開かれている横浜地裁=横浜市中区で、銭場裕司撮影

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 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、利用者ら45人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた元同園職員の植松聖被告(29)に対する横浜地裁の裁判員裁判は15日、証拠調べを行い、遺族らの供述調書が読み上げられた。事件直後に作成された調書で、生前の被害者の人柄や家族との関係性、事件後の家族の苦しみが静かに語られた。


 初公判、第2回公判と同じ黒のスーツ姿で出廷した植松被告は時折、遺族の言葉に首を振ったり、白い手袋をはめた手で耳を塞いだりする動作を見せた。


 「おしゃれが大好きで、8月の夏祭りで花柄の浴衣を着るのを楽しみにしていた。もう一度着せてあげたかった」


 「姉は電車でお年寄りや子どもに席を譲ってあげるような、心が純粋で優しく、優しさを人に分け与えられるような人だった」


 「私たち家族は娘といられて本当に本当に幸せだった」


 休憩をはさみ、午前10時半から午後4時半過ぎまで続いた公判では、職員の調書で植松被告が園で働き始めた経緯などが明らかにされた後、被害者の遺族の調書が検察官によって読み上げられた。母親が名前を公表した美帆さん(当時19歳)、甲Bさん、甲Cさん、甲Dさん——。美帆さんを除き、被害者の名は匿名だ。殺害された19人の被害者のうち12人まで終わったところで、翌日に持ち越された。遺族らが座る、遮蔽(しゃへい)された関係者席からは、鼻をすするような音が聞こえた。


 長女の甲Bさん(当時40歳)を奪われた母親は調書の中で「障害があっても初めての子だったので、何があっても大切に育てていこうと思い、そうしてきた」と振り返った。夫婦が高齢となり園に預けるまでの36年は苦労もあったが、後ろから抱きついてきたり、夫が飲んでいるコーヒーを甘えてねだってみたりと、言葉を交わさずとも楽しい生活をしていた。


 モニターを通して、甲Bさんが殺害される直前に撮った家族写真が裁判員らに示された。「この笑顔を見てください。私たち家族はもう二度と見ることができない」と母親。「(被告には)自分がやった悪魔のような行為を自覚してもらいたい。奪った命は二度と戻ってこないと伝えさせてください」と訴えていた。


 16歳下の妹の甲Dさん(同70歳)を亡くした兄は長年、月に1回、欠かすことなく面会を続けたという。兄は調書の中で「言葉は話せなくても豊かな表情の持ち主で、本当に可愛らしく思っていた」と妹を懐かしんだ。


 甲Dさんの兄は事件後はショックで生きる気力を失い、体調を崩して入院したという。兄の娘で甲Dさんのめいにあたる女性も「父は(甲Dさんの)写真を家のあちこちに貼っている」といい、兄妹の仲むつまじい様子を振り返った。女性は事件当日、妹の遺体と対面した自分の父が、妹の顔を両手で包み込んで声を押し殺して泣く姿を見たという。


 姉の甲Fさん(同65歳)を失った女性は調書で、買い物が好きだった姉の思い出を語った。目を輝かせて欲しいものを指さしておねだりすることがあった姉。買ってあげた服を姉が職員に見せている姿を思い出し、「本当に幸せそうだった。私の生活の張り合いだった」と述べた。


 遺族の調書の読み上げは続く。面会に行くと「おはよう」とにっこり笑って迎え、帰りには手を握って離さなかったという甲Gさん(同46歳)。そんな長女を亡くした母親は「目を閉じるとまぶたに姿が浮かび、声が聞こえる」と悼んだ。


 「娘がいることが当たり前だった」。長女の甲Iさん(同35歳)を奪われた父親は調書の中でそう訴え、「何度も笑顔が家族を救ってくれた。誰にも娘の人生を勝手に終わらせる権利はない」と述べた。また、「障害がある人は生きているだけで迷惑なのか」と苦しみをのぞかせ、「私たち家族は娘がいて本当に本当に幸せだった。もっと彼女に感謝の気持ちを伝えたかった」と悔やんだ。


 姉の甲Jさん(同55歳)を失った弟は「トイレに行きたい時、腹をポンポンとたたいた。それは家族と姉さんだけがわかる特別なサインで、大切な合図だった」と振り返った。


 息子の甲Lさん(同43歳)を亡くした母親は、面会の時は外食するのが恒例で、最後に会った事件の2週間ほど前も、焼きそばなどを食べきれないくらい注文していたことを思い出した。母親は「苦しい家計の中でもこの時ばかりは好きなものを食べさせてあげたくて毎回奮発していた」といい、「どうして私の息子は選ばれてしまったのかと思う。自分の犯した罪を悔やみながら刑を受けてほしい」と訴えた。【国本愛、洪玟香、池田直】

毎日新聞

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