阪神・淡路大震災から25年 「首都直下地震」でも起こりうる“直接死”以外の危機

1月17日(金)6時0分 文春オンライン

 25年前の今日——1月17日、兵庫県神戸市は大きな揺れにおそわれた。史上初めて震度7を記録した阪神・淡路大震災である。


 街のあちこちから立ち上る炎や煙、橋脚が折れて横倒しになった高速道路……。いまも、早朝のテレビに映し出された映像がよみがえる。そのたびに日本列島で暮らす人々と自然災害との戦いのはじまりを告げているかのように感じるのだ。



完全に倒壊した阪神高速道路神戸線(兵庫・神戸市東灘区) ©時事通信社


 阪神・淡路大震災から日本列島が地震が頻発する「地震活動期」に入ったと考える専門家は多い。確かに1995年以降、鳥取県西部地震、十勝沖地震、新潟県中越地震、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震とM(マグニチュード)6を超える地震が続いている。


 また、阪神・淡路大震災は、自然災害による死のあり方を考え直すきっかけにもなった。犠牲になった6434人のうち、約14%の919人にのぼった災害関連死である。阪神・淡路大震災は災害関連死がはじめて認定された災害でもあるのだ。


 では、災害関連死とは何か。


避難生活の疲労などによる病気、持病の悪化


『 大災害と法 』などの著者である弁護士の津久井進さんは、災害関連死について、このように解説する。


「長い間、災害関連死に明確な定義はありませんでしたが、2019年4月に内閣府が定めました。津波や家屋倒壊などの直接的な被害ではなく、自然災害後の避難生活の疲労などにより病気にかかったり、持病が悪化したりして亡くなることが、災害関連死です」



 阪神・淡路大震災では、犠牲者の多くが建物の倒壊などによる圧死や窒息死や、火災に巻き込まれた直接死だった。一方、長期にわたった避難生活による慢性疾患の悪化や、インフルエンザの流行で命を落とした被災者が災害関連死に数えられた。生活再建がうまくいかず、あるいは、大切な人を喪ったショックにより、自ら命を絶ったケースもあった。



新潟県中越地震では7割が災害関連死


 次に災害関連死が注目されたのは、2004年の新潟県中越地震である。68人の死者のうち、7割を越す52人が災害関連死に認められた。



 新潟県中越地震の特徴は、余震の多さだ。しかも震度5弱以上の余震に18回もおそわれた。家屋の倒壊を恐れてクルマのなかで夜を過ごし、エコノミークラス症候群で命を落とした避難者もいた。エコノミークラス症候群とは、長時間同じ体勢でいた結果、血液の流れが悪くなり、血の塊がつくられ、肺の静脈を詰まらせる症状である。


 さらに東日本大震災では、行方不明者をのぞいた15897人の死者のうち3739人が、熊本地震では270人中、215人が、災害関連死だった。


「関連死は、震災で亡くなった人の最期の声です」


 高校時代、阪神・淡路大震災で被災した在間文康さんは、現在、弁護士として災害関連死遺族の支援を続けている。彼は災害関連死の意味を次のように説明する。


「関連死は、震災で亡くなった人の最期の声です。関連死の事例は、震災後に何が起きるのか、そしてどんな支援が必要になるのか、私たちに教えてくれます。震災後、被災した人たちがどのような環境におかれるのか。その記録が、将来、おこるであろう災害に備える教訓といえるのです」


 震災が被災者の身体と心に何をもたらしたのか。ひとつひとつの災害関連死のケースを明らかにすることが、自然災害の巣と呼ばれる日本列島で生きる我々にとって、かけがえのない教訓になるというのである。



 だが、埋もれる災害関連死も少なくない。


 原因の1つが、申請の仕組みである。


 災害関連死の認定を受けるには、まず遺族が市町村の窓口に出向き「災害弔慰金支給申請」の手続きをしなければならない。「災害弔慰金」とは、災害遺族の心痛や悲しみに対する市町村からの見舞金である。生計を担っていた人の場合は500万円、それ以外は250万円が支給される。


 その後、その死が災害と関連性があるかどうかを検証する審査委員会が開かれる。メンバーは、行政の担当者、医師、弁護士ら5、6人で構成される。



東日本大震災で問題になった「認定率の差」


 審査の結果、災害との関連性があるとされれば、弔慰金が支払われ、災害関連死と認定される。


 ただしもしも遺族が申請しなければ、たとえ震災の影響を色濃く受けた死でも、災害関連死と認められない。加えて、身寄りのない被災者が亡くなった場合も災害関連死にカウントされない。



 東日本大震災では、市町村による認定率の大きな差が問題となった。認定の基準がないために、自治体Aでは認められた死が、隣の自治体Bでは「関連性なし」と判断される場合もあった。そもそも、自治体の職員が災害関連死について詳しく知らなかったせいか、窓口で申請を断るケースもあったと聞く。いくつもの「将来への教訓」が失われた可能性がある。


 2016年の熊本地震では、災害関連死が直接死の4倍近くだった事実を忘れてはならない。過去の災害関連死の「教訓」をもとに適切な支援が行われていれば、たくさんの命を救うことができたはずだ。極論すれば、災害支援の目的は、災害関連死をなくすことなのではないかと思うのだ。



「南海トラフ地震」から74年、「首都直下地震」から97年


「首都直下地震」や「南海トラフ地震」……。近い将来、巨大地震の発生が危惧されている。


 直近の「首都直下地震」が、史上最大規模の被害をもたらした1923年の関東大震災である。約190万人が被災し、10万人以上が死亡、または行方不明となった。


 また「南海トラフ地震」は、90年から150年の間隔でくり返されてきた。最近の、南海トラフから発生した地震である1946年の昭和南海地震では1330人が犠牲になった。もちろん関東大震災や昭和南海地震の犠牲者に、災害関連死は含まれていない。


 2020年は、最後の「南海トラフ地震」から数えて74年目、「首都直下地震」から97年目になる。


 歴史を紐解けば、同じエリアで、同じような地震が、くり返し起きている。自然災害の発生は止められない。しかし過去に学ぶことにより、被害を最小限に抑え込むことは可能なのだ。




(山川 徹)

文春オンライン

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