安倍首相やつるの剛士も愛読宣言! 百田尚樹『日本国紀』に今度は「Yahoo!知恵袋」からの“コピペ疑惑”が浮上

1月22日(火)6時55分 LITERA

日本国紀(幻冬舎)

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 年を越しても相変わらず書店に山積みになっている百田尚樹の『日本国紀』(幻冬舎)。安倍首相が年末年始の読書のために〈購入した本〉としてTwitterにアップしたことはすでにお伝えしたが、吉村洋文・大阪市長やネトウヨから熱い支持を受けるタレント・つるの剛士、発行元の幻冬舎の見城徹社長と仲良しのサイバーエージェントの藤田晋社長など、安倍応援団有名人も続々と「読みます」「読んでます」とツイートしている。


 こんな状況にすっかり調子に乗ったのか、百田センセイ自身も2日にTwitterで〈保守の本は売れても左翼の本は売れない。理由は左翼は本を読まないから〉などと言いだし、〈実は日本人であれば、いろんな本を読んで知識を得ると、自然に政治思想は左翼から保守に変わる。つまり左翼の多くは読書から取り残された人たちなのである。さらにテレビばかり見るから余計に左翼になる〉と珍理論を展開した。


 いったい百田センセイやファンのネトウヨの皆さんが普段、どんな「いろんな本を読んで知識を得ている」のか気になるが、しかし、そんな我田引水的な妄想の裏で、『日本国紀』をめぐっては新たな“コピペ”疑惑が浮上した。


 同書をめぐっては、すでにWikipediaからの“コピペ”問題を検証する動きが進んでおり、百田センセイと幻冬舎が刷を重ねるごとに“サイレント修正”を施しているのは周知の通りだが、なんとあの「Yahoo!知恵袋」から“コピペ”したとの疑惑まで取り沙汰されているのだ。


 これは、ネットメディア「ハーバービジネスオンライン」で『日本国紀』の問題を指摘してきたGEISTE氏(Twitterのアカウント名)や、同書のコピペ問題などを追及しているウェブサイト「論壇net」が指摘していることだが、問題の箇所は、16世紀に日本を訪れたイエズス会の宣教師、アレッサンドロ・ヴァリニャーノに関するくだり。『日本国紀』にはこう書かれている。


〈イエズス会宣教師のアレッサンドロ・ヴァリニャーノ(信長に弥助を献上した人物)は、天正七年(一五七九)に本国イタリアに向けて、「日本人の好戦性、大軍勢、城郭、狡猾さと、ヨーロッパ各国の軍事費を比較して、日本を征服することは不可能である」と報告している。〉


 ところが、前述のGEISTE氏の指摘によると、このヴァリニャーノの引用とされる文章と極めて酷似した記述が、2014年1月21日の「Yahoo!知恵袋」の回答のなかに存在した。


〈イエズス会宣教師のヴァリニャーノは明確に「日本人の好戦性・多軍勢・城郭・狡猾さと欧州各国の軍事費をふまえて、日本は征服できない」と1579年に報告しています。〉(「Yahoo!知恵袋」より)


 『日本国紀』と比較すると「多軍勢」が「大軍勢」に、「欧州各国」が「ヨーロッパ各国」へと微妙に変えられているが、ほぼ同じ文章とみなしてよいだろう。こうしたことから、ネット上では、すわ「WikipediaだけじゃなくYahoo!知恵袋からもコピペか」と騒がれているというわけだ。


 もちろん、大元の出典が同じならば、そっくりになるのは当然なので、これだけでは“コピペ”と断定できないが、実は百田センセイもこの「Yahoo!知恵袋」の当該部分も出典を一切明示していない。


『日本国紀』がほとんど出典を明示していないという問題は、Wikipediaからのコピペ疑惑の際にも指摘されており、それ自体が致命的な欠陥だと思うが、載っていないのでしようがない。百田センセイが「Yahoo!知恵袋」とそっくりなヴァリニャーノの報告を専門書や研究論文から引用した可能性を考えて、国会図書館でそれらしき文献を片っ端から調べてみた。


●国会図書館でもヴァリニャーノの著作や資料集を片っ端から調べたが…


 たしかにヴァリニャーノは在日中に何度も報告を上げており、初来日した1579年の12月にもイエズス会総長宛てなどの書簡を複数の日に送っていたようだ。しかし、いくら調べても『日本国紀』が引いている文章と同一の邦訳は見つけられなかった。


 たとえば、邦訳されているヴァリニャーノの代表的な著作に「日本巡察記」というものがあるが、ここにも、百田センセイが指摘しているような書簡は掲載されていなかった。また、ヴァリニャーノが書いた報告書などを紹介する資料集(たとえば岩波書店「大航海時代叢書」所収の『イエズス会と日本』など)をはじめ、日欧関係史関連の歴史学系、キリシタン学系、スペイン・ポルトガル関連の学会誌などでヴァリニャーノの名前があがっている論文等に多数あたってみたが、百田氏の記述と同じ邦訳を見つけることはできなかった。


 ただし、ヴァリニャーノがそういった内容の書簡を送ったことを記しているものはあった。前掲の「日本巡察記」の桃源社版(榎一雄監修『東西交渉旅行記全集』、松田毅一・佐久間正訳『日本巡察記』1965年)では、研究者の松田毅一氏が解説で、ヴァリニャーノが1579年12月2日付でイエズス会総長へ向けて出した書簡のなかに、〈日本を征服しようとするヨーロッパ植民勢力の凡ゆる試みは、「軍事的には不可能」であり、「経済的には利益がない」〉との内容があったと短く紹介している。注釈によれば、どうやら書簡から直接的に翻訳・引用されたものではなく、シュッテ(Schütte)というイエズス会研究者の大著(邦訳未刊)に基づく解説らしい。


 また、比較歴史学・日欧交渉史を専門とする高橋裕史・苫小牧駒澤大学准教授の著書『武器・十字架と戦国日本 イエズス会宣教師と「対日武力征服計画」の真相』(洋泉社、2012年)に、ヴァリニャーノの1579年12月2日付書簡について、「日本は外国人の兵士の手で征服され得ない」「日本はこの世でもっとも堅固で険しい地で、日本人はもっとも好戦的だからである」「難攻不落の要塞が、高く非常に険しい山中にたくさんある。日本人はきわめて大勢であり、海に囲まれた島々にもいるため、彼らに対抗できる強国も兵士も存在しない」といった記述があると紹介されている。注釈をみると、ローマのイエズス会文書館に保管されている史料を高橋氏が翻訳・引用したものようだ。


 しかし、この高橋氏による引用の文言も、百田センセイが『日本国紀』に書いている「日本人の好戦性、大軍勢、城郭、狡猾さと、ヨーロッパ各国の軍事費を比較して、日本を征服することは不可能である」という“引用風”の記述とは違う。結局、『日本国紀』の記述とほぼぴたりと一致するのは、いまのところ「Yahoo!知恵袋」だけなのである。


 あとは、“勉強熱心な”百田センセイがイエズス会文書館に保管されているらしい本物の書簡をローマまで出かけて自分の手で翻訳・検証したか、あるいは、高橋氏の本の部分的な翻訳を要約したらたまたま「Yahoo!知恵袋」と一致してしまったという可能性だが、そんなことがありうるのか。


 いずれにしても、百田センセイはしっかり出典を示して、読者の疑問に答える責任があると思うが、これまでの経緯を考えると、きっと無理だろうなあ。



●明治の富国強兵政策で生まれた恣意的な歴史観を垂れ流す『日本国紀』


 と、まあ、こんな感じで相変わらず、次から次へと疑惑が明らかになっている『日本国紀』だが、コピペ疑惑だけでなく、その内容についても歴史研究家から鋭い批判が出ている。たとえば、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)がベストセラーになった歴史学者の呉座勇一・国際日本文化研究センター助教は、朝日新聞での連載コラムで〈学界の通説と作家の思いつきを同列に並べるのはやめてほしい〉(2017年12月11日朝刊)などと批判的に評した。


 さらに、「週刊文春」(文藝春秋)1月17日号も「『オレはそんなに軽いのか』安倍晋三が元旦にキレた」という記事で『日本国紀』のコピペ疑惑に触れたのだが、そこに呉座氏が寄せたコメントは、まさにこの百田史観本の本質を喝破するものだった。


「同書では、鎌倉時代の質実剛健な武士と対比しつつ、平安貴族を平和ボケと指弾しています。こうした歴史観は、明治日本が富国強兵に突き進む中で生まれたもので、現在の学会では否定されています。百田氏は、戦後日本の“平和ボケ”を非難するために貴族の“軟弱さ”を誇張しており、憲法改正という持論の補強に歴史を利用しているように感じます。安倍首相は読んで共感するかもしれませんが」(「週刊文春」より)


 そのとおりだろう。本サイトでも指摘したとおり、『日本国紀』はただの「コピペ本」ではなく、〈日本はアジアの人々とは戦争はしていない〉などと強弁して(中国はアジアではないのか?)、戦前日本の帝国主義と侵略、戦争犯罪を否定・美化し、同時に「敵国」の残虐行為を強調することで相対化するという、露骨な歴史修正主義の“啓蒙本”であり、その最終地点は安倍首相が悲願とする9条改憲だ。


 だからこそ、冒頭で紹介したように、安倍首相やその応援団がこの『日本国紀』をやたらと“PR”展開しているのだ。


 彼らがSNSで「読んでます」「読みます」と言い始めたのは、『日本国紀』にWikiコピペ疑惑が浮上して、サイレント修正をし始めたあとである。


 ようするに、彼らにとって、その書物や資料がどれだけ間違いや問題、恣意性があっても、関係ない。安倍改憲のプロパガンダ本になるのなら、フェイクでもクオリティが低くても、どうでもいいのだ。こうした疑惑がこのままずるずると“なかったこと”にされないように、これからもどんどん『日本国紀』の問題点を周知させていく必要がある。
(編集部)


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