韓国総選挙に「文在寅チルドレン」大量擁立の無節操! 歯向かう検察幹部は“大虐殺”

1月26日(日)17時0分 文春オンライン

 韓国で文在寅政権による「検察改革」と称した検察の組織改編が、強引ともいえる形で進められている。


 前法相の曺国(チョ・グク、業務妨害などの罪で在宅起訴)被告が絡んだ疑惑の捜査を進めている検察幹部を総入れ替えするなど、その手法は極めて露骨。検察の捜査態勢を“骨抜き”にしようとしている。


文政権の“大虐殺”人事


 文大統領は1月2日、曺被告の後任の法相として、秋美愛(チュ・ミエ)氏を任命したが、秋氏は就任早々、最高検察庁の幹部らの交代人事を断行した。文大統領が7日、新年の演説で「検察改革を止めない」と断言したのに合わせるかのように翌8日に32人もの検察幹部を交代させる人事を発表したのだ。



文在寅大統領と秋美愛法相 ©AFLO


 その対象には、「大統領府による選挙介入疑惑」など曺被告の関与が指摘されていた疑惑の捜査を指揮していた最高検の部長2人が含まれ、それぞれ済州地裁の検事正と釜山高検の次席検事に異動した。事実上の“島流し”に遭った幹部らの代わりには、大学の後輩ら文大統領に近い人物が起用された。


 第2弾の人事が発表されたのは1月23日。今度は2月3日付で検事759人を異動させるという大規模人事だった。この人事でも、曺被告の疑惑を捜査しているソウル中央地検とソウル東部地検の次長検事ら計3人が、京畿道や忠清南道に異動することになった。


 この2回にわたる検察人事によって、曺被告の疑惑の操作を指揮する尹錫悦(ユン・ソンヨル)検事総長の側近の多くが、瞬く間に地方に追いやられてしまった。

 

 保守派のメディアは、「文政権を捜査する『尹師団』の大虐殺」(朝鮮日報)などと批判している。つまり、尹検事総長の参謀陣(大統領府を捜査する検察)の完全解体とみなされているわけだ。



検察が見せた意地


 そんな状況下でも、検察は捜査を続けていた。


 昨年12月31日、曺被告を文書偽造など11の罪で在宅起訴したのに続き、1月17日にも職権乱用などの罪で追起訴。3度目の大統領府捜索も行った。


 第2弾の検察人事が発表された1月23日には、ソウル中央地検が、大統領府民情首席秘書官室の崔康旭(チェ・ガンウク)公職紀綱秘書官を、業務妨害の罪で在宅起訴した。曺被告が大統領府民情首席秘書官だった2017年当時、崔秘書官が弁護士として曺被告の息子のインターン活動に関する確認書(高麗大学と延世大学に提出されて、ともに合格)を虚偽作成したという疑惑についての罪だった。


 まさに検察の意地である。だが、検察は今回の“報復人事”によって、捜査体制の縮小や解体に遭っており、状況は日に日に厳しさを増している。今後の捜査に支障が出ることは不可避だろう。



強硬人事は「総選挙対策」


 公約に検察改革を掲げていたものの、文在寅政権がここまで躍起となり検察組織にメスを入れた背景には、4月15日に控える総選挙がある。


 4年に1度行われる、文在寅政権では初めての総選挙は、後半に入った政権への審判の意味合いがある。ここで左派系与党の「共に民主党」が敗れれば、政権末期に向け文在寅政権のレームダック化が進むことさえあり得る。


 その文在寅政権が最も避けたいのが、曺被告の疑惑が続く中で総選挙を迎えることだ。政権にとって最大の「弱点」を引きずるくらいなら、強引さが指摘されようとも検察人事を思うままに断行して捜査体制を解体するという予防策をとった、というわけだ。


 最近の各種世論調査によれば、文在寅大統領は40%台後半の支持率を維持している。だが、与党「共に民主党」の現有議席は129で、定員300の半数に届いていない。国会では6割以上の賛成がなければ法案は上程できないため、改革志向の強い文在寅政権としては、総選挙で過半数を獲得したいところだろう。


 1月中旬は総選挙に向け出馬する公職者が辞任しなければならない期限だ。大統領府では、新年に入ってから、文在寅大統領からの信頼が厚い幹部らが続々と出馬のために辞職している。


 文在寅大統領の最側近とされる尹建永(ユン・ゴンヨン)大統領府国政企画状況室長のほか、元KBS女性アナウンサーとして知名度が高い、高ミン廷(コ・ミンジョン)報道官も辞任した。文在寅政権下で大統領府にいた秘書官ら約70人が出馬を目指しているともいわれる。


チョ・グク疑惑関与の候補者も?


「共に民衆党」候補者の選挙区は党内の予備選挙を経て決定する。同党では、1月16日までに367人が予備候補に登録しているが、このうち約3分の1が大統領府や中央省庁、地方自治体など公的機関の幹部だったという。


 国民年金公団理事長、中小ベンチャー企業振興公団理事長、国土交通省次官ら公職者が大挙して辞職し、公的な地位にいた経験を選挙戦に利用する姿に対しては、世論も冷ややかに見ている。



 その中でも、特に「節操がない」と批判的に受け止められているのが、曺被告の疑惑への関与が取り沙汰された予備候補だ。


 その代表例が、先述の大統領府国政企画状況室長を辞めた尹建永氏だ。彼は柳在洙(ユ・ジェス)前釜山副市長(収賄罪などで起訴)による業者からの金品受け取り事件で監察をもみ消した疑惑で、検察から調査を受けた。


 また、大統領府による蔚山(ウルサン)市長選挙介入疑惑に関与した疑いが出た宋炳琪(ソン・ビョンギ)前蔚山副市長、黄雲夏(ファン・ウンハ)前蔚山地方警察庁長官も総選挙に出馬する意向だ。


 公職の経験を“箔付け”に利用する候補の中でも、大統領府で文在寅大統領と過ごした候補はまさに「文在寅チルドレン」という表現がぴったりだ。



日韓関係の展望は?


 いま、総選挙に向け政権与党を勢いづける動きもある。


 今月14日に首相を辞任した李洛淵(イ・ナギョン)氏が、総選挙にソウル中心部の鍾路区から出馬する意思を表明し、「共に民主党」の選挙対策委員長への就任も受け入れたのだ。


 鍾路区はこれまで、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)両元大統領ら大物を総選挙で輩出してきた選挙区として知られる。さらに今回は、保守系最大野党、自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表の出馬も取り沙汰されている。


 李洛淵氏も黄教安氏も2年後の次期大統領選の有力候補なのだが、支持では李洛淵氏が相当リードしている。李洛淵氏が大統領選をも視野に入れていることは当然視されており、今回の出馬宣言は黄教安氏への挑戦状と受け止められている。並々ならぬ自信に、保守派は衝撃を隠せない様子だ。


 検察が露骨な大規模人事により骨抜き状態にされた今、韓国は思うままに事を進めてきた文在寅政権が描いたシナリオ通りに、選挙の季節を迎えている。与党が勝利した場合の対日関係は不透明だが、少なくとも劇的な日韓関係改善は展望できそうにないだろう。



(名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)/週刊文春デジタル)

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