失敗の研究、地方創生はなぜうまくいかないのか?

1月27日(水)6時0分 JBpress

(片桐新之介:地方創生コンサルタント、第6次産業プランナー)

 2020年、世界中で蔓延した新型コロナウイルスの影響は、日本における「地方創生」にも大きな影響を与えている。特に大きな影響を被ったのは観光業とそれに係る産業だが、飲食店に生産物を納入する農業など第一次産業、その流通に関わる人も大きなダメージを受けた。

 生産品が出荷できない農業漁業者のために、ECサイトなどで直接購入する動きも始まったが、焼け石に水といった感がある。農業生産物を生産者から直接購入するのは表面上大きな効果があるように見えるが、そういった農業生産物を取り扱い、流通に関わる人、料理する人などもいる。

 食産業という広い視野で見れば、極めて多くの人が地方を中心に働いている。観光業もそうだが、関連産業が多岐にわたる業界への「損害補償」は、範囲をどのように決め、どうカバーすべきか、ということを議論するのが難しい。いずれにせよ、どの分野もそれなりにダメージがあるのは確実だ。

 地方創生においては、いかに地方の中に経済効果を発生させるかがカギである。今回、これまでの地方創生の動きを検証しつつ、その政策がどのような効果があったのか、もしくはなかったのかを検証しつつ、これから5回にわたって地方創生のあり方について論じてみたい。


40年以上前に始まった地方創生のイバラの道

 地方創生の本格的な取り組みがいつからかといえば、1977年、福田赳夫内閣における、旧国土総合開発法(現在は国土形成計画法)に基づく第3次の全国総合開発計画を契機としていいのではないかと思われる。ここでは明確に、大都市化の抑制、地方振興が基本的な方針として書かれている。

 もっとも、1960年代から地方、特に離島などの過疎状況の深刻さに対応する政策が叫ばれてはいた。1973年のオイルショックなど、都市に人口が集積することの弊害も念頭に置かれたと思われる。1969年の、この前身である「新全国総合開発計画」の開発志向に比べれば格段の差があるといってよい。

 117ページにわたる「第三次全国総合開発計画」を読むと、その理念は2021年現在でも課題となっている「巨大都市における過密問題」「魅力ある地方都市・農村の総合的整備」「公共投資配分の方向と課題」「首都機能の移転問題」などが挙げられている。

 特に、「公共投資配分の方向と課題」では、「計画期間中における公共投資の重点方向は次の通りとしている。

 まず、地方定住推進のための基盤整備に必要な投資に重点を置く。とりわけ若年層の地方定住を促進し、定住構想実現の基盤を整備するため、この計画が示す定住人口等に関する定住構想の地域別目標に即応しつつ、各定住圏の特性と魅力を生かすように重点的に投資されなければならない」と、現在でも多くの政策の基本となっている方針が打ち出されている。

 この後、打ち出された第四次全国総合開発計画 (四全総 1987)、21世紀の国土のグランドデザイン (五全総 1998)、でも地方活性化が早急の課題として叫ばれるが、東京が日本経済をけん引するような志向(いわゆる東京機関車論)などもあり、なかなか目立った成果は上げられないまま進んでいる。

 五全総では、地域住民、ボランティア団体、民間企業等の多様な主体による地域づくりを全面的に展開する「参加と連携」も盛り込まれるようになった。その後、2005年の国土総合開発法の改正、国土形成計画法の制定というステップに繋がっている。

 しかし、これらの各種政策でも地方衰退に歯止めはかからなかった。それまでは国土保全の観点からの地方創生の視点だったが、各種の政策における反省を踏まえ、2014年(平成26年)9月3日の第2次安倍改造内閣発足後、いわゆる「ローカル・アベノミクス」が発表された。

 ここにきて地方創生担当大臣として石破茂氏、内閣府副大臣に平将明氏、内閣府大臣政務官に小泉進次郎氏が就任し、まち・ひと・しごと創生本部を設置し、同年にまち・ひと・しごと創生法が成立した。地方創生の主導権はここから明確に「内閣府」となった。


湯水のように資金が投下されてきた地方創生だが・・・

 その創生法では、目的を「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施する」としている。今までの全国総合開発計画の流れを受けていることが読み取れる。

 この時に、いわゆる特区や中心市街地活性化、都市再生(コンパクト・シティ)、ふるさと納税、政府機関の地方移転、6次産業化や観光産業の振興促進などの、いわゆる現在でも実施されている政策のほぼすべてが出そろったことになる(中心市街地活性化など、2014年以前から施策として行われていたものを含む)。

 先ほど「反省を踏まえ」と書いたが、2015年(平成27年)11月27日の経済財政諮問会議大臣提出資料では、「目標達成のために、具体的な数値目標を立て、その進捗状況を計測する「KPI(重要実績評価指標)」の設定や、「PDCAサイクル」を確立するとともに、個々の事業において民間資金を誘発し、将来的には本交付金に頼らない自立した事業構築を促す」という言葉が掲げられたことからも、政府の反省が読み取れる。

 この時に新型交付金が誕生したのも、過去の失敗を踏まえてのものだろう。地方はそれまでも多くの交付金を受けながら、地方創生が実現した地域はそれほど多くない。計画づくりばかりで、実行が伴っていない、という指摘もあったのではないか。同諮問会議資料の資料文中に、『地方創生は「地方版総合戦略」の策定段階から、本格的な地方創生事業推進の段階へ』とされていることがその証左であると考えている。

 今までの地方創生の流れをざっと時系列で追ってみたが、これだけでなく、各省庁の取り組みなどを挙げればキリがないくらいの政策が実施され、数多くの交付金が投じられてきた(例えば、総務省資料によると、平成27年、28年のまち・ひと・しごと創生事業費は1兆円の予算が組まれている)。しかし、令和に入った今現在で、どのような効果が得られているのか、はなはだ疑問の部分も多い。

 都市計画や、大規模な事業開発のように数年、あるいは10年がかりの事業ももちろんある。しかし、そういったところを別にしても、地方に投じられた税金がどのように使われ、どのような効果が得られているのか、より厳しく検証することが必要だ。

 今回の記事では、筆者が2016年から関わっている「6次産業化」について、それを検証したい。農水省のホームページなどには多くの「6次産業化による成功事例」などが挙げられているが、本来見るべきは「失敗事例」の検証のはずだ。

 次回以降、失敗事例を題材に地方創生のあり方を見ていく。

筆者:片桐 新之介

JBpress

「地方創生」をもっと詳しく

「地方創生」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ