「黒ドレスにハイヒールで」自ら出頭し逮捕…“4億円を焦げつかせた”女社長(47)の正体「夫と離婚し、複数の若い愛人と…」〈千葉銀行レインボー事件〉
2025年3月16日(日)12時10分 文春オンライン
〈 「エライ女だ。私の負けだな」銀行のトップが女性実業家に12億円もの融資…国政を巻き込んだ“世紀の詐欺事件”が発覚するまで 〉から続く
今回取り上げるのは、地方銀行の頭取が女性実業家に見合わない担保で12億円も融資し、うち4億円あまりを焦げ付かせたとされる事件。1958(昭和33)年、「戦後」から高度成長への転換期、数多くの著名人が登場するこの事件にはどんな時代的意味があったのか。
当時の新聞記事は見出しはそのまま、本文は適宜書き換え、要約する(当時は「容疑者」呼称はなく、呼び捨てだった)。文中いまは使われない差別語、不快語が登場するほか、敬称は省略する。(全3回の2回目/ はじめ から読む)

◆◆◆
三鬼陽之助の「怪談・千葉銀行」(「中央公論」1957年7月号掲載)は当時の千葉銀行の頭取・古荘四郎彦について詳しい。
それによれば、千葉銀行は当時地方銀行では預金高で13〜14位。古荘頭取は、堀久作が社長の日活への融資で型破りの銀行家として有名になり、「地銀王」とまで呼ばれた。
1954年の白木屋乗っ取り騒動でも実業家でのちのホテルニュージャパン社長・横井英樹の背後には古荘と千葉銀行の存在がささやかれた。「怪談・千葉銀行」は「この銀行は貸付に問題があるように思われる」とし、「古荘個人の力があまりに強大なためか、あるいは規約として頭取の独裁が許されているのか、往々にして一般銀行の慣例は破られている」と指摘している。
「“夢”に食われた女」
もう1人の主役、坂内ミノブの経歴は、一審判決が認定した基本データに、逮捕時の1958年3月26日付読売新聞(以下、読売)朝刊の「“夢”に食われた女 ハッタリも強い坂内」という中見出しの記事内容を加えてまとめるとこうなる。
〈1910(明治43)年9月、新潟県に生まれ、群馬県・伊勢崎で育ち、前橋の旧制県立高等女学校を卒業した。21歳で伊勢崎市の吉田印刷経営、吉田庄藏と結婚。2男1女をもうけた。婦選獲得同盟の支部役員を務めるなど、戦前の彼女についてはいい評判ばかりだが、1941〜1942年ごろ、3児を引き取って別居。紙を大量に買い占めて大蔵省や安田銀行(現みずほ銀行)などの印刷を一手に引き受け、戦後の紙不足時代にも大量のストックを持っていたため、相当の資産をつくったらしい。
1946年春ごろ、夫とともに「吉田書店」をつくり、「潮流」と「女性線」という2つの雑誌を発行した。「女性線」は神近市子、佐多稲子らの原稿を載せ、ミノブも「藤村玲子」のペンネームで編集後記を執筆。1946年3月の創刊号では「戦争の嵐は去った。世紀の嵐である。冷厳なる現実と幾多の悲しみと感慨とを残して——」「新しきものの胎動という範疇から離脱して、今こそ全ての現象は偉大なる前進を展開しようとしている」と謳い上げた〉
熱心な左翼女性だった
最近、研究が進んでいる「伊勢崎署占拠(占領)事件」という戦前の出来事がある。菊池邦作「群馬県社会運動の歩み(下)—大正・昭和時代—」=「労働運動史研究19」(1960年)所収=によると、1931(昭和6)年9月6日、群馬県伊勢崎町(現伊勢崎市)の左翼系文化団体が作家の小林多喜二、中野重治らを招いて文芸講演会を開催しようとしたところ、開会前の昼食会を無届け集会とされ、小林ら講師と、吉田庄藏を除く主催者側中心メンバーが伊勢崎署に拘留されてしまった。
知らせを受けて群馬県内の無産運動の活動家らが集まり、講演会に詰めかけた聴衆と合わせて約500人が伊勢崎署を取り囲んで署員と乱闘。署長や署員が退去した後の署を占拠した。交渉の結果、拘留者は全員釈放されたが、県内の活動家への「重要な電話連絡の任務を果たした人が誰あろう、いま千葉銀行事件で名を売っている『レインボー』社長・坂内ミノブ(当時吉田夫人)その人の、若い時代の純粋な姿である」(同論文)。
「彼女は以前、私が前橋で若い女性グループに『共産党宣言』の講義をしていた時のキャップ(リーダー)で、非常に優秀な女性であった」とも同論文は述べる。当時は熱心な左翼女性だったわけだ。
婦選獲得同盟は「女性にも選挙権を」と市川房枝(戦後参議院議員)らが中心になって1924(大正13)年に「婦人参政権獲得期成同盟会」として設立。翌年「婦選獲得同盟」に改称したが、戦時色が強くなる中、徐々に体制に協力していく。
自分を「哲学少女」と称し、雑誌の編集に携わる
〈「女性線」では翌1947年の第4号から、夫庄藏に代わって「吉田みのぶ」として編集兼発行人に。「文学少女」と呼ばれたが、自分では「哲学少女」と言っていた。女子大卒の編集部員や神近の娘らを社員として高給を与え、一流文化人と交際。理想的な評論誌を目指した。
1948年10月には銀座のど真ん中に7つの事業を七色の虹になぞらえて「KKレインボー」を設立。洋品、装身具、美術品を扱い、グリル(レストラン)も経営する女社長に納まった。どうやらこのころを契機に、彼女の生活と意見は一変して“神秘的”になってしまったようだ。「女性線」の原稿料支払いが滞り、スタッフへの給料支払いが遅れ始めた1949年ごろから、めったに他人に会いたがらなくなり、社員でも彼女に面会できなくなった。金繰りの秘密があるのか、実態を探られたくなかったのか……〉
〈結局2誌とも1950年には休刊に追い込まれた。「敗戦前後に大金を手にした田舎の印刷屋の内儀(ないぎ=おかみ)の“夢”と“道楽”にすぎなかったと見る向きもある」と読売の記事は厳しい。同年には夫と協議離婚。「夫が事務員とねんごろになったからだ」と言っていた。「女学校を出たばかりで結婚。社会主義にあこがれ、理想主義的観念論者だった彼女には、その“不潔さ”が許せなかったようだ」「ウソとハッタリに固まりだしたのはこのころだという」(読売)。
一方で彼女も戦後は大学教授、経済学の大学院生、会社の若い社員らを愛人にしていた。これに輪をかけたのが、問題の古荘千葉銀行頭取をはじめ政財界人と交際し、株にも手を出すようになったことだ。旭硝子(現AGC)や東京海上などの思惑買いで大損をし、雪ダルマ式に借金が増え、破綻の日が来たのだった〉
〈「四国の山野で馬を乗り回し、材木の切り出しを指揮してきた」「マルクス経済学者になるつもりだ」「伊豆の大島に銀行を建てて開発するんだ」「外国の銀行にも預金があり、店のデザイナーをパリに留学させる」「私は日本の『不渡り王』だ」などが彼女の語録。「レインボー」で知人らと食事しながら、「私の借金も8億円になったのヨ」と、猫が子どもを産んだ話と同じニュアンスで語った〉
黒のドレスにハイヒール姿で自ら出頭し逮捕
そんなミノブが逮捕されたのは3月25日。26日付読売朝刊はこう書いた。
〈 レインボー女社長逮捕
銀座「レインボー」の詐欺事件で24日朝から行方をくらましていた同社社長、坂内ミノブ(47)は25日午後5時すぎ、東京地検特捜部に出頭してきた。ただちに栗本主任検事が千葉銀行東京支店や正喜商会をだまして抵当権を解除し、建物権利書を詐取した容疑で約2時間、取り調べた。坂内は犯行を否認したが、午後7時すぎ、逮捕状を執行。水上署に留置した。坂内は濃緑色のモヘア*のオーバーに黒のドレス、黒のハイヒールといういでたちで、長い髪をオーバーの背中まで垂らし、やや青白い顔だったが、カメラのフラッシュにも顔を背けず落ち着いた態度。2日間、弁護士とじっくり打ち合わせたうえ出頭したようで、家宅捜索に行った検察事務官が「朝、逃げ出したときには和服だったと聞いていたのに、どこで洋服に着替えてきたのだろう」と首をかしげていた。〉
*アンゴラの高級な毛織物
家宅捜索で洋酒1500本を発見?
読売のサイド記事は最近の動きについても書いている。
〈 “写真のない女”。レインボーの女社長、坂内ミノブは「社員ですらなかなか会えない社長」であり、近親者の手元にも写真がない写真嫌いの女だった。戦後13年間、彼女に接してきた人たちも、過去や正しい名前すら知らない人が多い。吉田、坂内、藤村と、それぞれの時期に接した人に名字だけ記憶されている。
“伊皿子御殿”では長い髪に黒い着物、長い袖の真っ白な羽織という神がかった服装で、気取った低い声しか出さないという。3人の子どもに1台ずつの自家用車と白の綸子*の着物。周りから見るとぜいたくすぎる育て方だが、本人は「子どもには自分が得られなかったものを与える」と言う。結論として、ある知人の言葉がある。「彼女はフレッシュとシャープという言葉が大好きでした」。それが彼女の実体でもあろう。〉
*絹織物の一種
本当にそれが「実体」なのだろうか。同じ日付の朝日新聞(以下、朝日)は横顔をまとめたサイド記事で彼女を“借金の天才”と呼んだ。4月2日付読売朝刊にはベタ(1段見出し)で、東京都世田谷区のミノブの別宅の家宅捜索で、地下室からウイスキー、ジン、ブランデーなどの洋酒1500本を発見したが、東京税関の調べで密輸品だと分かった、との記事が載っている。
4月8日には「レインボー」の相談役も逮捕され、捜査が進んでいるように見えたとき、国会で事件に関連した“爆弾”が炸裂した。
「政治献金のうわさ」爆弾発言
「横銭議員が爆弾発言」。4月10日付毎日新聞(以下、毎日)夕刊は社会面トップにこんな見出しを立てた。同じ日付の朝日は1面に「“政治献金のうわさ” 千葉銀行問題を追及 横銭氏(社)」の見出しで次のように報じた。
〈 東京・銀座のレストラン「レインボー」の千葉銀行に対する詐欺事件について、衆院大蔵委員会は10日午前10時半から一万田蔵相らの出席を求めたほか、篠原日銀調査局長を参考人として呼び、千葉銀行の融資について、政府側の監督状況などを追及した。この問題について銀行側はたびたび欠席戦術に出たため、社会党側委員を刺激。ようやく初の委員会が開かれたといういわくつきの展開。
この日、社会党の春日一幸(のち民社党委員長)、横銭重吉両委員は「千葉銀行の貸付は非常にルーズだ。これに対して政府はどんな処置をしたか」と追及。一万田蔵相は「千葉銀行問題はいま微妙な状態にあるので、検査などの内容は発表できない」と焦点をそらした。〉
「一万田蔵相」とは、一万田尚登蔵相(当時)のこと。日銀総裁を長く務めて「法王」と呼ばれ、蔵相は2回目だった。横銭議員は千葉県・野田醤油の労働組合で委員長などを歴任。県議を経て1955年、旧千葉1区で初当選した。
“爆弾質問”は質疑の途中、横銭議員から出た。朝日の記事は続く。
「古荘頭取から1000万円の政治献金」
〈横銭議員 蔵相は昨年12月か今年1月に、某代議士に多額の融資を頼まれて 古荘氏に対し、特にこれを頼むという意味の親書を渡している。内容は一体どんなものか。
一万田蔵相 ある代議士に(金を)融通しろという意味の手紙を出したことはない。内容もはっきりしたことは覚えていない。金銭の融通については全く触れていない(親書を出したことは暗に認めている)。
横銭議員 では、なぜそれを取り返したのか。
一万田蔵相 取り返したのではない。後で誤解を招くと考えたからだ。
横銭議員 親書を出す前の昨年12月ごろ、柳橋の中洲(正しくは中央区日本橋中洲)の某料亭であなたと唐沢(俊樹)法相、川島(正次郎・自民党)幹事長、岸(信介)総理(首相)ともう1人の代議士とが会談。その結果、検察庁に対しては唐沢法相が責任を持つ、行政上の問題についてはあなたが責任を持つ。そういう話し合いをされて、その結果、親書を出しているのではないか。
一万田蔵相 それは全くウソです。違います。
横銭議員 私も政治生命を懸けている。あなたにとっても重要な問題。誰にも会っていない、ウソ偽りというのは見逃せない。あなたが当日(古荘頭取と)会ったというのは、その裏に川島幹事長に対して古荘頭取から1000万円の政治献金が行われたということ(情報)はもう流れている。
一万田蔵相 全くそれはありません。
横銭議員 それなら、見たという人を証人に呼んで対決させる。でたらめを言っているのではない。その人は森脇将光氏だ。〉
#1 でも触れた「森脇文庫」社長で全国長者番付1位になったこともある森脇将光。彼が調査した結果をまとめた「森脇メモ」はいくつもの事件で登場したが、ここでもまた出てきたというところか。
ただ、朝日には森脇の談話も載っており、「私の調査と横銭氏の発言は大体似ているが、会談に一万田氏が出たことは知らない。当方で確認しているのは正力(松太郎)国務相、唐沢法相、山村(新治郎)代議士、古荘頭取の4人だ」とした。
当時は第一次岸改造内閣。唐沢法相は戦前の内務官僚で衆院1期目だった。正力国務相も戦前の内務官僚出身で読売新聞社主。川島は党人派で“寝業師”と呼ばれ、横銭と同じ旧千葉1区選出だった。山村はのち行官庁長官で旧千葉2区選出。横銭と合わせた3人がいずれも千葉選出というところがポイントだろう。
翌4月11日付朝日朝刊は「横銭発言で両党会談」の見出しでその後の動きを報じた。主要部分はこうだ。
「『横銭発言』は自民党を強く刺激し、結局、同夜(4月10日夜)院内で開かれた自民、社会両党の幹事長・書記長、国会対策委員長会談で事態の収拾が図られた。自民党側は千葉銀行事件の取り扱いを慎重にするよう求めたが、社会党側は同事件の真相究明を強調。事態の円満解決を望んでいた自民党の意図は達せられなかった」
記事によれば、「横銭発言」の(1)某代議士への融資についての料亭での会談、(2)古荘頭取から川島幹事長への1000万円の政治資金提供——について、自民党は全く事実無根と主張。社会党は引き続き衆議院大蔵委での事実究明を求めた。
同じ紙面には岸信介首相(当時)の「千葉銀行の古荘君から金をもらったことはもちろんないし、メシを食ったこともない。横銭君が、私が関係あるとかなんとか言っているとすれば、当然懲罰問題だ」という談話と、同様に全面否定した唐沢法相の話が載っている。
古荘頭取が辞意を表明
4月11日、「横銭発言」の取り扱いで午前中の国会審議はほとんどストップ。衆院大蔵委員会理事会が森脇将光の証人喚問を決定する一方、自民党は横銭議員を懲罰委員会に付す方針を決めた。同日午後、古荘頭取は一万田蔵相と会って辞意を表明(12日付日経朝刊)。12日には千葉銀行の緊急取締役会で退任が決定した。
本人は「世間を騒がせ、銀行に迷惑をかけた責任を痛感した。自民党幹部と会った事実や政治献金などはない」と述べた(13日付朝刊各紙)。日経は13日の社説「金融機関の信用保持」で事件について触れ、「徹底的に究明する必要がある」と主張した。
そして4月15日——。
〈 千葉銀行問題で証言 衆院大蔵委 法相・古荘氏ら会合 “蔵相親書”も認む 森脇証人
衆院大蔵委員会は15日、10日の同委での「横銭発言」に関し、唐沢法相、川島自民党幹事長が一身上の弁明を行い、次いで証人として出席した金融業者、森脇将光氏に対する質問が行われた。唐沢法相は、古荘千葉銀行頭取とは会ったこともないと弁明。川島幹事長は会ったこともないし、自民党に対して政治献金が行われたこともないと述べた。一方、森脇氏は3月に東京・(日本橋)中洲の料亭「喜可久」で唐沢法相、正力国務相、古荘頭取、中山貞雄氏(元衆院議員)が会合。古荘頭取が1000万円の手形を振り出し、現金900万円を受け取ったが、それを献金したかどうかは明らかでない、などと証言した。(同日付朝日夕刊1面トップ)〉
同じ15日、東京地検特捜部は詐欺の被害者として古荘前頭取から事情聴取。16日には坂内ミノブを釈放した。17日付朝刊で朝日と毎日は、特捜部は再逮捕も検討したが、事件が“政争の具”となっているため、任意で捜査を続けることになったと報道。野村(佐太男)東京地検検事正は読売で「捜査は引き続き行う。今後少しは支障もあるが、やむを得ない。その他は一切ノーコメントだ」と語った。
朝日の「解説」は「特捜部の調べは、坂内社長の単なる詐欺容疑の追及ばかりでなく、千葉銀行側の融資をめぐる疑問にも向けられ、場合によっては銀行側の特別背任容疑も考えられる事態となっていた」と書きつつ「今後の捜査困難に?」の小見出し。さらに、毎日は「『千葉銀事件』シリつぼみ?」が脇見出し、日経も社会面トップで「『レインボー事件』しりつぼみ」を主見出しにした。
既に16日付読売夕刊コラム「よみうり寸評」は「事件が政治利用される」ことについて「どうもシロウトにはわからない。サギや不正融資の有無を明らかにすることは、国会にも政治にも関係のないことではないか」と述べていた。
「発言の根拠を示せ」「情報源は言えない」
16日の大蔵委では横銭議員が参考人として出席。「与党、横銭氏に詰寄る」(同日付朝日夕刊見出し)展開もあったが、横銭議員は「記憶違いがあった」として、あらためて会合の事実を述べた。
それは、(1)1〜3月の間に古荘頭取を中心とした会合が7〜8回開かれ、岸首相、一万田蔵相、川島幹事長らが出席した、(2)これらの会合で千葉銀行問題のもみ消し工作が行われた、(3)政治献金があった事実は未確認——という内容。これに対して与党議員が「発言の根拠を示せ」と迫ったが、横銭議員は「情報源は言えない」と突っぱねた。
午後の参考人質問では、古荘前頭取が(1)(横銭発言の)1000万円の手形は事実だが、「レインボー」への融資で、政治資金には充てていない、(2)一万田蔵相から「よろしく頼む」という親書を受け取ったのは事実——などと述べた。
17日には一万田蔵相が同委で社会党議員の質問に、親書は山村議員から頼まれて書いたことを認め、「不注意だった。社交的な意味で、『金を貸してやれ』ということではない」と答えた。首相以下、政府与党で名指しされた政治家は政治献金はもちろん、会合も否定。17日付朝日「記者席」は「与野党のドロ試合の様相を深めてきた」と書いた。実は衆院開催が迫っていた。そして——。
「千葉銀行問題」は打ち切りに。残ったのは……
「(19)58年に入ると、国会には解散風が吹くようになった。既に前回の選挙から3年がたち、この間に内閣が3つも代わっているので、解散は近いとみられたことから、代議士たちが選挙運動に力を入れるようになったのである」=石川真澄「戦後政治史」(1995年)
19日付朝日朝刊はこう報じた。
「衆院大蔵委員会は18日、古荘千葉銀行前頭取、正力国務相に対して質問を行った後、『大蔵省の千葉銀行に対する監督は遺憾の点が多かった』旨の決議を行い『千葉銀行問題』の糾明を打ち切った」
同じ日付の毎日も「千葉銀の調査終る」の見出しで、読売は社会面トップで「国会はもうカラッポ」と空席の目立つ委員会室の写真を載せた。20日付読売朝刊のユーモア投書欄「USО放送」はこう書いた。「千葉銀行問題 結局、レストランと料亭の名の宣伝で終わりそうだ。 国民」。
確かに、残った問題は「レインボー」だけだった。
〈 《総額12億円》不正融資で起訴された男女にまさかの判決…「私はロマンを捨てることができない」文学少女を「虚飾の女」に変えた“時代の魔力” 〉へ続く
(小池 新)
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