「亀戸駅」には何がある? カメイドクロックだけじゃない、レトロ商店街と銭湯に恵まれた歴史の深い街

2025年3月20日(木)20時15分 All About

総武線と東武亀戸線の乗り入れる「亀戸駅」は、23区東部でも錦糸町駅や小岩駅に並ぶ繁華街の1つ。亀戸天神社も有名ですが、降りてみるとほかには何があるのでしょうか。実際に行って確かめてみました!

亀戸駅があるのは東京都江東区の最北端。「江東区」と聞けばまず、臨海副都心や豊洲など再開発が著しいウォーターフロントを連想する人も多いでしょう。しかし、そうした「変わりゆく東京」とは少し距離を置いて、亀戸では「変わらない東京」としての時間がゆったり流れています。
むろん再開発が全くないわけではなく、東口から徒歩2分の「カメイドクロック」に代表されるような再整備が進んでいるスポットもありますが、亀戸エリアの多くは昔ながらの下町感ある商店街&住宅街。あちこちに小さな公園が点在し、気張らずのんびり散策するときにおすすめですよ!

亀戸は、なぜ「かめいど」と読むの?

ところで「亀戸」という漢字を読むとき、地名としての「かめいど」を知らなければ、普通なら「かめど」と読むのが自然ではありませんか?
亀戸エリアははるか昔、太平洋側でなく東京湾側に接続していた頃の利根川河口に土砂が堆積してできた「亀島(かめしま)」が成り立ちだそうです。これがさらなる土砂堆積で河岸とつながって「亀村(かめむら)」となり、近くにあった井戸「亀ヶ井(かめがい)」と混同されて「亀井戸(かめいど)」となり、やがて井の字が取れて「亀戸(かめいど)」となったのだとか。

駅ビル最上階の庭園は、良好な展望スポット

JRの亀戸駅と東武線の亀戸駅はほぼ隣接。JR側の改札を出てすぐ右に行けば東武線です。JR〜東武の通路には「スターバックスコーヒー」や「成城石井」などがあります。特にスターバックスは駅を出てちょっと休憩したり、作業をしたりするのにちょうど良さそうです。
この亀戸駅に直結する商業施設「アトレ亀戸」は2024年に増床リニューアルしたばかり。ガラス窓を広く取った開放的なデザインになっています。フロアは地下1〜8階とかなりの充実ぶり。「一風堂」「丸亀製麺」などの飲食店やカフェ、ほかドラッグストアやショップがあります。また、7〜8階には屋上庭園「そらいどひろば」もあります。2月の寒空の下でも、平日昼は家族連れが多め。
亀戸周辺の街並みや線路を上階から一望でき、なかなかの開放感です。まずは駅南側へ。明治通りと京葉道路の交差点をまたぐ大きな歩道橋が目立っています。訪れた時点では老朽化した歩道橋を更新する工事のため、3月31日まで通行止めとなっています。駅前に限って言えば、亀戸でも再開発はそれなりの速さで進んでいるようです。
京葉道路沿いの建物と亀戸駅との間には居酒屋や飲食店が連なる裏路地があります。昼間は静かな雰囲気ですが、こうした場所で1杯飲んでみたくなりますね。この近辺で注目なのが、「キッチンDIVE」というお弁当屋。ご飯や肉料理がギッッッチギチに詰め込まれた1kgオーバーのデカ盛り弁当が有名で、食いしん坊にはたまらないお店です。

今風なカメイドクロックと昔ながらの街並み

総武線「亀戸駅」から徒歩2分の場所にあるのが「カメイドクロック」! 2016年まであった施設「サンストリート亀戸」の跡地に2022年4月開業した、近年の亀戸を代表する複合施設です。施設内には「コジマ×ビックカメラ」などの家電量販店をはじめ、飲食店、食料品店、アパレルショップなど数々の店舗が入居。敷地内の屋外通路には「カメクロ横丁」という飲食店街もあります。また、施設南側の屋外にはイベントスペースも兼ねた広場「カメクロステージ」も。このほか、屋内の吹き抜け部分にも全天候型イベントスペース「カメクロコート」があり、亀戸エリアにおける数多くのイベントが開催されています。イベントスペース脇には石造りのベンチもあり、軽く腰掛けてひと休みしたり、読書したり……といったゆっくりしたいときに助かります。同じ敷地内には「亀戸子ども家庭支援センター」もありました。亀戸エリアを歩いて感じたのは、子どもや家族連れがとても多いこと。豊かな住環境を整備し、子育て世代を積極的に呼び込んでいこうとする自治体の姿勢がうかがえます。

お花見スポットとして親しまれる公園も

カメイドクロックと隣接する「亀戸緑道公園」は1978年の開園。物静かな場所ですが、春になるとソメイヨシノが満開になり、お花見スポットとして多くの人が訪れるようになります。亀戸緑道公園から西側に渡ると、碁盤の目のような正方形の区画割りに飲食店などが点在しています。この区画割りは江戸時代に土地造成されて以来のもので、木材を船で運搬するため、碁盤目状(ごばんめじょう)に水路が張り巡らされた名残なのだとか。
その後は関東大震災、東京大空襲、昭和の区画整理を経て水路もなくなりましたが、亀戸が木場などと合わせて、江戸〜東京における木材流通の拠点だった痕跡が今も残っているのです。今では雑然とした生活感ある地域ですが、その中にも「亀戸南公園」が。亀戸エリアはこうした小さい公園や緑道などがあちこち点在しているのが特徴。公園そのものはよくある見た目ですが、地域の成り立ちを考えると、亀戸と「木」のつながりは今も健在なのかもと考えさせられます。

亀戸は、有名な浮世絵師・歌川国貞(豊国)が暮らした街

駅前の居酒屋街を南に進んで行くと、首都高速7号小松川線にぶつかります。首都高の下には「竪川河川敷公園」があり、ちょっとしたお散歩やランニングに適した広さ。アスレチック広場などもあり、市民の運動の場として利用されています。竪川河川敷公園をまたぐ「五の橋」と、東京電力の専用橋(電線などを通す橋)が並走しているのですが、そこに「三代歌川豊国(五渡亭国貞)生誕の地・浮世絵ギャラリー」がありました。歌川国貞(うたがわくにさだ)は、最晩年まで実に50年以上も浮世絵師として活躍し、役者絵など2万5000点もの浮世絵を残した人物です。1844年には師匠の号を継いで「豊国」と名乗るようになりました。また、五の橋がある場所では江戸時代に「五つ目の渡し」という渡し舟があり、その株を持って住んでいたのが豊国だったことから、別名が「五渡亭」となったそうです。五の橋から公園へ降りて西に歩いていくと、何かの路線のような高架に遭遇。これは小岩駅〜越中島貨物駅をつなぐ、貨物用の「越中島支線」の鉄道橋なのだそう。赤く塗られたトラス橋が力強いですね。五の橋に戻ってから「五ノ橋豊国通り商店街」を北に進んでいきます。こちらの街頭や建物壁面でも、歌川豊国の活躍や功績に関する紹介がされていました。なお、豊国と親交のあった河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)は、豊国の描いた絵から着想を得て歌舞伎演目『白浪五人男』を制作。それが後世の特撮ヒーロー番組、スーパー戦隊シリーズの第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(NET系、現在のテレビ朝日系)などにおける“名乗りシーン”のモチーフになったのだとか!
江戸後期に歌川豊国の描いた浮世絵の影響は、巡り巡って最新作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(テレビ朝日系)まで続いているのかもしれませんね。

駅北側の商店街は大にぎわい!

次は駅北側を歩いてみます。駅前のロータリーから北へ歩いた先は「亀戸十三間通り商店街」となっています。この商店街は日曜祝日の12〜17時は歩行者天国となっており、取材日は地元の方々から観光客まで、多くの人々でにぎわっていました。この通りに面している「肉のハナマサ」の横には、亀戸十三間通り商店街と接続する「亀戸中央通り商店街」の入り口が。ここは狭い道路の左右に、定食屋や餃子屋などローカルなお店が並んでいます。個人経営の青果店も複数あり、そのうち1店では、白菜ひと玉なんと税抜318円で販売されていました。野菜の価格が全体的に高騰気味で悩ましい中、この安さはすごくうれしいですね。また、本格的な中華系食品店や、本格点心を食べられる中華料理屋もいくつか見かけました。この商店街と十三間通りを合わせて、亀戸駅北側は中華系の店舗が目立っている印象です。個人商店だけでなく、ちょっとした日用品や食品の買い物に便利な「マックスバリュ」も店舗を構えています。

団地周辺にも隠れた買い物&ランチスポット

亀戸中央通り商店街は亀戸十三間通り商店街の東方向に伸びていますが、反対側の西方向にも「酒&業務スーパー 河内屋」があり、こちらも普段のショッピングに便利です。その近くの「亀戸二丁目団地」は団地内の1階部分に商店街があり、こちらも隠れた散策スポット。「新鮮市場」という量販店も団地内にあります。団地内の韓国料理屋「石焼ビビンパハウス」も発見!本格的なコムタン定食が身体に染みるおいしさでした。
亀戸駅の北側をぐるりと歩くと、商店街にある個人商店や量販店などの多さに驚かされます。店舗によって品ぞろえや価格帯もさまざまなので、あちこちのお店を巡って情報収集すれば、かなり家計の助けになりそうです。

1000年以上の歴史を持つ神社は「スポーツ」と「大根」が見どころ?

亀戸十三間通り商店街をさらに北へ進むと蔵前橋通りにぶつかり、その先は駅周辺と比べて比較的落ち着いた雰囲気の地区になります。深い歴史や由緒のある神社が近距離に2カ所もあるのが特徴なので、亀戸歩きの最後はそちらをのぞいてみましょう。蔵前橋通りをまたいだ先には量販店「オリンピック」があります。その左側の「亀戸香取勝運商店街」は、亀戸のほかの商店街と比べると、どこか静かでおごそかな雰囲気。その先にある「亀戸香取神社」の建立は665年。都内でも浅草寺(628年創建)などに次ぐ最古参格の寺社となっています。御祭神は国家鎮護を司り、刀剣が神格化された武神「経津主神(ふつぬしのかみ)」。源頼朝や徳川家康など数多くの武将・将軍に信仰され、塚原卜伝(ぼくでん)や千葉周作といった剣豪にも愛されました。転じて現代では、剣豪と同じく強い心身が求められるスポーツ選手達が数多く参拝しています。変わった見どころとしては、1999年建立の「亀戸大根之碑」なるもの。亀戸大根はかつてこの地域で生産されていた大根の一品種であり、普通の大根よりもやや小ぶりな円錐型でビタミンCに富んでいるとのこと。亀戸大根など「江戸東京野菜」は以前こそ忘れられた存在でしたが、現在は再評価やブランド化が進みつつあります。スポーツ選手が亀戸大根を食べて体作りに役立ててくれれば、いっそう江戸東京野菜の普及が進むかもしれないですね。

街を代表する観光スポット・亀戸天神社

亀戸香取神社から蔵前橋通りに戻り、左折して西方向に歩いていくと、途中からどんどん通行人が増えていきます。その多くが、この先にある「亀戸天神社」へと向かっている途中でした。「亀戸天神社」は菅原道真を祭神とし、「亀戸天神」という通称でも有名。1662年に九州太宰府天満宮の神職が、梅の木で造った菅原道真の像をまつったことが創建の由来だそうです。その参道や境内には、北口の商店街をさらに上回るような、ものすごい数の観光客が往来していました。神社の入り口前には鼈甲(べっこう)を使った細工のセレクトショップもあります。鼈甲細工もまた江戸期を代表する伝統工芸の一種です。亀戸天神社を訪れた時点では梅の花が見頃でした。ここでは2月中旬〜3月中旬に「梅まつり」が行われており、多くの人がかわいらしくきらびやかな梅花を撮影しています。また、シーズン外ながらここでは藤の花も有名。亀戸天神社の藤の花は「新東京百景」にも選ばれています。大きなアーチを描く、こちらの橋も神社の名物。登り降りの際は足元に注意ですね!現在は花だけでなく周辺の建物、とりわけ東京スカイツリーも境内からよく見ることができます。梅や藤の花とスカイツリーを一緒に画角に収めれば、かなり映える写真を撮影できそうです。

銭湯も3軒あって心身ぽかぽか

亀戸駅周辺には営業中の銭湯が3軒ありますので、そちらもご紹介します。

富山湯

カメイドクロック近くにある「富山湯」は見た目のインパクトが特大!「ゆ」の字の自己主張もスゴイですが、ガラスの色などレトロ&カラフルな雰囲気が、見ているだけでも心を温めてくれそうです。

らかん湯

亀戸駅から南方向に数分あるいた所の、大島らかん通り商店街近くにあるのは「らかん湯」。ここは都営新宿線・西大島駅の方が最寄り駅ですが、亀戸からも徒歩圏内。らかん(羅漢)という名前が強そうですね……!

隆乃湯

そして駅北側の亀戸中央通り商店街にあるのは「隆乃湯」。ビル型で設備も充実しており、商店街からのアクセスもよいため、浴室設備だけでなく周辺環境も充実したお店です。亀戸駅周辺は銭湯好きにとっても住みやすい街と言えそうです。亀戸駅周辺は長い歴史を持ち、江戸時代に培われた文化的風土を今でも大切にしている地域です。かつカメイドクロックや北口の商店街など買い物も非常に便利で、家賃相場を考えれば住環境はものすごく良好! とりわけファミリー世帯が新しい生活を始めるうえで、亀戸周辺はベストな選択肢の1つと言えそうです。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)

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