社会問題化している「ワンクリック詐欺」 その手口を元詐欺業者に聞いてみた

3月21日(火)16時30分 おたくま経済新聞

国民生活センター発表資料

ここ数年、人のスケベ心を利用したアダルトサイトの「ワンクリック詐欺」が横行し、社会問題化しています。

国民生活センターによると寄せられる相談の中で、アダルトサイトに関する相談が2011年度から2015年度にかけて5年連続で1位。さらに2016年度も引き続き相談が寄せられているそうです。そしてその内容のほとんどが「消費者がアダルトサイトにアクセスしたところ突然「登録完了」となり、料金を請求されるケース」。つまりワンクリックで登録完了してしまう「ワンクリック詐欺」となっています。

さらに、ひっかかる層は60歳以上が最も多いものの、全世代一定数がそれなりに存在しており、「年配だから引っかかる」とは言い切れない状況。また60歳以上の男性の相談が増加傾向にあり、2011年度は11,143件だったものの2015年度は17,729件と、約1.6倍に増加しているそうです。



ネットではこうした詐欺の手口が様々紹介され、対処方もセキュリティ会社はじめ既に多数紹介されていますが、「詐欺内容を分析した」側の情報だけでなく、実際の詐欺手口、そして詐欺業者が考える「正しい対処方」を知りたいと考え、今回人を介しワンクリック詐欺に過去関わっていた人物に取材を申し込んでみました。

【取材対象者「Mr.X」】

在籍していた会社命令により、ワンクリック詐欺のシステム開発に関わるようになる。その後運営には関わらないものの業界の深部まで覗くこととなり、Mr.X氏曰く「ある日突然、警察のお世話になった」のをきっかけに業界から足を洗った人物。

■ワンクリック詐欺にも「良心的」なものがあるらしい

−−まず最初になんですが、編集部でいくつかワンクリック詐欺と思われるサイトを探してみました。一緒に見ていただけますか。

Mr.X:いいですよ。

−−検索サービスで「○○ ○○」という卑猥なワードを検索します。検索結果上から3つめにあるサイト「A」に入り、そして一番上の、動画再生画面のようなバナーをクリックすると別のアダルト動画サイト「B」に移動させられます。

次に、B側の画面側でも動画再生風の画像があるのでそれをクリックすると「会員ID発行完了」が突然現れ、高額請求が表示されます。

【スマホでの実験手順】

検索サービスで「○○ ○○」という卑猥なワードを検索



上から3つめにあるアダルト動画サイト「A」を開く



アダルト動画サイト上部にあった「動画再生画面」をクリック



アダルト動画サイト「B」に移動



動画再生画面をクリック ※環境により18認証の場合もあるようです。



会員ID発行画面(高額金額を掲示)



Mr.X:これは100%ワンクリック詐欺ですね。検索結果のアフィリエイトサイトから流入させるケースです。ただこのサイト、PCで見ると画面の中に金額が表示されています。表示されている以上、これは警察対応がしてある、ワンクリック詐欺でも「まだ優良な方のワンクリック詐欺サイト」です。とはいえ、スマホからだとわかりにくいですが。

−−ワンクリック詐欺にも優良とかあるんですか?

Mr.X:あります。そもそも映像を掲載するアダルトサイトの場合には「映像送信型性風俗」を警察に届ける必要があります。でないと無許可風俗になりますので、警察に目をつけられやすいんです。

−−では警察に届けてるサイトがこういう詐欺をやっているということですか?

Mr.X:まぁそうなりますね。だからこのサイトに料金表があるのはそういうことです。恐らく中に掲載されている動画もこまめに最新のものがアップされていると思います。でないと「詐欺」になりますので。一応「きちんとサービスを提供している」という姿勢を見せています。こんだけの高額請求しときながら動画更新0だと流石に詐欺となりますが、新規更新もありきちんと運営されているものであれば、「架空請求」にはなりませんからね。

そういう意味で警察を意識してきちんと対策してあります。もしかしたら指導があって入れたのかも知れませんが。警察対策済みのサイトであることは間違いありません。

「警察に届けてる」「(わかりにく場所だけど)料金表もあらかじめ出してる」ということで「ちゃんと(見ようと思えば)見えるとこに表示されてるよ!詐欺じゃないよ!」的なアピールをしているわけです。きちんと「有料動画サイトです」って一応トップページに出してるわけですから。

−−では何で捕まるんですか?

Mr.X:実際パクられる時は、詐欺での立件もありますが「特定商取引法」や「恐喝」でもあげられます。あと、詐欺業者が最も恐れるのは「組織犯罪処罰法」です。詐欺より罪が重いので。

−−ちなみにこのサイトの場合、「特定商取引法」側ではどういう違反になるんですか?

Mr.X:スマホで見た時に年齢認証まで行かず、再生風の画像クリックで登録ですので、これが誤認を招くので「違反」ですね。あと、所在地が東京都で終わって住所が無いのと。でもまだこれは良心的な方の詐欺サイトです。

■悪質なワンクリック詐欺だとどんな手口?

−−良心的とか優良とか先ほどから出てきますが、逆に悪質だとどういうケースがあるんですか?

Mr.X:ゴリゴリな詐欺サイトですと、登録完了と同時に電話番号が消えないのもあります。「とにかくお電話を」みたいな。

−−ネットでみました。電話番号表示されて消えないケースがあると。そういう場合はどうしたらいいんですか?

Mr.X:キャンセルしてもスクリプトが出まくるので、電源落とすかタイミングを見計らってブラウザーを切るしかないですね。

■一度でも連絡すると「カモリスト入り」

−−他に悪質な詐欺だとどんな手口がありますか?

Mr.X:カモリストと紐付けてメールでばしばし請求かけるケースですね。

−−カモリスト?

Mr.X:一回詐欺に引っかかったことのある人、一度でも電話をかけたことのある人なんかの名簿が出回ってます。=カモリスト。

−−それを使って何するんですか?

Mr.X:カモリストには種類があり、一回詐欺にあった人の場合には、全くの架空請求に利用されることもありますね。一度払うと、次から次へと違う業者から連絡がくるから最後には「纒めて消しましょう」的な電話が来ることもあります。ちなみに過去逮捕された業者のカモリストには表紙に「鴨」の絵が描かれてたってこともありました。

次に名簿業者から個人情報を買い取ったものは、データをシステムにCSVで流し込みデータベース化します。さらに1人につき1ID割り振り、アダルト動画サイトの案内をメールで送るわけです。

メール本文にはIDに紐付いたその人専用の暗号化されたURLを掲載しておきます。1人につき1アドレスですね。で、受け取った側がそのページにアクセスすると、自分の本名・住所・電話番号・メールアドレスなどが載った会員ページが開き閲覧できる仕組み。

受け取って開いた側は大体パニックになります。流石に個人情報が全部のってるわけですから。覚えがないだけで登録しちゃったのかな?って焦って電話してくるわけです。

−−あくどいですね。

Mr.X:「どうやったらビビって連絡してくるか」っていうのばっかり考えてましたからね。ワンクリック詐欺は待ちの商売なので。客側にアクションを起こさせないと何もできないんです。

−−それに名簿を使い分けてるのも驚きました。

はい。名簿業者のは、普通の人が多いので。

■ワンクリック詐欺にあったら「無視が鉄則」はほんと?

−−ワンクリック詐欺にあったら、完全無視で電話・メールなど「一切しない」というのが鉄則と言われていますが、「客側にアクションを起こさせないと何もできない」ということは、やはりこの対応は間違ってないということでしょうか?個人情報も抜かれてない?

Mr.X:その通りです。電話やメールが来て初めて動けるんです。連絡無かったらなにもできません。ちなみに実際支払われなくても電話番号やメアドは入手できるので、それだけでもラッキー!です。カモリストに入れて他に回すだけなので。

−−とりあえず、連絡しちゃ絶対だめ!っていうことですね。

Mr.X:間違いありません。でも、たまにカモリストを見て簡易裁判所に訴える業者もいます。架空請求だけど、公式な法的手段を執るケースですね。これはやっかいなので、無視しちゃいけません。かといって書かれる電話番号に素直にかけると、それが業者というケースもあるので、もし簡易裁判所から手紙が届いたら、直接電話確認する前に国民生活センターか消費者センターに相談するか、その番号が簡易裁判所のものか調べて見ると良いと思います。

■他にもある「ビビらせる」ためのテクニック

−−他にも「ビビらせる」ための仕組みとかありますか?

Mr.X:画面をクリックしたら「カシャ」とシャッター音がなる仕組みです。そして画面に「写真データを送信しました」「連絡してきてね」みたいな文言を出すんです。突然写真を撮られたと思って使用者はビックリして電話かけてきます。

−−実際写真は送ってるんですか?

Mr.X:送ってません。あれも嘘です。ビビらせるための手段です。単にシャッター音が鳴るプログラムをかませているだけです。一時ワンクリック詐欺業界で流行っていたので自分のところでも使ったことがあります。

−−詐欺業界にも流行とかあるんですか!?他にはどんな手口が流行ったんですか?

Mr.X:うーん。統計は取ってませんが、自動音声案内って書いて退会の仕方を聞かせ、電話番号ゲットも流行りましたねー。ゲットしたら勿論カモリスト入りです。

−−反応は1日どのくらいありましたか?

Mr.X:登録者数に対して課金に至る人が1%いればウハウハです。

■ワンクリック詐欺サイトのシステム販売業者もいるらしい

−−先ほどから話を伺っていると、業者同士って繋がりがあるのでしょうか?

Mr.X:ないと言えば嘘になります。ワンクリック詐欺サイトのシステム販売業者もいますから。

−−そんなのまでいるんですか!?

Mr.X:販売されてるシステムは色々種類があります。昼夜でサイトデザインが変わるのとか。昼間は大人しめなアダルト動画サイトだけど、夜になったらゴリゴリの詐欺サイトになるやつだったり。

−−何故昼夜でデザイン変えるんですか?

Mr.X:国民生活センターか消費者センターに相談されたり、警察に相談されたりするじゃないですか?そうした場合にまず、事実確認するためにサイトをチェックするんですが、どれもアクセスしてくるのが昼間がほとんどなんで。

−−ほんとあくどいんですね。

Mr.X:まだマシな方です。他にも、アフィリエイトの成果を間引きするシステムも売られています。

−−間引きして何か得するんですか?ごめんなさい、ちょっと理屈の想像がつかないです。

Mr.X:えっと。大体この手のサイトって、どこからか誘導リンクを張って貰うんですが、大概が出稿したアフィリエイトバナーからなんです。

最初に例で見たケースだとAがアフィリエイトサイト。でBがAにバナーを張って貰い誘導して貰うと。そして決められた条件を達成すると(人が流入した時点、会員になった時点など)Aに対しては成果報酬が支払われる「約束」となっています。でもまじめに支払うと高額になるケースもあるので、ちょっと小細工して実際の成果を低くするんです。

−−では、アフィリエイトサイトも騙されてると。

Mr.X:その通りです。

−−ワンクリック詐欺サイトシステムっていくらぐらいで売られてるんですか?

Mr.X:うーん。ピンキリあって50万から100万ぐらいかなぁ。

−−意外に安い気もするんですが、そんなものなのですか?それとも短期運営になるから安い設定とか?

Mr.X:そういうわけではないと思います。基本システムは使い回しなので。

−−他にはどんなものがあるんですか?

Mr.X:動画を用意できないサイト向けに、動画パッケージもあります。一応、アダルト動画サイトなのでこまめに新しい動画はサイト自体アップしなければすぐ「詐欺」と言われちゃうので。「サービス提供してますよ」と証明するためにも、更新は欠かせません。そこで、アダルト動画のパック販売が行われています。

−−それってどこから持ってくるんですか?

Mr.X:ネットから適当に拾ってるんだと思います。

■どんな人が運営してるの?

−−ワンクリック詐欺に電話したら怖いお兄さんに電話対応された!なんて話もよく聞くんですが、運営してるのはやはり暴力団だったりするのでしょうか?

Mr.X:ヤクザは聞いたことないですね。かなりうるさいご時世なので。もし直接運営していたら、警察が小躍りするレベルの話だと思います。スキップしながら令状持ってきますよ。

−−ではどんな人達が?

Mr.X:本当に普通の人がやっています。その辺にいるサラリーマンと変わらない人や、ジーパンにシャツインしてるようなまじめで大人しいタイプの人まで。普通に家庭を築き、普通に暮らしてる人も多いです。

−−シャツインしてる人が「ゴラァァ」って電話してることもあるんですか?

Mr.X:超あるある話です。本当に普通な人ばかりなので。

■元詐欺師達のその後

−−Mr.Xは警察にお世話になったのをきっかけに業界から身を引いたということですが、捕まったりすると元詐欺師達はその後どうなるんですか?

Mr.X:懲役行く人もいますし、まぁろくなことにはなりません。最近は何かあると警察が芋づる式に引っ張っていくので。自分のところは対策は大丈夫だと思っていても関係する余所で何かあると「ちょっとおいで」と警察に呼ばれることもあります。

−−先ほど普通に家庭持ちの人がいるって話でしたが、そういう人の場合は家族崩壊なども?

Mr.X:ですです。まぁ色々あります。

−−今回は長い時間ありがとうございました。

▼参考

国民生活センター

(宮崎美和子)

おたくま経済新聞

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