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照ノ富士に「モンゴルへ帰れ」のヘイトヤジ...それを肯定したスポーツ新聞と黙認した日本相撲協会の差別体質

LITERA4月1日(土)12時0分
画像:日本相撲協会公式サイトより
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日本相撲協会公式サイトより

 稀勢の里が劇的な逆転優勝をおさめ、大きな注目を浴びた大相撲春場所。ケガを押して勝ち取った優勝が感動を呼び相撲ファンは熱狂したわけだが、その一方で残念なことも起こった。照ノ富士へのブーイングとそれに関するメディアの報道である。


 3月25日に行われた大相撲春場所14日目で、モンゴル出身の大関・照ノ富士は関脇・琴奨菊に勝利。左膝にケガを抱えた状況で臨んだこの一戦で照ノ富は立ち会いで変化、はたき込みで琴奨菊を破ったのだった。


 この内容を受けて観客は大ブーイング。「そこまでして勝ちたいんか」といった罵声が飛んだ。そのヤジのなかには「金返せ」、「勝ったら何でもいいんか」というものに加え、「モンゴルへ帰れ」というヘイトスピーチに類するものまであったという。
 確かに、大関が下位力士相手に立ち会い変化をすることは一般的にはあまり褒められたものではないとされており、優勝をかけた大一番ならいっそう、そのような取組を行うことが批判の対象になるのは仕方がないことなのかもしれない。


 しかし、それと「モンゴルへ帰れ」というヤジが許されるかどうかはまったくの別問題だ。そもそも、照ノ富士にこれだけ強いヤジが飛び交ったこと自体に、差別的な側面がある。というのも、千秋楽で横綱である稀勢の里は照ノ富士に対し立ち会い変化を見せて勝利しているが、これには前述のような怒号は飛ばなかったからだ。


 また、これに対する報道もひどかった。照ノ富士と琴奨菊の一戦を報じたウェブ版のスポーツ報知は、「照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!「モンゴル帰れ」」と見出しをつけて報じた。

 ヘイトスピーチのヤジを好意的に受け止めているとも読めるこの見出しには批判が殺到。津田大介氏もツイッターで〈法務省がガイドラインとして「アウト」と示しているのにそれを否定せず(何なら肯定的な文脈で)見出しに使う報知新聞が一番アウトではこれ......。「美しい国」だよまったく。〉と苦言を呈するなどしていた。


 これを受けて報知新聞社は翌日、見出しから「モンゴル帰れ」の部分を削除。また、記事本文にある「モンゴルに帰れ!」「恥を知れ!」などのヤジ紹介部分も削除したうえ、29日にはウェブサイト上に〈大関・照ノ富士関の記事と見出しで、観客のヤジを記述した部分に、ヘイトスピーチを想起させる表現がありました。人権上の配慮が足りず、不快な思いをされた皆様におわびします。〉と謝罪のコメントを出した。



 なんとも頭の痛くなるような一件だが、実は、スポーツ報知が無自覚にこのような差別的な記事を配信したのは今回が初めてではない。


 それは一昨年のことである。2015年8月12日付紙面で、甲子園での関東第一高校(当時)オコエ瑠偉選手の活躍について、偏見と差別を助長する表現を用いたことが物議を醸した。


 現在は東北楽天ゴールデンイーグルスに所属するオコエ選手は、ナイジェリア出身の父を持つ強肩俊足の好外野手。報知はハーフのオコエ選手をアフリカの野生動物に喩えて、このように書いた。


〈真夏の甲子園が、サバンナと化した。オコエは本能をむき出しにして、黒土を駆け回った〉
〈野性味を全開〉
〈味方まで獲物のように追いかけた〉
〈ヤクルト・小川シニアディレクターは「本能を思い切り出す野獣のようだ」。ロッテ・諸積スカウトは「ストライドが長い。ヒョウみたい」。スカウト陣からは野性的な賛辞が続出した〉
〈飢えたオコエが、浜風をワイルドに切り裂く〉


 この明らかにオコエ選手の活躍とアフリカ系の出自とを結びつける記事に、ネットでは「アフリカ出身の父を持つだけで動物扱いかよ」「レイシズムの見本市」「気が利いたこと言おうとして無自覚な差別意識がダダ漏れ」と批判が続出。こうした声を受けてウェブ版の該当記事を取り消しているが、今回の「モンゴル帰れ」記事の顛末を見る限り、報知新聞社は1年半ほど前のこの一件で得たはずの教訓を何も活かせていないことがよくわかる。


 ただ、そもそも、今回の件で問題なのは、照ノ富士にブーイングを浴びせた観客、そしてなによりも、ヘイトスピーチに類するヤジを黙認している日本相撲協会だ。


 もちろん、観客がブーイングすること自体は責められるべきことではない。ただ、それは相撲の取組の内容に関してであって、それが国籍や人種に関することであれば、話は違うだろう。



 前述したスポーツ報知の記事では、二所ノ関審判部長が照ノ富士の取組に対してこんなコメントを寄せていた。


「がっかりした。(横綱に)上がる人がね...。ブーイングも分かるよ。優勝したら綱取り? 内容(の問題)もあるしな」


 その立場からすると、二所ノ関審判部長は「モンゴルに帰れ」といったヤジを知っていたはずだ。それで「ブーイングも分かるよ」とコメントするのは、ヘイトを黙認しているということではないか。


 他のスポーツはこういったヘイトスピーチ的なヤジに対してもっと厳格な態度を示している。顕著なのがJリーグで、たとえば、14年3月、浦和レッズの開幕戦で掲げられた「JAPANESE ONLY」の横断幕は大きな問題となった。Jリーグは浦和レッズに対し、リーグ史上初の無観客試合のペナルティーという重い処分を課し、横断幕を出した当該サポーターチームも無期限の入場禁止および活動停止となっている。


 また、同年9月に行われた横浜F・マリノスと川崎フロンターレの試合中、マリノスのサポーターがブラジル出身のレナト選手に対してバナナを差し出した人種差別的な挑発行為も大変な問題となった。このとき、レナト選手に対してバナナを差し出したサポーターも無期限入場禁止の処分が下されている。


 Jリーグのこのような施策は、差別問題に意識的なヨーロッパのサッカーリーグから学んだものであり、大相撲とは背景となる文化事情が異なるとはいえ、外国人力士が登場して久しい現在、日本相撲協会もこのような取り組みを始めてしかるべきなのではないだろうか。


 それにも関わらず、日本相撲協会の足取りは重い。引退後も角界に残り一代年寄になりたいとしている白鵬を苦しめる〈年寄名跡の襲名は、日本国籍を有する者に限ることとする〉の規約に代表されるように、日本相撲協会の排外的な傾向は強い。


 そもそも、大相撲におけるヘイトヤジ問題も今回が初めてではない。昨年の3月場所、白鵬と日馬富士の一戦で白鵬が左への変化で勝利したことに対し、観客は大ブーイング。白鵬は優勝インタビュー中に涙を流しながら謝罪した。このときのヤジにも「モンゴルへ帰れ」というものがあったと報じられている(16年3月28日付日刊スポーツ)。こういった問題が続出している以上、Jリーグのように、何らかのかたちで観客に意識改革を促す施策をとることは必須だろう。


 ここのところ、大相撲を取り巻く雰囲気は異様だ。長らくモンゴル人力士の活躍が続いたなか現れた稀勢の里、約20年ぶりに誕生した日本出身横綱の誕生に観客は熱狂している。


 稀勢の里の活躍は喜んでいいものだとは思うが、その一方で外国出身力士を蔑むことが本当に大相撲を応援することになるのか。日本相撲協会も、観客も、もう一度考え直す必要がある。
(編集部)


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