フィリピンへの「恩返し」はカキ養殖 台風ヨランダ被災地に技術伝える【震災8年 海外とつながる(最終回)】

4月11日(木)7時0分 J-CASTニュース

フィリピンでのカキ養殖指導の様子(写真提供:いしのまきNPOセンター)

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近年、世界でさまざまな自然災害が発生し、各地に被害をもたらしている。一方で、被災地の間では国境を越えた支援や交流が生まれてきた。

東日本大震災で大打撃を受けた宮城県石巻市と東松島市。水産業が盛んなこの地域から、2013年の巨大台風の被災地・フィリピンにカキ養殖の技術を提供する試みが行われた。



大統領自ら石巻へ



中心気圧は最大895ヘクトパスカル、スーパー台風と化した2013年の台風30号。日本には直接影響はなかったが、フィリピン中部のレイテ島やサマール島を直撃した。津波のような高さ5〜6メートルの高潮が住民を襲い、死者・行方不明者は約8000人に達した。この台風は現地語で「ヨランダ」と名付けられた。



フィリピンは、東日本大震災時の支援国のひとつだ。2011年9月、当時のアキノ大統領が石巻市役所を訪れ、100万ドル(約1億1000万円)を寄付する旨の書簡を石巻市長に手渡した。これに対してヨランダ発生後、日本政府は国際緊急援助隊医療・専門家チーム、自衛隊をフィリピンに派遣し、緊急無償など約53.1億円の資金協力を行ったと国土交通省の資料にある。



日本とフィリピンはいずれも海に囲まれた島国で、地震や台風と自然災害が多い。一方、水産業が盛んなのも共通点だ。被災地の石巻市や東松島市から、フィリピンの水産業復興への「恩返し」ができないかとの動きが生まれた。



柱となったのは、国際協力機構(JICA)の事業だ。ヨランダ発生後、JICAは「QIP」という緊急支援プロジェクトとして、フィリピンに日本の技術を導入し、被災前より良い街づくりを目指して活動していた。そのひとつに、カキ養殖の技術指導があった。QIPは2016年3月末に終了するため、これを引き継ぐ形をつくろうと、東松島市がカキ養殖と水産加工品づくりにおける人材・技術提供の計画を「JICA草の根技術協力」というプログラムに申請。承認を受けると、同市は「いしのまきNPOセンター」(石巻市)に実施を依頼した。



いしのまきNPOセンター専務理事の四倉禎一朗さん(54)は2014目にフィリピンを視察し、帰国後はレイテ州水産担当職員とやり取りを重ね、2016年6月、石巻と東松島のカキ養殖業者と水産加工業者を連れて技術指導に向かった。



現地事情に合わせ、長く続けられるように



現地では既にQIPとして、カキ養殖が行われていた。淡水と海水が混じり合う「汽水域」が育成に適しており、実際にそのような場所で行われていたが...。



「同行した養殖業者からすぐに『この場所じゃダメです』と言われました」


と四倉さん。汽水域ではあるが、過去に大雨が降った際に川の水が流れ込んで塩分濃度が低下し、カキが全滅した経緯があったのだ。場所を変え、養殖に必要な塩分濃度を測る装置を使うような基礎的な指導からスタートした。



現地の事情に合わせた方法も指南。例えば養殖設備の「フロート(浮き)」は簡単に手に入るプラスチックのドラム缶を代用。安価な資材を活用し、長く続けられる環境づくりを提案した。フィリピンの女性たちには、カキの加工方法を専門業者が指導するワークショップを開いた。



もともと養殖のノウハウは現地になく、漁協のような共同組織も存在しなかった。作業は試行錯誤の連続だ。それでも四倉さんらは「天然のカキを取り尽くす漁業では、今に破たんする」と養殖の大切さを説き続け、現地の人が長く続けられて収入アップにつながる方法を模索した。カキの成長には最低10か月はかかる。失敗も少なくなかったが、「現地の漁業者の意識は向上していきました。自分たちで工夫したり、別の集落の漁業者同士が共同作業したりと、学んだことを生かそうと懸命に取り組んでいました」。



プロジェクト自体はこの3月で終了。3年間でカキ養殖と加工法を教え込み、カキを一定量収穫できた。道筋はつくれたと四倉さんは感じている。養殖の各種データを現地に残し、「あとはフィリピンの水産庁が、これをモデルケースとして各地に広げていってくれれば」と願う。東松島市で同プロジェクトの窓口を務めた復興政策部の川口貴史さんは、「一過性の支援ではなく、持続可能なものとして技術を伝えられた意義は大きいと考えられます」とコメントした。



四倉さんは今後、3年間の経験を生かして、例えばカキ養殖のマニュアルのようなものをイラストで分かりやすく作成し現地で配布したり、今回指導した現地の行政担当者や漁業者を講師として別の集落に伝えてもらったりと、普及に貢献できればと考えている。(おわり)


(J-CASTニュース編集部 荻 仁)

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