フランス人がハマる日本の「大衆食文化」。ラーメンでもすしでもない、3つの“居酒屋メニュー”が人気

2025年4月15日(火)21時25分 All About

日本には、ひと晩に何軒も飲み歩く「はしご酒」という文化があります。筆者が暮らすフランスにはそうした習慣がないため、日本を訪れたフランス人から驚きと喜びの声が寄せられました。(写真は筆者撮影、以下同)

フランスで暮らす筆者は、「外食」を通して、日本とフランスのある違いに気付きました。それは、フランスの人々が「ひと晩に1軒のレストランしか行かない」という事実です。

フランス人を魅了する「はしご酒」

フランスでは、カジュアルなビストロでも高級レストランでも、ひと晩に訪れるのは「1軒だけ」と決まっています。まれにバーに流れることはあっても、そこで楽しむのは純粋にお酒だけ。食事は基本的に、レストランでしか取らないのです。
渡仏したばかりの頃は、そんな外食文化を日本と比べて「少し寂しいな」と感じることもありました。今では慣れてしまいましたが、日本に帰国する際は、ひと晩に何軒も飲み歩く「はしご酒」が一番の楽しみだったりします。
しかし、その楽しさに気付いたのはどうやら日本人だけではないようです。日本が大好きだというフランス人の友人も、日本人に連れられて体験した「はしご酒」文化に大きな感銘を受けたと話してくれました。

日本の大衆食文化に惹かれるフランス人

フランスでは今、日本の大衆的な食文化に大きな注目が集まっています。これまでは「すし」の一点張りだった日本食も、YouTubeをはじめとするSNSの影響で、おにぎりやカレー、サンドイッチといった日本人のリアルな食生活に触れる機会がぐっと増えてきました!
中でも熱い視線を浴びているのが、いろいろなものを注文できる「居酒屋」スタイル。実際、パリの中心部では「IZAKAYA」と名付けられた日本風の居酒屋レストランが、20〜40代のフランス人から大変な人気を集めています。日本の映画や漫画を見て「居酒屋を知った」という人も多いようです。
ただ、日本で“本物の居酒屋”を体験したフランス人たちは、「もうパリのIZAKAYAには戻れない!」と口々に言っています。物価の違いもありますが、それ以上に「ひと晩に2軒、3軒と飲み歩きするスタイルが新鮮で楽しかった」とのことです。
フランスには、1つのレストランで、ゆっくりと時間をかけてフルコースを楽しむという外食文化があります。だからこそ、ふらっと立ち寄れてカジュアルに飲める日本の居酒屋文化が目新しく映ったのでしょう。

日本人のフットワークの軽さに驚き

日本語が少し話せて、日本に知り合いもいるというフランス人の友人が、2024年に初めて日本を訪れたときのことです。彼は東京の居酒屋で、焼き鳥やハイボールなど、日本ならではの味を存分に楽しみました。
しかしお会計を済ませた直後、日本人の友達が「次、行こう!」と楽しそうに言い出したことにびっくり。「次って何だろう?」と首をかしげながらついて行くと、着いた先はなんとおでん屋さん。さっき食事をしたばかりなのに!? と、思わず驚いてしまったそうです。
さらに彼を驚かせたのは、次の店までタクシーで移動したこと。フランスではよほど遠くない限りタクシーは使わないため、そのフットワークの軽さにもカルチャーショックを受けたとか。しかも日本人の知人たちは、仕事終わりで疲れているはずなのに、そして翌日も仕事があるのに、ひと晩に何軒もはしごしながら案内してくれている……! フランス人の友人は、そんな日本人の優しさとエネルギーに感銘を受けたと話してくれました。
確かにフランスでは、「いろいろな料理をちょっとずつつまむ」という食文化が、普段の食事でも外食でも全くありません。頼んだお皿は基本的に自分だけのものですし、店を変えて気分を変えるという発想もゼロです。そのため、おいしいものや楽しい時間をみんなでシェアして、思いきり楽しむという日本の食文化が彼の目にはとても魅力的に映ったようですね。
彼にとっての「はしご酒」はこうして、日本での思い出の中でも特に楽しかった出来事として、今でも心に残っているそうです。

居酒屋の人気メニュー3つ

居酒屋好きなフランス人から、とりわけ高い人気を集めているのがこちらの品々です。

だし巻き卵

ほぼ100%の確率で「おいしい」と言われる「だし巻き卵」。オムレツが有名なフランスですが、だしの風味と大根おろしを添えて味わうこのスタイルは、新鮮かつ意外性のあるおいしさとして大好評です。

なすの煮びたし

なすの煮びたしがここまでフランス人に人気だとは、筆者も意外な発見でした。トロトロとした食感と優しい味わいが染みるらしく、YouTubeを参考にしながら自宅で再現する人も少なくありません。

ナポリタン

こちらもかなり意外ですが、ナポリタンを好きなフランス人は多いです。ただし初めての訪日では「日本らしい料理」を選ぶため、ナポリタンのおいしさに気付くのは2回目以降になるとか。パスタに関しては(イタリア人より)寛容で、好奇心が強いイメージです。そのほか、「豆腐、のり、しょうゆのクオリティーがフランスと全然違う! 食わず嫌いしているフランス人は日本で食べるべき」といった声も少なからず聞きました。

もっと知りたい日本の飲食文化

フランス人が感銘を受けたという、日本ならではの「はしご酒」文化。「慣れないうちはちょっと疲れるけれど、とにかく楽しい」「1度にいろいろな日本食を楽しめるので効率がいい」と、特に若い世代から好評です。
とはいえ、はしご酒は日本人と一緒でないと自発的には見い出せないもの。言葉の壁もあって、夕食を1軒だけで済ます外国人観光客は多いのではないでしょうか。
日本が好きで、「一度は行ってみたい」「何度でも訪れたい」と感じるフランス人は今、確実に増えています。そんな彼らはやはり日本食が大好き。人とのつながりや街の表情を感じられる“飲み歩き文化”も伝えることができたら、日本をもっと好きになるかもしれません。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)

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