どこよりも早い「東京レインボープライド 2024」リポート! SHELLY「変わることは、当事者の仕事ではない」に会場沸く

2024年4月21日(日)8時45分 All About

史上最多の来場者を記録した2023年に引き続き、2024年も4月19~21日に開催される「東京レインボープライド 2024」。当事者である筆者が実際に行ってみたリポートを送る。(サムネイル写真撮影:登万里子)

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もしかしたら、4月19〜21日は、今の日本で年に数度しかない、多くのセクシャルマイノリティが自分を偽ることなく、堂々と街を歩け、自身のセクシャリティをオープンに人と話せる日なのかもしれない。また、セクシャルマイノリティだけでなく、障害を持つ人も、持たない人も、アライ(LGBTQを理解し支援する人)も、LGBTQ以外の人も、誰もが平等に、差別されることなく生きられる日なのかもしれない。
同期間開催される「東京レインボープライド 2024」(TRP 2024)。「LGBTQをはじめとするセクシャル・マイノリティ(性的少数者)が差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、前向きに生きていくことができる社会の実現を目指し、イベントを通じてLGBTQ当事者並びにその支援者(Ally)と共に、『“生”と“性”の多様性』を祝福しつながる『場』を提供」することを目的に、1994年8月に日本で初めてのプライド・パレードが開催されてから、丸30年を迎えた。
2023年のTRPは2日間で約24万人が来場するなど、かなり規模なイベントへと成長したことが分かる。今回、レズビアンである筆者は5年ぶりに同イベントへ参加した。TRP 2024はどのような内容だったのか、リポートしたい。

目の当たりにした「TRPボイコット」デモ

2023年4月19日、初日となるはずだった日だが、強風のため開催中止となり、20日が本当の初日となったTRP 2024。風もなく、晴天で、むしろ昼間は暑すぎるのでは、とも思われるほど天気に恵まれた。
11時半ごろ原宿駅に着く。人の多さは、原宿特有のものなのか、それともTRP 2024があるからなのか、まだ判断がつかない。会場へ行くため、過去に何度も通った道を歩むが、会場に近づくにつれ、人が少なくなっていく。まだ時間が早かったのだろうか、それとも2024年のTRPは案外、人が少ないのだろうか。そんなことを思いながら、会場入口へと着く。
入り口では、「TRPボイコット」を掲げる小規模のデモをやっていた。ガザでジェノサイド(大量虐殺)を行っているイスラエルがTRPの協賛になっているとの情報が一時ネットを駆け巡ったからだ。3月中旬、それについてTRP主催者は「TRP2024には、現在お問い合わせを頂いている特定の企業や大使館からの協賛はございません」と声明を出したものの、当事者の間では「ピンクウォッシュだ」と批判の声が止まることはなかった(※「ピンクウォッシュ」とは、LGBTQ支援を積極的に打ち出すことで、負のイメージがある事実を隠すイメージ戦略)。

多種多様なブースを巡る

私たちはまず会場をざっと回ることにした。まだそこまで人はおらず、それなりのパーソナルスペースを保ち歩くことができる。所狭しと大量に並ぶブースが目を引く。名前を知っている企業もあれば、知らない企業も、多数のブースがあり、どこもにぎわっていて楽しそうだ。特に目当てのブースはないため、声を掛けられたIBMのブースに入ってみた。

「世の中の変わってほしいこと」「私の行動宣言」、どちらかの内容をポストイットに書くと「ボドル入ICEタオル」もらえるとのこと。私は後者について書き、無事に「ボドル入ICEタオル」をゲットし、さらに顔にタトゥーシールも貼ってもらえた。またすぐ近くにあった、「レズビアン・セクマイが出会えるSNSアプリ」を提供する「PIAMY(ピアミー)」ブースにも寄ってみた。「レズビアンバッグ」に加え、『ビアンマップ新宿二丁目2024』なる物ももらえた。今までレズビアンやセクシャルマイノリティの女性が過ごせる店だけを取り上げたMAPはなかったと思われるので、当事者にとってはうれしい試みだ。

中村中氏の鬼気迫る歌声

その後、すでに催しが始まっているステージへと向かう。絶好の撮影ポジションを確保でき、ゲストらを撮影する。まず「Pride Choir Tokyo」が合唱を披露し、その次にLGBTQの当事者もいるYouTuberグループ「午前0時のプリンセス」とゲイ2人組のYouTuber「2すとりーと」が登場。軽妙なトークで、彼らが話すたびに会場からは笑いが起こる。3組目のゲストはトランスジェンダーの歌手である中村中氏。同性婚ができない日本に絡めた話を披露した後、とても透き通った声で曲を歌い上げた。2023年12月に亡くなった歌手の八代亜紀氏への追悼の意味も込めた曲では、一転、力強い歌声で、鬼気迫るものを感じた。最後は、明るい雰囲気の、今後への希望が感じられるような歌を歌い、「みんな幸せになりましょうね、ありがとう」とステージを去る中村氏。この時、すでに会場は満員だ。

「変わることは、当事者の仕事ではない」

続けて登場したのは、タレントのSHELLY氏。TRP 2024のテーマである「変わるまで、あきらめない」に絡めた話を語った。「変わることは、当事者の仕事ではない。アライたちの仕事なんだよ。私たちが戦わないといけない。明日、明後日、明明後日、この先ずーっと応援しつづけることが大事だと思います」と、あくまで“アライ”が日本を変えようとしないといけないと力説し、当事者である筆者は強く胸を打たれた。当事者だからどうにかしないといけない、変わるように働きかけないといけない、そう思っている人は大勢いるはずだ。しかし、アライこそが行動しないといけない、とのこと。
さらに「どうやって? 選挙なんだよね。急に大人の話だけれど。同性婚できないのおかしいじゃん、その考えを持っている人に投票する。とにかく『アライだよ』『応援しているよ』とアピールし続ける」と、LGBTQについて他人事ではなく自分事として捉えることをアピールしたSHELLY氏には、盛大な拍手が巻き起こった。また、対談相手として登場したタレントでエッセイストの小島慶子氏も「大切な人を紹介するなど、当たり前のことが30年たってもまだ実現されていない。残念です。日常の話題にするだけでも、世の中は変わる」と力説。「日常の振る舞いで世の中は変わっていく。半径2メートルの行動が大事」とのことだ。

見た目も楽しいレインボーカラーの食べ物

ステージを一通り見終えたあとは、小腹が空いたため飲食ブースへ。和洋中、さまざまなテイストのブースがある。いつもの祭りで見かけるような定番の屋台から、IKEAやレインボーに絡めた屋台まで、多種多様な店構えだ。いつもなら茶色いチョコレートでコーティングされるチョコバナナも、今回はカラフルなコーティングに。食べなくても見ているだけでも楽しめる見た目となっている。

自身を認めるようになれたのが参加のきっかけ

ここで、会場で出会ったモデルの伊東彩氏に登場していただく。自認がXジェンダー(中性)とのこと。TRPにはコロナ禍を経て開催された2022年と2023年に参加し、今回で3回目になるが、最初に参加するまでは「葛藤していた自分がいた」ようで、「自分で自分を認めるようになってから」は来ることができたと話している。「同じ当事者の方とか、あとはどういう世界なのかなっていうので遊びにふらっと来てみたり」と、そういった楽しみ方がTRPにはある。
実際に会場に来てみた印象については「お祭りって感じですね」と。「男女関係なく、本当にフラットな関係で。お子さんとかもいらして、そういう(LTBGQの)イベントってよりかは、本当にお祭りって感じかなって」。また「友人はイベントの主催の方で活動していたりもして、そこに遊びに行ったりもあります」と、TRPで友人との交流も楽しんでいるよう。人の多さについては「年々増えている」とのこと。
モデル事務所に入って3年の伊東氏。「私自身を認めるようになって、自分の強みは、個性はなんだろうって思ったときに、モデルが結びついた」と、モデルを始めたきっかけも話してくれた。さらに「今、時代が変わりつつあるのかなとは思うんですけど、やっぱり、どの時代にも柔軟性って必要なのかなって。こういう場所じゃなくても、さまざまなことに対して。なので私も柔軟性を持ちながら、モデルの活動をしていきたい」と、今後への抱負も語り、最後にモデル業界の現状についても言及した。
「モデル活動を通して、洋服は多様性になってきているんですけど、ブランドとかも、ユニセックスになったり。でも、モデルをする人たちは多様性ではなくて、やっぱりまだ男女で分かれていて、そこが自分も葛藤する部分というか。内面と外見がリンクする表現者になりながら、そこには私自身も多様な表現、柔軟性を持って枠にとらわれない日々を過ごしていきたいな、と。あとは、プロフィールとかも、まだまだやっぱり男女で分かれてしまう。そこを私自身、ちょっとでも力になれたらなっていうのがあって、モデルをやっています」

1万5000人の参加者だった2014年

会場を歩いていると日本語や英語だけではなく、中国語、スペイン語など、本当にいろんな言語が飛び交い、さらに歩いている人も子どもから大人まで、老若男女問わずだ。本当にここまで大きなイベントになったことが感慨深い。
筆者が初めて参加した2014年時は、参加者はまだ1万5000人程度だった。2023年は倍以上の24万人に。こんなにも多くの人が参加するイベントになり、日本も徐々に変わりつつあるとは言えるが、それでもいまだ同性婚はできず、同性カップルやセクシャルマイノリティらは、差別を受け、困難にぶつかる。
もっと多くの人にこのイベントを知ってもらいたい。セクシャルマイノリティについて知ってもらいたい。そう思いながら、今回のリポートを終わらせる。2024年4月21日はパレードがあるため、そのリポートもこうご期待!
(文:杉野森 樹莉亜)

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