ミャンマー拠点詐欺、タイ当局拘束の男2人を愛知県警が容疑で逮捕…他の日本人関与も捜査
2025年4月23日(水)21時24分 読売新聞
愛知県警察本部
ミャンマー東部の国境地帯で国際的な詐欺が行われている問題で、愛知県警は23日、現地から詐欺電話をかけたとして、タイ当局に拘束されていた男2人を日本に移送し、詐欺容疑で逮捕した。日本警察が現地を拠点にした詐欺事件を摘発するのは初めて。男らはSNSの「闇バイト」に応募したとみられ、警察は隣国のタイ当局と連携して、他の日本人の関与も調べる。(中部支社 小林岳人、藤江広祐)
逮捕されたのは、いずれも住所不詳で無職の男(32)、と別の男(22)の両容疑者。3月にタイ当局に拘束されており、23日午後、羽田空港に移送される航空機内で逮捕状が執行された。
発表によると、2人は仲間と共謀して1月14日、米国出張中だった三重県鈴鹿市の男性会社員(46)のスマートフォンに、警察官を装って「マネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑いの逮捕状がある」「疑惑を晴らすには現金が必要」とうその電話をかけ、口座に現金990万円を振り込ませてだまし取った疑い。
捜査関係者によると、2人は昨年12月、それぞれ成田空港と中部国際空港から空路でタイ・バンコク入りし、陸路でミャンマー東部ミャワディ周辺の詐欺拠点に移動した。周囲には、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を通じて、「高収入のバイトに応募した」と話しており、県警は闇バイトに応募したとみている。
同じ拠点には、2月にタイで保護され、帰国した愛知県内の男子高校生(16)も渡航していた。県警は、高校生への聞き取りもふまえて事件への2人の関与を裏付けた。
詐欺グループは巧妙に実行役を募り、海外拠点に誘い出しているとみられる。
高校生は昨年11月、テレグラムで知り合った男から「海外でプログラミングを学べる」などと誘われてパスポートを新たに取得し、翌12月、タイに渡っていた。詐欺グループの案内で陸路を移動後、小舟で国境付近の川を渡ってミャンマーに入国。有刺鉄線が張られた建物に連れ込まれたという。
拠点には高校生と両容疑者を含め、10人前後の日本人が滞在していたとみられる。県警は指示役が3人にノルマを課し、警察官などを装った「オレオレ詐欺」の電話をかけさせていたとみている。
日本向けの海外の詐欺拠点は近年、フィリピンやタイ、カンボジアなどが中心になっている。警察庁は東南アジア各国に捜査幹部を派遣し、詐欺拠点の情報共有や容疑者の引き渡しなどで現地当局と連携している。
犯罪組織のメンバーは、タイを拠点に各国を行き来しているとされ、警察庁は今月9日、タイ警察幹部を日本に招いて協力関係の強化を確認した。
タイ側に引き渡された外国人、20か国以上の7200人
【バンコク=佐藤友紀】ミャンマーの詐欺拠点を巡っては2月以降、現地に滞在していた20か国以上の約7200人の外国人がタイ側に引き渡された。だが、近隣の拠点では今も詐欺が行われている可能性があり、警察が捜査を続けている。
タイ警察によると、引き渡された外国人の国籍は中国が約5400人と最も多く、インドネシア約650人、インド約580人の順で日本人も含まれている。
現地を実効支配する武装勢力「国境警備隊(BGF)」などが保護・拘束し、タイ側への引き渡しが行われているという。
タイ警察のタッチャイ人身取引対策センター長は21日の記者会見で、日本人を含む外国人数千人が現在、ミャンマー東部にいる可能性を示し「稼働している詐欺拠点もある」と述べた。
偽の求人にだまされて渡航した人もおり、タイの市民団体「人身取引被害者支援の市民社会ネットワーク」のジェイ・クリティヤ氏は取材に、「妊娠中の女性や体調不良を訴えている人もいる」と焦りを募らせた。