まるでバイトテロ 安倍政権「歴代の失言大臣」を総ざらい

4月28日(日)6時0分 文春オンライン

 失言を重ねていた桜田義孝五輪相の辞任を受けて、安倍政権で辞任した閣僚たちが話題になったので、彼らの失言やら問題発言について振り返ってみようと思う。もしかしたら何か傾向が見えるかもしれない。


 いつもは心理学を中心に勝手なことを書いているが、経営学も専門分野なので、今回は少々、違う角度から筆を進めたい。経営やビジネス、組織には心理学の要素が山ほどあるため、コミュニケーションや意思決定、リスク等に関する分析や研究も行ってきたからだ。



安倍首相 ©文藝春秋


失言が原因で辞任した閣僚リスト


 安倍政権で失言が原因で辞任した閣僚や政務三役、辞任に至るまでに問題発言などで世間を騒がせた閣僚たちはいったい何人いるでしょう。


 答えは10人。お騒がせ内容を詳細に列記していると長くなるので、簡単に一覧にしてみるとこんな感じだ。



 安倍内閣は第1次が2006年9月〜2007年9月、第2次が2012年12月〜2014年12月、第3次が2014年12月〜2017年11月、第4次が2017年11月〜である。


「長靴業界はだいぶ儲かったのでは」



 松岡利勝農水相は野党に事務所費疑惑を追及され、「なんとか還元水が……」と答弁をして問題となった。選挙運動で配布したうちわが問題となった松島みどり法務相は、辞任に際して「『うちわ』かと言われれば『うちわ』の形」と述べた。稲田朋美防衛相は応援演説での失言を取り上げたが、それ以前に国会での答弁が批判を浴びていた。江崎鉄磨氏の辞任は健康上の理由だが、担当相として沖縄北方問題は「素人」とも発言し、「北方領土の日」を「沖縄北方の日」と間違えるなど言い間違いも多かった。年次を重ねるごとに、失言する大臣が増えているのがわかる。



 政務三役では、務台俊介復興政務官は被災地視察でおんぶされて水たまりを渡り、その後の政治資金パーティーで「『長靴事件』があった。長靴業界はだいぶ儲かったのでは」と口を滑らせて辞任。松本文明内閣府副大臣は国会で米軍ヘリ問題の審議中、「何人死んだんだ」とヤジを飛ばして辞任。記憶に新しい塚田一郎国交副大臣は、「私は忖度します」発言で退場となった。


 こうなると自民党は人材不足かという印象が強くなる。



物議をかもした「電波停止もありうる」発言


 辞任に至らなくても、失言、問題発言で批判を浴びた閣僚はまだまだいる。麻生太郎財務相は度々、失言を繰り返している。第1次の厚労相・柳澤伯夫氏は自民党県議集会で「女性は産む機械」と発言し、その場で謝罪した。第3次の総務相・高市早苗氏は憲法改正に反対し放送を続けることに対して「電波停止もありうる」と発言して、言論統制ではないかと物議をかもした。彼らは自分がどんな発言をしたのかわかっている。だから柳澤氏は発言したその場で謝罪したし、高市氏は発言を撤回せず説明を続けたのだ。


 一昔前は渡辺美智雄元副総理や中曽根康弘元首相など、政治信条などがその裏にあるような確信犯的な失言が多かったと思うが、今の失言は軽薄で自己中心的になってきている。



 第2次の特定秘密保護関連の担当相だった森まさこ氏は、記者会見で「今私が(秘密に)入るか入らないか判断できない」と発言。その後の国会でも、しどろもどろな答弁を繰り返した。元自衛官だった第3次の防衛相の中谷元氏も安保法制に関する答弁では、しどろもどろ振りが非難されて国会が度々中断した。第3次の法務相・金田勝年氏は、国会答弁で「私の頭脳が対応できていない」と答え、第3次の沖縄北方担当相・島尻安伊子氏は「歯舞」という漢字が読めなかった。桜田前五輪相の数々の失言と重ねると、知識不足や勉強不足が原因の失言などは辞任に至らないということだろう。


発言内容からタイプを分けてみると……


 第2次の環境相・石原伸晃氏は、除染の地元交渉について記者団に「最後は金目でしょ」と発言、批判を浴びた。第3次の地方創生・規制改革担当相の山本幸三氏は、三原朝彦議員のアフリカ支援活動に「なんであんな黒いのが好きなんだ」、地方創生セミナーでは「一番のガンは文化学芸員」と差別的な発言をした。かなりアウトな発言だと思うが辞任には至らなかった。



 これらの発言内容からタイプを分けてみると、麻生氏や高市氏のように、自分の発言内容がわかっている確信型、松岡氏や松島氏のように記者や野党の追及に反応した誘導型、うっかりや受け狙い、リップサービスなどの自爆型になろうか。辞任に至った閣僚たちは、この自爆型がほとんどだ。受け狙いやリップサービスによる失言、問題発言も彼らがそう思っている、そう感じているからこそ口から出てくると考えれば、その発言は彼らの本音に近いといえる。


 自爆型の中には、失言しても指摘されるまで気がつかない政治家もいる。言葉に対する関心や問題意識も低いのだろう。人前での自分の発言や言葉使いに気を付けていれば、つい勢いで口から言葉が飛び出したとしても、「あっ、やばい!」と内心思うはずだが、そんな気付きさえない。日頃から自分がどんな言葉を使い、どう表現しているのか、どんな話し方をしているのかに気を付けていないのだ。言ってはいけない言葉、リスクとなる表現に注意が向いていれば、仮に失言をしてもその場で謝罪や撤回ができる。自分の口から出た言葉の重さを理解していない閣僚が多くなっている。



「内輪」でも、もはやクローズされた場ではない


 辞任閣僚の失言は、そのほとんどが集会や後援会で飛び出している。江崎氏が記者団に発言したのも後援会の会合後、内輪意識が残っていた中での失言と言える。内輪で何を言っても許された時代はネットの普及とともに終わっているのに、これまでと同じ感覚で発言している。内輪の場は、もはやクローズされた場ではない。


 内輪受けを狙った自虐ネタやリップサービス、場の流れや雰囲気にのまれた発言、笑いと失笑の違いがわからない独りよがりな感覚。人に面白いと思われたい、受けたい、「さすが!」と思われたいといった承認欲求が強いのだ。ところがこれを言ったらどうなるか、それをやったらどうなるか、深く考えておらず、先のことまで考えが及んでいない。それにより批判を浴びる派閥や内閣。失言が起きた背景や状況を見てみると、なんだかちょっとバイトテロ問題と似ているような気がしてしまう。



「安倍一強」とも言われる第4次の内閣では、安倍首相が閣僚を任命した背景には、選挙や派閥の力学も大きく影響しているとみられている。安倍首相も失言やら問題発言をしているが、それは横に置いておいて、当選回数で大臣にしてしまう時代遅れの年功序列、派閥同士の力関係、続けざまに辞任閣僚を出した二階派のやり方も問題視されている。


派閥にも特徴がある


 辞任した閣僚を派閥で分けてみた。カッコの中は当時の派閥であり、細田派は町村派の、竹下派は津島派の、二階派は伊吹派の流れをくむ。


細田派:松島氏(町村派)、稲田氏、松本氏 

麻生派:務台氏、塚田氏 

竹下派:久間氏(津島派) 

二階派:松岡氏(伊吹派)、今村氏、江崎氏、桜田氏


 失言した女性閣僚は二人とも細田派だ。他に細田派では、麻生内閣の元国交相・中山成彬氏が「成田空港整備の遅れはゴネ得」などと失言して辞任。細田派は少々、偏った見方からなる失言になっている印象だ。麻生派の2人は、受け狙いのリップサービスによる失言だ。派閥も組織だ。組織の色やスタイルはリーダーや組織文化に影響されるところがあるだろう。



 二階派は辞任閣僚が多く、失言内容はひどい。今村氏や桜田氏は二階派への移籍組である。大臣になることが目的だった資質のない人間を、当選回数だけで大臣のポストに押し込んだと言われても仕方がない。これだけで傾向があるとは言えないが、今のところ一番問題が多そうなのは二階派という印象だ。


失言を防ぐにはどうしたらいいのか


 いまやメディアは、どんな番組でもコメンテーター中心だ。また、どこにでも誰かの目があるネット社会では、ユーザー全員がコメンテーターであると言っても過言ではない。それは政治家も等しくターゲットになることを意味していて、不祥事や失言の際は、いわゆるメディア対応のうまさだけでは切り抜けられない。


 では、辞任閣僚を他山の石として、失言を防ぐにはどうしたらいいのか。まずは日頃から自分が人と話す時に、どんな言葉を使い、どのような表現をしているのかに注意を向けることだ。できれば焦った時や、調子に乗って話している時などを思い返してもらいたい。商談やプレゼンなどを録音しておいて、それを聞いてみるのも役に立つ。場に飲まれやすい人や緊張しやすい人は、公的な場で自分の言葉で話す時ほど、本音よりも建前的な表現を使って話す方がいいだろう。言い切りや断定口調にも気をつけたい。ネガティブな言い方ではなく、ポジティブな言い方をするよう心がけることもポイントだ。



(岡村 美奈)

文春オンライン

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