岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち バーバラ夫人葬儀の「写真」が反響を呼んだわけ

4月30日(月)8時0分 J-CASTニュース

党派を超えた大統領が集まった写真は多くのメディアが掲載した。写真は雑誌TIMEのWEBサイトから(編集部で一部修正)

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「一般の人たちの間でも、トランプ支持者と反トランプ派で断絶が起きている今、この写真は政治理念を超えて、アメリカがひとつになった姿のように見えます」

私は保守派のFOXニュースも、リベラル派といわれるABCやCNNニュースも見るので、どの局だったか覚えていないが、ブッシュ元米大統領の夫人、バーバラさんの葬儀の直前に撮影された写真について、女性ニュースキャスターがそう語っていたのが印象的だった。



党派を超えた3代の大統領



2018年4月17日に92歳で死去した バーバラさんの葬儀は21日、南部テキサス州ヒューストンの教会で営まれた。


この写真では、車椅子のブッシュ元大統領を囲むように、3代の元大統領とその夫人、そして、現在のファーストレディのメラニア夫人が立っている。息子のブッシュ氏はローラ夫人とヒラリー・クリントンさんの肩を抱き、メラニア夫人はオバマ元大統領夫妻の隣に寄り添っている。


誰もがとても自然な笑顔で、リラックスしているように見える。 73年間、添い遂げた最愛の妻を失ったばかりのブッシュ元大統領に、政治理念を超えて哀悼の意を表し、寄り添っているようだ。ここに党派の壁はない。



この連載では、トランプ支持者、反トランプ派、どちらともいえない派など、「トランプのアメリカ」で暮らす人たちのさまざまな生の声を、できるだけ中立な立場で紹介してきた。



政治理念の対立は何も今始まったわけではないが、米大統領に対する反感や嫌悪感が、これだけあからさまになった時代は、これまでなかったかもしれない。



それを国民が肌で感じていることもあるのだろう。この写真は「アメリカの美しさが表れている」、「この国の民主主義の象徴だ」、「希望を与えてくれる」、「どの言葉より真実を写し出している」などと大きな反響を呼んだ。



その時、トランプ氏は...



ふたりのブッシュ元大統領に対しては、「アメリカを戦争に導いた戦争犯罪者だ」などという批判の声もある。


そして、葬儀に参列しなかったために、この写真に写っていないトランプ氏については、相変わらず辛辣な声も多かった。



「トランプがいたら、写真が台無しになるところだった」、「トランプが葬儀に参列しなかったのは、偉大な元大統領たちの笑い者になりたくなかったからだ」、「これまでの大統領たちも誤った選択をしたが、それでもアメリカはひとつだった。トランプのせいでアメリカは今、根底から揺らいでいる」


ホワイトハウスはトランプ氏が葬儀に参列しない理由を、「警備態勢の強化などが葬儀の妨げとなり、混乱を引き起こさないため。そして、ブッシュ家とその友人たちへの配慮から」と公表した。


葬儀の日、トランプ氏はツイッターで追悼の意を表し、ホワイトハウスにあるバーバラ夫人の肖像画の下に、追悼の花を飾っていると伝えた。が、当日はフロリダの別荘で過ごしたことから、「追悼なんて口先だけ。ゴルフがしたかっただけだ」などと批判を呼んだ。



現職の大統領が元ファーストレディの葬儀に参列しないのは、珍しいことではない。オバマ氏は、ナンシー・レーガン夫人の葬儀に出ていない。息子のブッシュ氏もバード・ジョンソン夫人の葬儀に参列していない。



トランプ氏とブッシュ一家はこれまで、お互いを厳しく批判し合ってきた。バーバラ夫人は、「トランプに投票する女性の気がしれない」などと発言したこともある。


ニューヨークに住むトランプ支持者のジョアン(55)は、「バーバラもブッシュ家の人たちも、トランプに葬儀に来てもらいたくなかったはず。トランプはその思いを尊重しただけよ」と話す。



「メラニアがなぜ、ここにいるんだ」



トランプ氏はブッシュ家と同じ共和党なのだから、葬儀に出ていたら少しは溝が狭まったのではないか、との声もある。


写真のコメントには、「メラニアがなぜ、ここにいるんだ」、「メラニアが端にいてよかった。クリップできるから」などという意地の悪いものもある。が、写真に写っている人のほとんどが、夫であるトランプ氏の「敵」のような存在なのに、メラニア夫人は温かく受け入れられている、と感じたアメリカ人は少なくない。



葬儀中にメラニア夫人がオバマ氏と笑顔で言葉を交わす様子も、話題になった。


「浮気騒動の渦中にいるトランプに、メラニアはうんざりしているに違いない」、「これまであんな笑顔を見せたことはない。オバマといる方が幸せそうだ」といった声も聞こえてきたが、見ていて思わず微笑みたくなる瞬間だった。


メラニア夫人は、ホワイトハウスのスタッフ2人を伴って、葬儀に参列した。スタッフは2人とも、バーバラ夫人を敬愛し、ブッシュ家と親しくしてきた。関係者によれば、バーバラ夫人に最後のお別れができるように、との配慮だという。


さまざま声はあるものの、 バーバラ夫人の葬儀に、政党を超えた「希望」を見出せる瞬間があったことが、何よりの弔いになったのではないだろうか。

        






(随時掲載)




++ 岡田光世プロフィール

おかだ・みつよ 作家・エッセイスト

東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。




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