日航ジャンボ機事故めぐる「自衛隊撃墜」説、国会で「陰謀説」と対策訴え 当事者JALの見解と対応は
2025年5月2日(金)21時0分 J-CASTニュース
単独機の事故としては世界で最も多い520人が犠牲になった日航ジャンボ機事故から2025年8月12日で40年。自衛隊が撃墜したとの主張が書籍で流布され、これが国会審議でも「陰謀説」として取り上げられる事態になっている。
書籍の著者は反発する一方で、当事者の日本航空(JAL)は沈黙を守ってきた。25年5月2日に開かれたJALの記者会見では、こういった事態への対応について問われ、鳥取三津子社長は、これまでに示された見解を「しっかりと伝えていくことが重要」などと話した。
中谷防衛相「自衛隊が墜落に関与したということは断じてない」
事故をめぐっては、航空事故調査委員会が1987年6月、事故は後部圧力隔壁の不適切な修理に起因するとする報告書を公表している。ただ、自衛隊が撃墜したとする主張も一部にある。
そのひとつが作家・青山透子氏の著書「日航123便 墜落の新事実」(河出書房新社)で、自民党の佐藤正久参院議員が2025年4月10日の参院外交防衛委員会で問題視した。佐藤氏は同書を名指ししながら、その内容を
「駿河湾で試験中の護衛艦が対空ミサイル発射訓練をやっており、それを海自出身のJALの機長が海上自衛隊と組んで訓練に協力し、自衛隊の標的機がJAL123便を撃墜してしまった」
などと説明した。さらに、
「自衛隊員の名誉に関わる問題」
「(海外の「フェイクニュース」に対して)国内のこういう陰謀説等に対しては、担当する部署が不明確」
として、「陰謀説」という言葉を使いながら、担当部署を決めた上での具体的な対応を求めた。
高橋克法国土交通副大臣は、事故調査委員会の報告書の内容を繰り返した上で、
「事故経緯については、様々な角度から調査解析を行った上で、専門家による審議の上、ほぼ間違いないとの結論に至ったため、強い推定を示す『推定される』という表現を使用している」
と説明し、撃墜説を否定した。中谷元防衛相も
「自衛隊が墜落に関与したということは断じてない」
「このような言説に対しては、私を含めて防衛省・自衛隊職員はしっかりと否定をし、正確な情報を発することが何よりも重要だと考えている」
と述べた。
著者の青山氏は、佐藤氏の発言が「表現の自由、言論への弾圧」だとして反発。4月11日に「発言撤回を求める抗議文」をウェブサイトに載せている。
「更問い」には「流布していることですか......」
5月2日にJALが開いた会見では、この問題への対応を問う質問も出た。
社長の鳥取氏は、
「特に弊社から発信を、これについて積極的にしていくという考えは今のところない」
と説明。すでに示された見解を踏襲する考えを示した。
「私どもは、この御巣鷹の事故については、きちんと原因と、再発防止策も含めて、ひとつの結果を我々として同じ認識を持って取り組んでおり、それ以外の考えというのは特にない。今後も御巣鷹の事故を風化させることなく、しっかり安全を守っていくということをやっていきたい」
さらに、
「そういった情報が流布しているということについては特段(何もせず)、そのままにしておくということになるのか」
という記者の確認に、鳥取氏は「流布していることですか......」と反応。一瞬の沈黙の後に、
「おそらく現実とは違うが、私どもとしては、我々の見解として、お客様にも、ご遺族の皆様にも、社員にも、今ある我々の結論をもって、世の中の皆様にも含めてご提示しているので、それをしっかりと伝えていくことが重要だと思っている」
と述べた。
さらに、野田靖総務本部長が以下のように補足説明。報告書の内容が「全て」で、撃墜説には否定的な見解だ。
「いろいろな情報が出ているということだが、私どもとしては、この大変な事故を起こしてしまった当事者として、事故調査委員会の方で出された事故調査報告書、ここに書かれていることが全てという認識だ」
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)