イラン大使“強制わいせつ” 女性官僚が告訴を決意した外務省のひどすぎる対応

5月4日(土)6時0分 文春オンライン

 13年1月末、在イラン日本大使館の公使室。外務官僚のA子さんはイラン公使と向き合っていた。テーブルには私生活や進路希望を記入した1枚の身上書。そこには、A子さんが上司から受けた性被害の実態も克明に綴られていた。


「あなたのために良くない、その部分は削除しなさい」


 文面を読んだ公使はそう言い放ったのだった——。


◆ ◆ ◆


 社会部記者が解説する。


「大使館に勤務していたA子さんは今年3月、上司だった駒野欽一元イラン大使(72)を強制わいせつ容疑で警視庁に刑事告訴し、受理されました。訴状によると12年10月14日、大使公邸で2人きりになった際、駒野氏は無理やり口に舌を入れ、セーターの下から胸を触り、スカートの中に手を入れてきたといいます」



駒野欽一元イラン大使 ©共同通信社


 被害を受けてから6年半。この間、外務省はA子さんの悲痛な訴えを2度にわたって“黙殺”していた。


 A子さんの代理人、平岩佑彦弁護士が語る。


「12年10月下旬、彼女は直属の上司の総務参事官に事情を報告しましたが、『駒野氏のことは忘れてよく休むように』と言われただけで、それ以上の対応はしてくれませんでした」


 その3カ月後には冒頭のように、身上書の“改ざん”を求められたのだ。違和感を覚えつつも、指示を受け入れざるを得なかったA子さん。意を決して書いた文面をパソコン上で一文字ずつ消していく感触が、今も指先に残っている。


「ペルシャ語を話す外務官僚である以上、いつ駒野氏と接触するか分からない状況に苦痛を感じていましたが、以降もA子さんは働き続けました。語学留学から5年以内に退職すると、研修費約1000万円の返還義務が生じてしまう。経済的負担が大きい上、国民の血税で育ててもらった思いも強かったからです」(同前)


 そうした中、昨年6月6日、ロシア課長がセクハラで処分を受けたというニュースを見て、A子さんは駒野氏の処分についても人事課に問い合わせたという。



A子さんが告訴を決意した外務省のひどい対応


「すると処分を受けることなく、退官して17年9月に日イラン友好協会会長に就任していた。外務省の要請で会長は辞任しましたが、事案の対外公表を望むA子さんの意向は無視されました。しかも、省内には被害相談の記録さえ文書に残されていなかったのです。信頼していた担当者から『組織がこの件を隠蔽したかもしれない』と告げられ、6月末には急性ストレス反応と診断されました」(同前)


 外務省人事課は今年2月20日になって、A子さんに駒野氏への聴取結果を報告。駒野氏が「心の整理をつけて忘れるよう努めている」などと弁解していることが記されていた。


「さも痴情のもつれかのように理解していることにショックを受け、外務省人事課の一連の対応の酷さも許せなかった。そこで公訴時効(7年)を目前に告訴に踏み切ったのです」(同前)


 今年3月には、植沢利次ケニア大使(当時)が大使としては最も重い厳重訓戒(停職12カ月相当)処分で退職。セクハラが疑われる行為があったという。在外公館を舞台にした性暴力はなぜ繰り返されるのか。



 元外務省主任分析官の佐藤優氏が指摘する。


「在外公館では大使は“王様”。人事権を握り、部下は逆らえません。ましてイランのような緊張状態にある国でこんなことが起きるとは組織が緩んでいる。しかも外務省はこれを個人の問題に矮小化することで、組織を守ろうとしているのです」


 外務省と駒野氏からは回答がなかった。


 女性活躍を掲げる河野太郎外相。だが、理想と現実は大きくかけ離れている。



(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年5月2・9日号)

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