「野菜洗いの専用水」ベジセーフ、「鶏肉水洗い」推奨で波紋 「食中毒菌飛散の危険性」指摘、専門家も警鐘

2024年5月14日(火)13時53分 J-CASTニュース

「野菜洗いの専用水」をうたって販売されている商品「ベジセーフ」が、公式サイトやSNSで、同商品を使って生肉を洗うことを勧める内容を記載し、「生肉を洗うことは食中毒菌を飛散させる恐れがあり危険だ」として批判の声が寄せられた。これを受けて、動画は削除され、ウェブサイトには注意書きが加わった。

専門家は生肉を洗うことで得られるメリットは一応あるものの、「生の鶏肉にはカンピロバクターが付着していると思って調理する必要があります」とし、生の肉を洗わないほか、まな板を分けるなどの配慮が必要だと呼びかける。

鶏肉洗う動画は削除、公式サイトに注意書き追記

公式サイトによると、ベジセーフは「食べるものを『安心して洗える』ことにこだわり」、純水と炭酸カリウムで構成された商品だ。「水を電解して生成したマイナスイオンの作用で、薬剤や汚れを落とします」という。野菜のほか米、肉、魚にも使えるとしており、肉や魚を洗うことの効果を「臭みやアクを落とします」と説明されている。

しかし、農林水産省や内閣府食品安全委員会は公式サイトやXで、シンク周辺に食中毒菌が飛び散るおそれがあるため、生肉を洗わないように呼びかけている。

YouTubeチャンネルには生の鶏肉を実際に洗って見せ、余計な油やドリップ(肉から分離して出る液体)が落とせると説明する内容のショート動画が公開されていた。これがXで拡散されると批判の声が寄せられた。なお、2024年5月14日時点で該当の動画は削除されている。

また、同社の代表取締役は12日にXで、批判を受けて公式サイトを改善、追記したと説明しており、14日現在、肉や魚への使い方を説明する箇所には次のような注意書きが入っている。

「生肉には食中毒菌が付着していることがあります。お肉を流水する際は、周りにまな板や食器類を置かないでください。また水はね防止のため、水量を少なくしてください。洗浄後はシンクやその周りをしっかり除菌消毒してください」
「食中毒菌は熱で死滅しますので、付着してても(原文ママ)調理すれば安心してお召し上がり頂けます」

あえてメリットを挙げるとすれば......

10日にJ-CASTニュースの取材に応じた管理栄養士の成田崇信さんは、生肉を洗い余計な油やドリップを落とすことのメリットについて、「あえてメリットを挙げるとすれば、ドリップは水溶性のタンパク質を多量に含んだ液体なので、そのまま鍋に入れ加熱すると凝固して泡立ち、鍋肌や他の食材に付着し、食感を悪くしたり、鍋を洗うのが大変になるのを予防できる事でしょうか」と説明する。

油を落とすことについては、「(ベジセーフの)強アルカリ水であっても常温で少し洗ったぐらいで落ちる肉の脂肪というのは無視できるレベルだと思います」という。

一方で、農水省や食品安全委員会が指摘しているリスクについてはどうか。成田さんは、特に生の鶏肉を洗うことについて「特に危険なのが、数十個程度という少ない細菌数でも食中毒を起こすことがあるカンピロバクター食中毒のリスクが高いといえます」と説明。「市販の生の鶏肉の半分ぐらいにカンピロバクターが付着していたという報告がありますので、生の鶏肉にはカンピロバクターが付着していると思って調理する必要があります」という。

カンピロバクター食中毒は「典型的な食中毒症状を起こしますが、まれに感染後数週間後にギラン・バレー症候群という末梢神経障害を発症することがあり、注意が必要です」とし、次のように注意すべき点を説明した。

「水で洗うと鶏の表面に多く付着しているカンピロバクターが飛び散り、シンクの広範囲に広がることが分かっています。特に危険なのは生で食べる他の食材や完成した調理品に付着させることです。例え鶏肉を洗わなくても、鶏肉など生の肉を調理する時にはまな板を分けたり、使用後に消毒や中性洗剤で十分洗浄する事、そして、シンクの中も中性洗剤で洗うなどの配慮が必要です」

また、牛肉、豚肉についても「まな板を分ける配慮は必要」だが、「洗う事が完全にNGかというと豚肉については言い切れないかもしれません」という。一方で牛肉は、「O157などの腸管出血性大腸菌が付着している可能性がある」とし、鶏肉同様、洗わないよう呼びかけた。

「ベジセーフ」開発・販売会社は取材に応じず

J-CASTニュースは10日にベジセーフを開発・販売するland link(東京都港区)に取材を申し込んだものの、期限までに回答は得られなかった。

ベジセーフをめぐっては、5月8日頃からXで、「野菜を皮ごと美味しく食べられる」ことをアピールポイントとしていることについて、野菜は水洗いで十分汚れが落ち、皮ごと食べても問題ないなどとする意見が複数投稿され、波紋を呼んでいる。

J-CASTニュース

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