脳科学の第一人者、川島隆太先生が警告「スマホを使うと偏差値が低下する」

5月18日(金)7時0分 週刊女性PRIME

スマホと偏差値の関係は?(写真はイメージです)

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 今や中学生の大半がスマホを持つ時代。しかし、脳科学者の川島隆太教授は「スマホこそが子どもの学力低下を招いている」と警鐘を鳴らしています。

■スマホを使うと成績が上がらない!



 川島教授が所属する東北大学加齢医学研究所では、仙台市教育委員会と連携して児童・生徒の学習意欲を向上させる共同プロジェクトを行っています。

 その取り組みの中で、さまざまなアンケートを実施。急激な普及にともないスマホの項目も追加したところ、驚きの結果が出たのです。川島先生によると、

「当初、教育委員会も私たちも、スマホよりテレビやゲームの影響を気にしていました。しかし、集まったデータを解析したところ、まったく予期しない結果となり、私は凍りつきました。

【図1】のグラフは『平日の携帯・スマホ使用時間と学力(数学)(平成25年度)』を表しています。1日の使用時間が長くなるほど成績が低くなっています。勉強時間が短くなるからではありません。それは“使用時間が1時間未満・家庭学習時間が30分未満”と“使用時間4時間以上・家庭学習2時間以上”を比べれば一目瞭然です。

 スマホを4時間以上使う子は2時間以上、家庭学習をしてもスマホを1時間未満しか使わないけれども家庭学習は30分未満しかしない子よりも成績が低いのです。学校での勉強だけでなく家庭でも学習しているというのに、スマホによって相殺されている可能性にガク然としたのです。

 ほかにもスマホが子どもの学習に与える影響は甚大です。まずはスマホの影響力を知り、それでも持つのか、どう使うのかを親子でぜひ話し合ってください」





■睡眠が減ることが原因ではない!



 家庭での学習時間で、成績に影響を与えそうな要素といえば睡眠時間。スマホを使っている時間が長くなれば、そのぶん睡眠時間が短くなることが成績低下につながっている可能性があると考え、川島先生のグループも調査しました。

 しかし、【図2】のグラフを見るとわかるように、スマホを1日4時間以上使う子どもは、“睡眠時間にかかわらず”スマホ使用時間が短い子どもよりも成績が低いという結果が出ています。

 つまり睡眠時間はスマホを長時間使うと成績が低下する直接的な原因ではないといえます。



■驚くべき“ながら勉強”の実態



 スマホを使うとなぜ、勉強をしていても成績は低下してしまうのでしょうか。

「ひとつには“ながら勉強”の実態があります。仙台市の独自調査、平成28年度のデータ(【図3】)を見ていくと、小学生でもスマホを所持すると半数以上が自宅学習中にスマホを操作していることがわかりました。

 それでもまだ調べものなどに使っているのではないかと淡い期待もしましたが、実際には全く違いました。まず、最も多かったのは音楽を“

 聴きながら”の勉強です。私が子どものころから、ステレオなどで音楽を聴きながら勉強するという人は少なからずいたので、その是非は別としてもまだ理解の範疇でした。

 しかし、【図4】のグラフを見るとわかるように勉強中にゲーム、動画の視聴、LINEをしている子どもが大勢います。それも1度に3つ4つのアプリをマルチタスクで使いこなしている子どもも少なくありません。

 認知脳科学的には、人の脳はひとつのことに集中するようにできており、逆に集中の邪魔になる情報には脳の中で自動的に抑制がかかることはよく知られています。

 つまり、勉強に集中すればゲームなどはできませんし、ゲームに集中力をさけば勉強は手につかないのは当たり前です」(川島先生)







 LINEなどのインスタントメッセンジャーであれば、常にスマホを触っているわけではないので、よいのではないかと思うかもしれません。しかし、実際にはインスタントメッセンジャーは著しく学力に影響するといいます。

「LINEなどはメッセージを直接、確認しなかったとしても着信音が聞こえただけで、作業中の情報処理・動作速度と注意力が下がることが明らかになっています。

 この傾向は社会不安傾向が強い生徒ほど顕著で、『早く返信をしなければ嫌われてしまう』『話についていけなくなってしまう』といった、学校などでの人間関係の不安が、集中力低下につながるのだと考えられています。

 さらにいえば、たとえメッセージが入らなくても、勉強中に電源を入れたままスマホを机の上に置くだけで、成績に悪影響を及ぼすことがわかっています」(川島先生)

 インスタントメッセンジャーに関しては各国で調査が行われており、長時間使用する学生は教科書などを読むときに注意散漫になりやすい、試験問題を解くために余計に時間がかかるようになるといった報告が上がっています。

 また、先に紹介した家庭学習や睡眠時間との関連グラフ(【図2】)では、非所持群よりも1時間未満使用群のほうが成績がよかったのですが、LINE使用時間との関連をみると「まったく使用しない」子は、「1時間未満使用」よりも成績がよいという結果になりました。

 つまり、LINEなどのインスタントメッセンジャーは短時間使用でも成績に影響するといえそうです。

「LINEなどを使う子どもはマルチタスキングをする傾向が強いという結果があります。研究によれば、たびたび行う人は作業記憶力が低下することもわかっています。作業記憶は学習や記憶、理解など広範囲でかつ大切な認知機能と直接関係しているため、作業記憶力が低下すると当然、学習効率も極端に悪くなります」(川島先生)



■スマホを持つと脳が働かなくなる!



 スマホを含むIT・デジタル機器は直接的に脳へ大きな影響を与えていることも調査でわかってきました。

「私はこれまで特殊な装置を用いた人の脳の前頭前野の計測を積極的に行ってきました。前頭前野というのは脳の情報処理の中枢、要です。

 例えば、対人コミュニケーションの場面で脳活動計測を行うと、実際に誰かの顔を見て話をすれば前頭前野が大いに働くのですが、同じ人とでも電話で話すとまったくといっていいほど働きません。テレビ会議システムで顔を見て話をしても同様です。

 手紙を書く場合も、手書きでは前頭前野がたくさん働くのに、パソコンや携帯電話のメールでは働きません。

 パソコンや携帯電話で文章を書くと「漢字を思い出し、それを文字として表現する」という脳の働きが一切必要ないからです。

 対人コミュニケーションでは、対面していると相手の気持ちを察知して思いやったり気を遣うなどコミュニケーションを円滑にする努力を自然としますが、相手が目の前にいないとその必要もなくなるために前頭前野が働く必要がなくなるのでしょう。

 人の身体機能は使わなくなると、すぐに衰えます。高齢者が転んで骨折をし、入院するとそのまま寝たきりになってしまうのと同じです。このような現象は程度は違えど、若い人にも起こります。

 スマホを使いこなすことで、発達期の子どもたちも脳を使う機会が減ります。それが習慣化した結果が、これまでに紹介してきたような学力低下を招いている可能性は否定できません」(川島先生)

「スマホを持つ=脳を使わなくなる」なんて! 恐ろしすぎると思いませんか?



■脳を使わないどころかマイナスにもなる



 さらにスマホに加え、ゲームやテレビの長時間使用は、脳にさらに深刻な影響を及ぼしている可能性があると川島先生は言います。

「人間が受ける外部の刺激は視覚や聴覚といった感覚情報として大脳に入り、前頭前野に送られ、意味や価値が判断されて行動が選択されます。論理的には多彩な感覚情報をもとに行動をさせれば、人の前頭前野は大いに働くはず。

 しかし、多彩な視覚・聴覚情報を使うゲームでも、ゲーム自体に慣れてしまうと前頭前野が活動しなくなるばかりか、逆に、安静時よりも活動量が少なくなる“抑制現象”が生じたのです。ゲームをやめた直後だけでなく30分後も、プレー前よりも脳活動が低下した状態が続きました。

 スマホでも例えば、『齟齬(そご)』『鷹揚(おうよう)』といった、読めるけれども正確な意味を聞かれると若干、戸惑うような難しい言葉の意味を調べるときに、紙の辞書で調べると前頭前野は大いに活動します。しかし、スマホを使ってウィキペディアなどで調べると前頭前野の働きは抑制されます。

 LINEでのメッセージのやりとりの最中も前頭前野の抑制現象が生じました。どちらも複雑な作業を行っているのですが、思考の中枢の前頭前野が働いていないのです。

 スマホ・ゲーム・テレビの共通点は、脳の前頭前野の働きに抑制がかかることです。前頭前野を使うのが脳にプラス、使わないのが0だとしたら、これらは脳にとってマイナスです」(川島先生)

 家庭でも頑張って学習をしているのに、スマホをお供にしたために努力がむくわれないなら、いっそ勉強とスマホを同時に捨てて、好きなことをしているほうが脳にとってはましといえるかも!?




〈監修/川島隆太〉

医学博士。東北大学加齢医学研究所所長。累計販売数3300万本を突破したニンテンドーDS用ソフト『脳トレ』シリーズを監修。累計350万部を突破した『脳を鍛える大人のドリル』シリーズなど著書多数。新刊『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)には、さらなる驚きの事実が!

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