iPS心臓治療 安全性と有用性の実証が鍵だ

5月18日(金)6時0分 読売新聞

 安全性と有用性を示す確たるデータを得るために、慎重に臨床研究を進めてもらいたい。

 体の様々な組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、心臓病患者を治療する大阪大の臨床研究計画を厚生労働省が了承した。澤芳樹教授(心臓血管外科)のチームが、今年度内にも着手する。

 京都大に提供してもらうiPS細胞を心臓の筋肉細胞にまで培養して、シート状に加工する。手術により、虚血性心筋症の患者3人(18〜79歳)の心臓に2枚ずつ貼り付けて、心筋の再生を促す。

 日本で生まれたiPS細胞が実用化へ、さらに一歩踏み出す。

 患者らの期待は大きい。重い心臓病患者の大半は、心臓移植でしか治療できないが、臓器提供は少ない。阪大の治療法は、新たな選択肢になる可能性がある。

 重要なのは、質の高い臨床研究に徹することだ。患者の症状がどう改善したか、治療の経過を具体的に示す必要がある。

 研究チームは、これまでも、太ももの筋肉由来の細胞でシートを作り、同様の治療を試みている。国内メーカーが、シートの商品化も手がけているものの、効果は十分に評価されていない。

 その段階でiPS細胞の利用に進むことに「尚早」と指摘する専門家もいる。臨床研究で疑念を払拭ふっしょくせねばなるまい。

 副作用も要注意だ。今回移植するiPS細胞の数は約1億個にも上る。心筋になり損ねた細胞が混じると、がん化しかねない。厳しい品質管理はもちろん、術後の状況を注意深く見守るべきだ。

 厚労省は了承に際し、対象を重症患者に絞り、患者への同意説明文書を分かりやすくする、との条件をつけた。リスクの大きい研究であることを考えれば当然だ。

 iPS細胞による臨床研究は、理化学研究所などのチームが2014年に目の疾患で初めて実施し、成果を上げた。これを受けて、研究が活発になり、脊髄損傷やパーキンソン病などの臨床研究・試験の計画も進んでいる。

 今回の阪大の臨床研究は、iPS細胞による再生医療の今後を見極める試金石となろう。

 再生医療では、受精卵から作るES細胞(胚性幹細胞)の研究が世界の主流だ。性質はiPS細胞と同様だが、先行して開発されたために実用化も近いとされる。

 日本では国立成育医療研究センターが、肝臓病での臨床試験を始めている。iPS細胞とともに、難病の治療に役立てたい。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「心臓」をもっと詳しく

「心臓」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ