なぜ「光害」は蛍にとって大敵なの? 蛍鑑賞で注意すべきマナーとNG行動

2025年5月25日(日)5時10分 ウェザーニュース

2025/05/25 05:10 ウェザーニュース

初夏の風物詩、蛍(ホタル)。今年も幻想的な光を放ちながらの飛翔報告が九州を皮切りに、西日本や東日本各地からも寄せられるようになりました。
私たちの心を和ませてくれる蛍ですが、とても繊細な生き物で、観察の際には十分な注意とマナーの順守が必要とされています。
蛍の観察マナーとNG行動について、東京ゲンジボタル研究所代表の古河義仁(ふるかわ・よしひと)さんに解説して頂きました。

蛍の鑑賞で絶対に注意したい光害

蛍には「光害」がいちばんの大敵とされています。懐中電灯などの光を当てると、蛍の求愛行動に悪影響を与えるという理由を教えて頂けますか。
「蛍はオスとメスが発光によってのみ、お互いを認識することができ、コミュニケーションを図って交尾に至っているとされています。
蛍は周囲が明るいとお互いの光を認識することができなくなってしまいます。ゲンジボタルの場合、光の照度が0.1ルクスで求愛行動が阻害(そがい)されてしまいます。満月の光は0.25ルクスですから、これを上回っています」(古河さん)
懐中電灯の照度はどの程度のものなのでしょうか。
「一般的な懐中電灯を光源として放たれる光の全量(光束)は200ルーメンです。この光が5m先を照らすと1.27ルクス、10m先でも0.32ルクスになります。
蛍の発生期間である3週間のうち、繁殖活動は2週間で、メスはオスより遅れて発生します。しかし、『月が明るい』『気温が17℃以下と低い』『風が強い』という条件のうち、どれか1つでも当てはまれば、求愛できる日数が7日間以下になってしまう場合もあります」(古河さん)

「さらに、蛍の活動時間は19時30分〜21時ですが、求愛が可能な時間はオスが盛んに飛び回る20時〜21時で、1日60分しか“チャンス”がありません。
蛍そのものや周辺に人為的に光を向けることは、その貴重なチャンスをさらに減らしてしまうことになるのです」(古河さん)

光害を予防するためのポイント

光害を予防するための観察時のマナーやNG行動として、どのようなものが挙げられますか。
「基本的な行動として、暗くなる前の19時頃までには生息・観察地に入っていることです。そうすれば暗闇に目が慣れて、懐中電灯やスマホの明かりなしでも周囲を見ることができます。
暗くなって蛍の活動時間に入った時間帯に訪れる際には、必ず懐中電灯やスマホは自分の足元だけを照らすようにしてください」(古河さん)

「ごく一部の解説書などに『懐中電灯に赤いセロファンを巻いた光は問題ない』とありますが、誤りなのでやめてください。フラッシュをたいて写真を撮ることなど、論外です。
自動車で訪れる際は、ヘッドライトやブレーキランプの光が蛍の生息地に届かない場所に停めることも厳守してください」(古河さん)

光害以外の注意事項

光害予防に加えて、心がけることはありますか。
「蛍の生息地は私有地も多いので、事前に蛍観察のための訪問が可能かどうかも確認しておいてください。観察時の服装は、蚊やマムシなどの害を避けるためにも、長袖、長ズボンがいいでしょう。
生息・観察地へ向かうときは、道以外の草むらなどに入らないようにしましょう。草むらの土壌に蛍がいて、羽化を控えている可能性があるからです。場所によってはマムシが潜んでいることもあります。
蛍は観察だけに留めて、絶対に持ち帰らないでください。“1人1匹だけ”と思っても、100人が持ち帰れば100匹の蛍が失われることになります」(古河さん)
これから6月中旬にかけて、蛍の飛翔はピークを迎えます。光害予防を第一に心がけて、自分自身の安全にも配慮しつつ、蛍観賞を楽しみましょう。

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