ネット時代でも、なぜ万博は必要なのか VIデザイン担当クリエイターが説く「体験」の意義

2025年5月26日(月)11時15分 J-CASTニュース

大阪・関西万博のVI(ビジュアル・アイデンティティ)デザインシステムを作成したクリエイティブディレクターの引地耕太さんが2025年5月25日、Xで「万博はインターネット時代にはもう必要ない」とする意見に思いをつづった。

「私たちは、本当に"情報"だけを求めていたのでしょうか?」

引地さんは、当時所属していた「株式会社ワントゥーテン」が万博のロゴマークを中心とした大阪・関西万博のデザインシステム開発への企画提案公募に応募するにあたり、クリエイティブディレクターとして開発に携わった。

引地さんが一連のデザインを手がける中で生まれた「ID」と名付けられたデザインエレメントをもとに万博会場に描かれたイラストは、公式キャラクター「ミャクミャク」にちなみ「こみゃく」の愛称で親しまれている。

引地さんは25日、「『万博はインターネット時代にはもう必要ない』そうした意見を目にするたびに思うのは、それが『情報』と『体験』の違いを理解していないということです」と切り出し、万博に関する批判への思いをつづった。

「確かに、情報だけを求めるなら、ネットがあれば十分かもしれない。でも私たちは、本当に"情報"だけを求めていたのでしょうか?」と問いかけ、「コンテンツとは何かという、メディア論的な問いに行き着きます」とした。

「本来コンテンツとは、もっと広い『体験の全体』を指すはず」

引地さんは、現代における「コンテンツ」について、「本当に『デジタルデータとしての中身』のことだったのでしょうか?」と疑問を呈し、「音楽なら、CDから抽出された音楽データだけ? 本なら、文字情報だけを読むことが目的? そんなはずはありません」とした。

「『コンテンツ』という言葉が、あまりにも軽々しく使われるようになり、音楽も、本も、映画も──すべてが『データ化された消費対象』に還元されてしまいました。けれど、本来コンテンツとは、もっと広い『体験の全体』を指すはずです」とし、具体例を挙げてその価値を説いた。

「たとえば、本当に好きなアーティストや作家なら、CDを手に取り、ブックレットの紙質や印刷の匂いを味わい、ライブへ足を運び、その空気ごと記憶に焼き付ける。本の装丁を撫でるように見て、本棚に飾り、何度も読み返したり、友達に貸したり。それらすべてが『コンテンツ』だったはずです」

「万博とは、情報を得るためのイベントではなく......」

その上で、「私たちが求めていたのは、単なるデータとしての『コンテンツ』ではなく、それに触れたときに生まれる『関係』や『体験』、そして『記憶』なのです」と主張。

「だからこそ、万博のような"場所"を持った体験が、単なるデジタル情報では代替できないことは明らかです」とした。

万博の価値について、「万博とは、情報を得るためのイベントではなく、"未来を誰かと一緒に生きるという感覚"を、五感と共に共有しアイデアを交換し体験する場所なのです」としている。

引地さんは、24日にもひろゆきこと実業家の西村博之さんの「大阪万博、採算度外視で大金を突っ込んだパビリオンはこの時代に生まれて大阪に行ける人しか見れない」としたX投稿を引用し、万博の意義について「結局万博は『デジタルで代替できない』んだと思います。多くの人はネットの『情報』を求めているんじゃなくて、本当は『いま、ここ』にしかない『体験』を僕らは求めているんだと思います」と反応していた。

J-CASTニュース

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