30年かけた開発計画が白紙…千葉ニュータウン「印旛中央地区」で発起人会が解散、新市長と方針の違いで「けんか別れ」
2025年5月27日(火)7時39分 読売新聞
国道464号沿いに広がる「印旛中央地区」(4月4日、印西市で)
開発から半世紀がたった千葉ニュータウンで、区画整理事業による開発を目指していた千葉県印西市吉高などの「印旛中央地区」を巡り、事業主体の組合の設立母体となる発起人会が3月末で解散した。約100ヘクタールの広大な用地について、約30年かけた開発計画は白紙に戻る。約43ヘクタールを所有する最大地権者の市側と、発起人会側の方針の違いが表面化した。(木村透)
市や発起人会の資料などによると、北総線「印旛日本医大駅」の東側に位置する印旛中央地区は、国道464号の両側に広がる広大な山林で、地権者は約270人(共有者含む)。
当初は「住宅・都市整備公団」(現・都市再生機構=UR)が開発する計画で、1992年頃から約46ヘクタールの土地を先行取得。97年の都市計画決定で、市街化調整区域から市街化区域に編入された。
だが、URが2007年に撤退し、18年には土地を印西市に無償譲渡した。以後、地元地権者が19年に発足させた「印旛中央土地区画整理事業発起人会」と市が、組合方式の土地区画整理事業による開発を目指してきた。
発起人会の事務局長だった千代川宗圓氏によると、発起人会は31回の会合を重ね、造成した用地にデータセンター(DC)や物流施設を誘致する計画をまとめた。総事業費は344億円。保留地売却で259億円を捻出し、公共施設整備や埋蔵文化財調査費用約85億円は市の助成金で賄うとしていた。
千代川氏は「市にはいったん税金で負担してもらうが、固定資産税などの増加分で十分賄える」と話した。
だが、藤代健吾市長が昨年7月の市長選で初当選して風向きが変わった。藤代市長は、発起人会が求めていた組合の認可申請費用などの補正予算化を見送り、年約1億円の発起人会の運営費も新年度予算に計上しなかった。
藤代市長は「市は4割の土地の地権者。多額の補助金を投入する事業であり、建設コストが上振れする中、事業費の精査と事業者選定の透明性確保が必要と考えた」とし、「考え方と手法が我々の思いと違った。オープンな場で決めていくべきで、予算化は難しかった」と説明する。
今年2月21日には、藤代市長が発起人会に対し、〈1〉事業内容や事業費の精査〈2〉(組合の)業務代行者は公募とし、公募条件は市が合意した内容とすること——などを求める「事業推進に向けたお願い」の文書を送った。
これに対し、発起人会は「市とともに組合設立を目指してきた努力を白紙化するものだ」と反発。3月5日、前田完一会長名で「発起人会は解散する」との趣旨の回答書を送付し、同月末で解散した。
地元住民(64)は「市が言うように透明性は大事。発起人会が何でも決め、説明も足りなかったと思うが、長年努力されたのは事実。けんか別れのような形になったのは残念だ」と話す。
これで組合方式による事業計画は白紙に戻る。傾斜地が多いものの、成田空港に近く、国道464号が中央を通る同地区の潜在力は高いが、開発は10年単位で遠のくことになる。
藤代市長は「旧印旛村時代から30年かけて検討してきたので、最後まで一緒にやりたかった。今後はゼロベースで検討していく」と話している。