雲隠れの理事長と“父母会”、日大騒動への違和感

6月5日(火)6時0分 JBpress

日大アメフト部の部員による反則・暴行行為はなぜ起きたのか?(写真はイメージ)

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 日大アメリカンフットボール部による反則行為、暴力行為に関わる騒動は、内田正人監督や井上奨コーチが辞任をしても、一向に収まる気配がない。

 日大の対応に対して、“危機管理”がなっていないとか、最初にボタンを掛け違ったなどの指摘があるが、これらの指摘はまったく的外れである。

 スポーツでルールを破って、故意に相手方の選手を傷つけるなどというのは絶対にあってはならないことである。危機管理というのであれば、ルールを守り、汚い手段は用いないというのが大前提である。ばれたら大問題になるようなことをしておきながら、危機管理などしようがないのである。

 日大では2年前に危機管理学部が設けられたが、同部への風当たりも強いそうである。『週刊文春』(6月7日号)によれば、同学部の福田弥夫学部長は5月25日、三軒茶屋キャンパスで次のように呼びかけたという。「日本で初めて危機管理を教育する危機管理学部を設立した日本大学が、自ら招いた不祥事への対応が不適切で、危機管理を専門とする教員は一体何をしているのか、といった批判」を浴びていることを述べた後の弁明である。「危機管理学部は日本大学の危機管理を直接担当する部署ではありません」とまず述べている。それはそうだろう。その上で、「今回の問題は、危機管理を学ぶ上で不祥事件に対応する教訓の宝庫です。ただ、皆さんにとっては極めて身近な問題であり、危機でもあります。その危機をどうやって乗り越えていくか、全力で考えてください」と呼びかけたそうだ。

 一生懸命なのは分かるが、どうにも頓珍漢である。「教訓の宝庫」と言うが、一体、どんな教訓があると言うのだろうか。

 今回の日大アメフト部の部員による反則・暴行行為はなぜ起きたのか。調査を行った関東学生アメリカンフットボール連盟は、井上前コーチの「相手選手が怪我して出られなければ日大の得」、内田前監督の「やらなきゃ意味ないよ」といった発言を事実とし、「怪我をさせる意図が込められていた」と認定している。その上で、日大の体質を「監督の言うことは絶対だった」などとし、最も重い除名処分を下した。

 危機管理の問題などではなく、勝利至上主義で、そのためには手段を選ばないという体質にこそ問題があったのである。

 内田前監督は、日大の選手が関学の選手と目配せで挨拶をしただけで、「今日負けたのはお前がふざけた態度をとったせいだ。今から関学の選手を殴って来い」と怒鳴りつけることがあったという。こういう人物がいる限り、同じような不祥事は起こり得る。


田中体制の一掃こそが鍵なのでは

 教職員組合も要求しているように、日大が信用を取り戻し、再生を図るには、田中理事長、大塚吉兵衛学長をはじめとする今の体制を一掃することである。今回の日大騒動の原因は、突き詰めていけば今の田中英壽理事長体制に突き当たるからだ。

 それにしても日本最大のマンモス大学にしては、執行部の出来が悪すぎる。ナンバー2の内田氏が関学を訪れ謝罪したのは、問題の試合から約2週間後だった。それも形だけの謝罪でしかなかった。その後、大塚学長が記者会見を行ったが、当事者能力がないことを露呈しただけであった。トップの田中理事長などは、内田氏が謝罪会見を行い、監督辞意を表明した翌日、3時間もパチンコに興じていたというのだから呆れる他ない。

 田中理事長は、週刊文春の記者の問いかけに、「俺、知らないもん、全然」「フットボールなんてルールも知らないし」と答えるのみで、日大トップとしての責任感など微塵も感じられない対応をしている。

 福田危機管理学部学部長は、前述した学生への呼びかけで、「大学本部から、我々に情報が与えられ、対応にあたってくれ、という指示があれば迅速に対応したはずですが、現在に至るまで、今回の問題に関する情報は伝えられていないのが現状です」と語っている。それはそうだろう。何しろナンバー1が、「俺、知らないもん、全然」と言っているのだから。要するに、日大が危機に直面しているという自覚がないのが、田中理事長なのである。

 田中理事長は山口組や住吉会の組長らとも親しくしているようで、写真も出回っている。田中氏は「合成写真」だと弁明しているようだが、誰が、何の目的でこんな合成写真を作成するのか。むしろ田中氏は、暴力団幹部との親密な関係を利用して、その強面ぶりで大学内での地位を固めていったのではなかったのか。

 日大では、弁護士を中心としたメンバーで第三者委員会を立ち上げ、2カ月をメドに報告書が提出される見通しとしている。その時には、田中理事長が記者会見するかのように言われているが、おそらく実現しないだろう。田中氏をよく知る人の話によれば、人前でまともにしゃべれる能力を持ち合わせていないそうだ。文春記者とのやりとりを見てもそれはうかがえる。だからこそ、いまだに表に出てこないのだろう。こんな人物が、本来、最もアカデミックな場所であるべき大学のトップに居座っていることに、大きな違和感を覚えざるを得ない。


学生はもっと自立すべきではないのか

 今回の騒動で違和感を覚えたことがもう1つある。やたらと父親、両親、父母会という言葉が目立っていたことだ。

 私は高校卒業後、18歳で就職したが、親には何ひとつ相談しなかった。当時の三和銀行(現三菱UFJ)を退職して、共産党衆議院議員の秘書となる際も、妻とは話し合ったが、親にはまったく相談していない。最大の理由は、親には心配をかけたくなかったからである。

 私より1学年上に池永正明というプロ野球選手がいた。投手として甲子園でも優勝し、入団1年目で20勝をあげた。残念ながら八百長問題でプロ野球界から永久追放されるが、当時のナンバー1・ピッチャーだった。この池永投手が下関商業高校から当時の西鉄ライオンズに入団する際、入団交渉を1人でやったことが話題になった。今では考えられないことだが、当時はこれが普通であった。

 私の20歳頃は、1970年安保闘争の時代であった。多くの学生がヘルメットをかぶって、ゲバ棒を持って暴れていたが、親に相談しながら運動していた連中は、もちろんいなかったろう。

 確かに、時代が変ったのだろう。私は中学、高校と野球部に入っていたが、当時、部活に父母会などはなかった。いつ頃から中学や高校の部活に父母会ができたのだろう。ましてや最近は大学の運動部にまで父母会があることを知り、正直、呆れ、驚いてしまった。大学生と言えば、選挙権はあるし、3年生以上は20歳を超えている。まぎれもなく大人である。そこに、本当に父母会が必要なのか。父母会は何をするために存在しているのか。応援だけなら、それぞれが勝手にやれば良いことだ。

 私の孫は小学4年生だが、幼稚園の時からサッカークラブに入っている。練習には、必ずママが同行する。一体、いつまでママが同行するのだろう。これで本当に強い選手が育つのだろうか。心配になってくる。

 もちろん親が一生懸命、自分の子どもを応援するのは当然のことである。私だって、孫のサッカーを応援する。ただ、大学生ともなれば、何か問題が発生すれば、学生自身がまず解決に乗り出すべきであろう。もっと自立してほしいと思う。

筆者:筆坂 秀世

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