野党1年生が国会議事堂で小泉進次郎をにらみつける理由

6月15日(金)7時0分 文春オンライン

#1[ 絶望から生まれた幻の「新党ゼロ」は何を訴えたかったのか ]から続く


◇ ◇ ◇


 安倍政権の支持率低下と反比例して浮上していく小泉進次郎の人気。全国的な世論調査の中では「次の総理にしたい人」として首位になることも増えてきた。マスメディアは彼の一挙手一投足を無批判に追い続け、自民党内はもちろん、野党の党首からもラブコールが聞こえてくる。


 9月の自民党総裁選がどう転ぼうが、ポスト安倍の時代は、今後3年以内に必ずやってくる。総理大臣になる宿命を背負い、2020年代を見据えて「決起」の準備を進めている37歳のホープに対し、これからの野党はどう対峙していくのか。野党執行部たちが目の前の政局対応に忙殺されている中、進次郎世代に当たる国民民主党の若手たちは手探りながら、来たる「小泉進次郎政権」との対抗軸を見いだそうと模索し始めていることは、あまり知られていない。


 去る4月、永田町に彗星の如く現れては消えた、誰も知らない若手集団「新党ゼロ」の実像に迫る座談会の後編。「男子校の放課後」のような雰囲気の中で語り合い、氷河期世代ならではのゆるい政党観を掘り下げていくと、「2025年」という日本政治の分水嶺が浮上してきた。(司会・常井健一)



左から青山大人(あおやま・やまと/39歳)、森田俊和(もりた・としかず/43歳)、関健一郎(せき・けんいちろう/39歳)



党首討論で「モリカケ問題」を扱わなかったのは健全だ


関健一郎 我々、「新党ゼロ」の5人に共通するもうひとつのポイントは、「政党はどこでもいい」と思っていることでしょう。支援者にも政党ではなくて、「あんたを応援している」と言われます。だから、政党のために政治をやっているわけではない。法案の採決時の党議拘束ってどうなの——と思うし、審議拒否も非常に不愉快です。


青山大人 そうだよな。


 5月の党首討論で、我が党の玉木雄一郎共同代表が「モリカケ問題」を扱わなかったのは健全だと思うし、その路線を共有する仲間たちを誇りに思う。今までやりたくなかったけど、そろそろ政党名をちゃんと訴えようかなと思わされました。


森田俊和 55年体制で東西冷戦があった時代は、日本の政党も右と左ではっきり分かれていたと思うんですけど、今はそうではない。昔からの惰性で、保守系の組織団体は自民党を応援して、労働組合は自民党以外の候補を応援しているだけ。





 今や「同一労働同一賃金です」と、一昔前の社会党が言うべき内容を安倍政権が言っている時代ですよ。一方で、民主党政権は、保守政党がやるべきこともやっていた。だから、政党のスタンスって、もう何でもありだなという感じです。「紅白歌合戦」みたいなもので、政治家がたまたまAチーム、Bチームに分けられて、それぞれの役割を分担している。もう自民党と野党に大きな差はないと思います。


中選挙区時代は自民党内で政権交代が起きていた


青山 確かに、イデオロギーの時代ではないけど、いつの時代でも権力は必ず腐敗するわけですから、10年ごとに政権交代が起こって、より良い政策を練り上げることを競うような二大政党制ができればいいなと思っています。





 例えば、2000年代、政権交代前に民主党が掲げていたマニフェストって、非常に先進的だったんですよね。まさに最近、財務省の問題が出てくる中で、歳入庁・歳出庁創設のアイデアが議論されているけれども、あれだってずっと民主党が言っていたこと。保育無償化だって、もともとは民主党の看板政策だったのを安倍政権に取られた。でも、結果的にそれが実現して、少子化対策になれば、僕はそれでいいと思っている。


 僕も、自民党は別に嫌いじゃない。中選挙区時代は自民党が派閥で分かれていて、党内で政権交代が起きていた。今も、あれぐらいの振れ幅で政権が変わるべきだと思っています。国民民主党は、そういう選択肢になれるように目指していけばいい。






筋トレ、筋トレ、筋トレという日々


森田 元自民党の立場から古巣を見ていると、今の雰囲気を息苦しいと思っている人も結構いるように思えます。私が自民党を離れたのは、そもそも自民党埼玉県連の事情でもあるんです。埼玉県議の大ボスがいて、その方が埼玉の自民党を仕切っていることで組織がちょっとおかしくなっている。それに嫌気が差した一部党員の方々が、私を応援してくれています。実際、自民党さんも公明党さんも、2〜3割の支持者は私に入れてくれました。





青山 それは、すごい。


 自民党では我々と同世代の若手が「魔の3回生」と呼ばれているけど、彼らには質問機会が回ってこない。初当選して半年ちょっとしか経っていない僕らのほうが質問回数で上回っていると思います。遊ぶ暇なんて、ありません。「江夏豊並み」に登板していますが、1年生議員の時に野党にいて、質問力を鍛えられて良かった。


青山 筋トレ、筋トレ、筋トレという日々。


 あと、国会の本会議場に座ってみて気づいたことなんですけど、議場の縦に座っている人(同じ党の先輩)より、横に座っている人たち(他党の同世代)とのほうが、価値観が共有できたりする時が多いんですよ。





 あまり気づいてもらえないのですが、国民民主党の1年生はモリカケ追及をほぼやらないですからね。僕らの世代は「人の悪口で票は増えない」と思っている。モリカケ問題に関する政府の説明に納得している有権者なんていないと思いますが、同時に僕らが過度に追及することも有権者は求めていません。


森田 モリカケ追及を派手にやって、テレビに出まくっていた先輩たちが2017年の衆院選で落ちている。選挙は目立っているから通るわけではないということです。「アイツは畑の中まで来て、握手してくれたよな」「一緒に飲んだよな」「カラオケを歌ったよな」という親近感を持ってもらうほうが、有権者が投票所で鉛筆を握りながら迷った時に自分の名前を書いてもらえる。


大人が悪口ばかり言い合っている国会は恥ずかしい


青山 子どもたちが、例えば関さんを見て「政治家をやりたい」って、そう思ってほしいよね。よく小学校の卒業式に来賓で呼ばれるのですが、将来の夢を語る時に「政治家になりたい」と言う子に出会ったことがない。10年間、毎年出席しているのに。





 よく地元の中学生が修学旅行で国会見学に来るんですけど、大人が悪口ばかり言い合っている今の国会は恥ずかしくて見せられない、申し訳ないという挨拶をしています。まず、自分たちが国会のあり方を見つめ直したほうがいいですよね。


青山 一方で、自民党は世襲議員ばかりになっている中、うちらはみんな1代目、それぞれ「創業者」じゃないですか。出来上がった党の仕組みもない。3人とも農村地帯だし、特にうちの茨城なんか、自民党以外の政党の基盤がまったくない地域ですよ。


 小泉進次郎さんを筆頭に自民党の同世代は、完成した組織の中で培養されたわけでしょう。その違いは、結構大きいと思っています。例えば、今の自民党は、国の権限を強めて、中央集権に戻そうとしている。僕はそれには大反対で、どんどん地方に権限も財源も与えるべきだと思っています。





 有権者から「青山さん、今の政治家はみんな土のにおいを感じない」とよく言われるんですよ。僕は一応、以前に畑を借りてブラックベリーを作っていたんです。草取りとか含めて、少しでも自分の手で土を感じようと。そういった意味では、僕らの強みは、地方から出てきた1代目の政治家という点。関さんが言うところの「世の中の中庸」に近い感覚を持っているという自負があります。



支持率に一喜一憂する必要なんてない


 そういう思いが結実したひとつが、「新党ゼロ」のコンセプトだった。


青山 世襲のサラブレッドとは違う、大きな売りになるかなと思う。


 「土のにおいがする政治家」って、何党にいようが選挙に強いんですよ。昔、亀井静香さんが作った国民新党だって、少人数で政党支持率はゼロに近かったけど、所属議員はそれぞれ自力で勝てる人ばかりだった。支持率に一喜一憂する必要なんてないんです。僕らはそういうのを目指したいよね。


森田 小泉進次郎さんの場合、やっぱりああいう家系の中に生まれたら、選挙の心配をしなくてもいいでしょうし、特にお父さんだけでなく、お兄さんも俳優で有名人だし。だからこそ、ああいうふうに好き勝手……まあ、「正論」……なのかな……。





青山 けっこう、鋭いこと言うね(笑)。


森田 小泉さんが自民党青年局長をやっていた時、東北地方の被災地に毎月11日に行く活動をしていましたよね。確かに「東北の被災者を忘れるな」という考えには共感しますけど、毎月決まった「11日」に地元を離れられる環境を作るのは正直言って難しい。小泉さんが若くして全国行脚できるのは、世襲で選挙区事情に恵まれているからだと思います。


向こうは将来、自民党のリーダーになる


 僕は、国会の本会議場で質問に立つ時は、必ず小泉進次郎さんをにらみつけることにしているんですよ。





青山 これは面白いな。


 登壇するとわかるんですが、まっすぐ前を見ると、真正面のところに小泉進次郎さんの議席があるんです。向こうは将来、自民党のリーダーになりますから、こちらは東の横綱に対抗する西の横綱になるんだという気概でにらみつけています。ちなみに、小泉さんとは面識もありません。どこの誰だか、知らないと思いますよ。それでも、横綱にケンカを売る権利は、序ノ口の力士にもあるでしょう。


青山 その意気込み、いいなあ。





 例えば、昨年に小泉さんが若手議員と提案した「こども保険」のことなんかも、私は徹底的に勉強して反論できるわけですよ。実は、小泉さんが習っていた社会保障の専門家の先生は我々と一緒。一緒なのに、小泉さんが言っていることは我々とは噛み合わない。社会保障はユニバーサルサービスにするのが私たちの考えであり、小泉さんたちは金持ちと貧乏人で分けようとしている。これは大きな違いなんです。だから、細かい政策論にブレイクダウンして議論したら、僕は小泉さんに絶対勝つ自信があります。


青山 小泉さんは自民党で農林部会長もやっていたけど、やっぱり市場原理が好きだよね。釈迦に説法だけど、市場主義を導入してはいけない分野もあるんですよ。僕の選挙区は農村地帯だから、この点は地域を代表して強調しておきたい。かといって、今のままでいいわけではない。変えるべきところは変えるんだけれども、バランスって大事だと私は思うんですよね。そのバランス感覚が、小泉さんには足らない。





 だから、与野党で議論すべきなのは、モリカケ問題じゃないんですよ。審議拒否して、不信任案を出して、大臣の首を取るぞというやり方ではない。農林水産で言うなら「市場原理がいきすぎです」、社会保障であれば「金持ちと貧乏人を分けてはいけません」などと、自民党の政策に一つひとつ物申していく。小泉さんたち、自民党の同世代と政権交代可能な二大政党制に向けた健全な議論、さわやかな議論をすればいいんです。だから、その準備としても、登壇時に小泉さんをにらみつけているんです(笑)。



まだ政権を担えるまでの余裕はない


森田 小泉さんは時々、安倍政権を批判しますけど、たぶん、彼に限らず、自民党の同世代には相当な危機感があるんじゃないかなと思います。やっぱりアベノミクスがコケた時に、自民党は選挙で大負けをする。そうならないために、どんな手を打っておくかという仕込みを、アドバルーン的なものも含めて打ち出そうとしているんじゃないかな。





 かといって、安倍政権の次にうちらが政権を担えるかといえば、まだそこまでの余裕がないかな。目の前に出てきた課題をこなすのに精いっぱいで、50年後、100年後の日本を本当にどうするのか——みたいな大局的な議論に行くまでの体力が我が党にはまだまだない。


 今、青山さんが言い出しっぺで、小泉さんが自民党の若手を集めてやっている勉強会(「2020年以降の経済社会構想会議」)に対抗した集まりを「新党ゼロ」の5人を核にして作ろうという話をしているんだよね。


森田 あと5回後の選挙で政権を取る時のための準備になるかな。


 えー、それは遠すぎだろ。僕は2025年で政権交代と踏んでいるけど。





青山 僕はあと3回かな。次の、次の、次の選挙で、政権交代。


 ほら、それは2025年だよ。当選4回生で、自分の選挙区だけじゃなくて、全国にいる仲間の応援にも行けるようになっていたいね。


青山 そのためには、僕らも比例復活でギリギリ当選じゃなくて、小選挙区でぶっちぎりで勝てるように強くならないと。





「戦場」の最前線にいて有権者と接していないと


森田 初当選してわかったのは、国会は空虚なところだということ。建物は立派だし、優秀なスタッフもいるし、知的好奇心をくすぐられる情報も山ほどあるけど、ここに「答え」はない。


 詩人だね。


森田 国会はいろんなことを決める場ではあるけど、やっぱり「戦場」の最前線にいて有権者と接していないと感覚がおかしくなります。だから、議員宿舎も借りず、東京に家を持たず、毎日、地元から通い続けている。これも我々3人に共通しているね。


青山 やっぱり国会から地元に戻ると心が落ち着くよね。それじゃ、みなさん、地元に帰りましょうか。


関・森田 はい、お疲れさまでした!






森田俊和(もりた・としかず)

1974年埼玉県熊谷市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。2012年、埼玉県議2期目の途中で、衆院選に初挑戦し落選(埼玉12区、無所属)。14年、衆院選(同、次世代の党)で落選。17年、衆院選で初当選(比例北関東ブロック、希望の党)



青山大人(あおやま・やまと)

1979年茨城県土浦市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、丹羽雄哉元厚相の秘書に。茨城県議を2期務めた後の2014年、衆院選に出馬し、落選(茨城6区、民主党)。17年、衆院選で初当選(比例北関東ブロック、希望の党)



関健一郎(せき・けんいちろう)

1978年神奈川県鎌倉市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、NHKに記者として入局。高松放送局時代に玉木雄一郎議員にスカウトされ、2014年、衆院選に立候補、落選(愛知15区、民主党)。17年、衆院選で初当選(比例東海ブロック、希望の党)



写真=山元茂樹/文藝春秋



(常井 健一)

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