井岡一翔の「誠実さ」と「覚悟」 日本人初4階級制覇の原動力

6月20日(木)18時37分 J-CASTニュース

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ボクシングの井岡一翔(30)=Reason大貴=が日本人初の世界4階級制覇を達成した。WBO世界スーパーフライ級王座決定戦が2019年6月19日、千葉・幕張メッセで行われ、同級2位の井岡が同級1位アストン・パリクテ(28)=フィリピン=に10回1分46秒TKOで勝利した。井岡はミニマム級、ライトフライ級、フライ級に続いて世界4階級目を制覇。日本ボクシング史に新たなページを刻んだ。

一度は跳ね返された「階級の壁」を自らの拳で乗り越えた。10回、右カウンターでパリクテをぐらつかせた井岡に迷いはなかった。後退するパリクテに次から次へとパンチを打ち込んだ。世界4階級への怒涛のラッシュ。ガードすらままならず、戦意喪失状態のパリクテの表情を確認したレフリーが両者の間に割って入り試合をストップ。文句なしのTKO勝利で4階級制覇を成し遂げた。



体格差を最大限に生かす戦法を取ったパリクテ



47.6キロのミニマム級から階級を上げてきた井岡に対し、パリクテはバンタム級(53.5キロ)やスーパーバンタム級(55.3キロ)で戦ってきた強豪。リング上では両者の体格差は明らかで、実際、身長で4.1センチ、リーチでは6.3センチ、井岡が劣っていた。これがいわゆる「階級の壁」というもので、今回の試合は、この体格差をいかに克服するかがひとつのポイントとなっていた。



ボクシングにおいて体格差とは、イコール相手との距離につながる。パリクテはリーチ差をいかすように序盤、井岡と距離を取って左ジャブをつき、右のロングフックを放った。井岡が懐に入り込もうとすればアッパーを突き距離を保った。常に自身が優位となる距離で試合を進め、体格差を最大限に生かす戦法をとってきた。



相手が体格で上回っても井岡のスタイルに変化はなかった。井岡のボクシングは実に「誠実」である。ガードをしっかり固めてジャブからのワンツー、左フック、そしてボディー。ストレートの軌道は真っすぐで、教科書通りのボクシングを実践する。ベタ足気味ながらサイドステップを踏むことができ、無尽蔵のスタミナを誇る。そのスタイルに派手さはないが、人並み以上の練習量をうかがわせるファイトには、ボクシングと向き合う「誠実さ」が見て取れる。



勝負を分けた高い防御技術とボディー打ち



この日のリングで際立ったのは、打たせない技術だろう。序盤こそ、パリクテのアッパーでアゴが上がるシーンが見られたが、回を重ねるうちにこのアッパーを見切り、左右のフックも頭を低く構えてことごとく空を切らせた。たとえガードの上からといっても、重いパンチが当たれば後々効いてくる。井岡が一歩踏み出すことが出来た大きな要因が、このハイレベルの防御技術にあったといえるだろう。



そして、もうひとつ勝因を挙げるとすればボディー打ちだろう。脇の甘いパリクテのボディーを井岡は序盤から積極的に叩いた。一見、即効性がないようにも見えるボディー攻撃は、中盤から終盤にかけジワリジワリとスタミナを奪っていく。空振りを繰り返し、精神的な疲労に加え、序盤のボディー攻撃がパリクテのスタミナを奪い、ガードを下げさせた。そして10回、ガードが下がったところに的確なパンチを叩き込んだ。井岡にとっては理想通りの展開となったに違いない。



この2年近くで井岡の生活環境は大きく変わった。一度は日本のリングと決別し、海を渡って可能性を求めた。私生活では昨年11月には離婚を経験。そして近く、新たな家庭を持つという。ボクシングスタイルそのものに大きな変化は見られなかったが、この日のリングには、これまでファンが歯がゆさを感じていたものがなかったように見えた。



試合後、打ち合いのシーンを思い返した井岡は「覚悟」という言葉を口にした。元世界王者を叔父に持ち、トップアマを経て父が経営するジムからプロデビューしたサラブレッド。周囲の期待通り輝かしい戦績で世界3階級制覇を成し遂げたが、そこにはいつも何かが足りなかったように思える。日本のボクシングファンを熱狂させた10回の攻撃の中で、井岡はその答えを見つけたのかもしれない。

J-CASTニュース

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