なぜ新宿駅の「箱根そば」では1日2000杯も売れるのか? 人気の秘密を直撃してみた

6月25日(火)11時0分 文春オンライン

「箱根そば」といえば、小田急線の名わき役的存在の人気の駅そば店である。自分も昭和の終わり頃、下北沢駅改札ヨコにあった「箱根そば」で「かき揚げそば」を食べて感動した記憶がある。それ以来、小田急線を乗り降りすれば必ず暖簾をくぐってしまうわけである。


「箱根そば」を経営する会社は(株)小田急レストランシステムである。今回は代々木にあるこちらの会社に訪問して、箱根そばのおもしろ情報や人気の秘密をじっくりと聞いてみることにした。


 話をうかがったのは、箱根そば事業部長の清水一洋さん、営業推進部課長の長谷川真也さん、そして高橋律子さんの3人である。


 今回の「箱根そば」のキーポイントは、「謙虚な気持ち」、「ぶれない味の追求」、「地域に寄りそった店」、「ユーモア」といったところ。



話をうかがったのは、(株)小田急レストランシステムの箱根そば事業部長の清水一洋さん(中央)、営業推進部課長の長谷川真也さん(右)、そして高橋律子さん(左)の3人


◆◆◆


「『箱根そば』の名前の由来は?」「実は……」


——箱根そばの創業はいつ頃ですか?


清水さん「創業は1965年(昭和40年)。小田急新宿駅の各駅停車の7番線ホームに1号店が誕生しました。そのあとはサミダレ的に店が増えていきました。1号店は今はもうありません」


——屋号の「箱根そば」の由来は?


清水さん「実は、真相は不明なんです……」


 意外な回答が返ってきたので驚いた。私の予想としては、小田急小田原線の終着駅は箱根湯本駅。つまり、「箱根そば」と命名すれば、箱根への郷愁が生まれ、電車利用者が増えると考えたからと予想したのだが、それも不明だそうだ。当時の会社のお偉いさんが決めたのだろうか。


——今の店舗数は?


長谷川さん「直営店40店舗(新宿駅本陣1店舗含む)、FC店が6店舗、合計で46店舗です。最近は、小田急線以外の店舗(四谷店、田町店、豊洲店、秋葉原店など)も増えています」


——箱根湯本駅には「箱根そば」はありますか?


長谷川さん「それが箱根湯本駅にはないんです」


 実は、箱根そばのサイトをみて、そのことに気が付いていたのだが、改めて聞いてみたが本当だった。確かに、箱根には「はつ花」などの有名店もある。集客も週末中心だろうし、営業は難しいのかもしれない。



駅ホームに店舗がなくなった理由は?


——駅ホームにある店はありますか?


長谷川さん「相模大野駅だけです。椅子のない立ち席だけの店はこの相模大野店だけです」


——ホームに店舗がなくなった理由は?


清水さん「複々線化事業が進み、急行・準急と各停の乗り換えの時間がスムーズになった結果、待ち時間に食べる人がいなくなったのが背景にあると思います」


 箱根そばはどこのお店にいっても、白い色を基調とした清潔感あふれる内装で、女性客も多く来店している。麺は生麺を使用し、主にグループ会社の食品会社が製麺して配送している。天ぷらも各店舗で手揚げしている。粒状のかつお節を使って出汁をとり、しっかりとしたムラサキのきれいなつゆを提供している。そして、何処の店で食べても味のブレが少ない。




——どこで食べても味のブレが少ないと思います。何か秘訣がありますか?


清水さん「本部には調理サービス指導部があって、そこで研修などを通して味のブレをチェックしています。普段から本部が頻繁に店舗を訪問し、味や盛り付けなどすべてチェックし、また、いつも写真を送ってもらい確認するようにしています。Twitterに投稿される実食ツイートの写真などもチェックしています」



新宿店で1日2000杯が売れる理由は?


 ところで、2018年10月には新宿駅の基幹店「箱根そば本陣」をリニューアルオープンした。


——新宿の「箱根そば本陣」は、他店と何が違いますか?


清水さん「新宿店は1日2000杯を超える杯数が出る基幹店です。そこで、新宿店を最重要基幹店と位置付け、味も(値段も)格上げして、一つ上の味を提供するようにしたわけです。例えば『肉そば』は本陣では牛肉、他店では『豚肉』を使用しています。かき揚げも他店と違います」


 早速、取材後に食べに行ってみた。午後3時半過ぎというのに多くのお客さんが入店中であった。「小海老入りかき揚げ天そば」(520円)を注文すると、流れるような作業であっという間に完成した。かき揚げには他店にない小エビが3〜4尾入っている。麺はのどごしや香り等のバランスを考え、外皮の入った粗挽きのそば粉をつかった配合だという。量も十分あり、つゆもしっかりと出汁が香る。






 さて再びインタビューに戻ろう。


——箱根そば全体での人気メニューは?


清水さん「かき揚げ天そば、天玉そばがダントツです。きつねそばやたぬきそばなどが続きます」


——売り上げベスト3店は?


高橋さん「1位は新宿本陣店、2位は小田原店、そして3位は海老名店、藤沢店、登戸店がほぼ並んでいます」


 海老名店や登戸店は改札内にある。鉄道を利用しない場合でも、入場券を買って入場し、お店で実食のスタンプを押してもらえば、入場券代は返金されるそうだ。ありがたいサービスである。


——他の富士そばや小諸そば、ゆで太郎はマスコミによく登場していますが、箱根そばはあまり露出していません。理由はありますか?


清水さん「『箱根そば』は、他のチェーン店と比べ店舗数も少なく、東京と神奈川県を中心に展開している店舗です。まだまだ、修行中勉強中の身です」


 とにかく謙虚なのである。地域に寄りそっていこうという姿勢には共感できるものがある。次に「コロッケそば」と「豆腐一丁そば」のこと、最後に今後の展開などを質問してみた。



昭和40年代から出していた「コロッケそば」


——「箱根そば」はポテトを使った「コロッケそば」の発祥の店といううわさがあります。しかもコロッケはカレーコロッケです。新松田店では、1985年位にはすでにカレーコロッケだったという話があります。このあたりの真相はありますか? 


清水さん「コロッケそばの発祥は『箱根そば』だという話は数年前にもマスコミに登場しました。自分も小学校の頃、昭和50年代ですが、生田駅でカレー味のコロッケそばを食べていました。正確な記録が残っていませんが、昭和40年代、箱根そば下北沢店のオープン時にコロッケそばを初めて導入したようです。当時は約30gのカレーコロッケ(ひき肉・春雨入り)が2個入っていました」


 清水さんは小学生の頃から「箱根そば」を食べていたという事実が判明した。すごい「激レアさん」であることは間違いない。これからは「箱そば先生」と勝手にお呼びすることにしようと思う。




——「豆腐一丁そば」の発案は?


高橋さん「豆腐一丁そばは文字通り、豆腐が一丁、そしておかか、しょうが、たぬきが冷たいそばにのって、冷たいつゆをかけて登場します」


清水さん「約30年前、当時の担当者がインパクトのあるそばとして、弊社が運営するそば処『つづらお』で販売していたものをアレンジしたようです」


——箱根そばのキャラクターでアイコンになっているイラストがありますが、なんという名前でしょうか?


清水さん「Twitterのアイコンにもなっていますが、『やっこさん』といいます。8月5日生まれです」



——今年はこれからイベントなどがありますか?


清水さん「『豆腐一丁そば』は8月に多くの店舗で1ヵ月程度の限定発売を毎年しております。今年も実施します。また、『やっこさん』の誕生日、8月5日は『箱そばの日』です。今年も面白い企画を考えています。近々アナウンスします。どうぞご期待ください」


——最後に個人的希望ですが、「小田急線」を「小田急箱根そば線」に改名することはありますか?


清水さん、長谷川さん、高橋さん一同全員「もちろんありません(笑)」


 70分以上にわたるインタビューであったが、3人から「箱根そば」についての沢山の貴重な情報を聞き知ることができた。


「箱根そば」はその命名の由来もわからない。しかし、「コロッケそば」発祥の店であったり、「豆腐一丁そば」を考案したりと、なんだか面白いそば店なのだ。創業から54年が経った今、小田急線沿線中心に地域に寄りそった人気店になっていることがよくわかった。また、清水さんだけでなく、長谷川さん、高橋さんも「箱そばの達人」であることがよくわかった。これからもおいしい「箱根そば」を食べさせてください。


写真=坂崎仁紀



INFORMATION



箱根そば本陣

住所 東京都新宿区西新宿1-1-3 小田急新宿駅地下コンコース

営業時間 平日6:30〜23:00(ラストオーダー 22:45)

     日祝6:30〜22:00(ラストオーダー 21:45)

定休日 なし


https://www.odakyu-restaurant.jp/shop/hakonesoba/hakonesoba/




(坂崎 仁紀)

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