初検証・これが小池百合子氏のアラビア語の実態だ

6月28日(木)7時0分 文春オンライン

 カイロ大学文学部を4年で卒業したという小池百合子氏のアラビア語が、本当にそんなにすごいものなのか、かねてから私は疑問に思ってきた。なぜならアラビア語は日本人にとって最も習得が難しい外国語の一つだからだ。


エジプト人は「日本で6か月やった程度のレベル」


 英語や中国語のように日本で学習者が多い言語なら、氏のアラビア語の能力についてはとうの昔に評価がなされているはずだ。しかし、小池氏のアラビア語を肌で知る外務省の職員や、同省から仕事をもらっている通訳業者などは、有力政治家である小池氏の影響力を怖れ、長年口をつぐんできたというのが実態のようだ。



首都の「顔」でもある小池都知事 ©文藝春秋


 そこで氏がどの程度のアラビア語を話しているかを調べるため、原稿をあまり見ないで話している下記の3つの動画を選んで検証した。


 結論から言うと、小池氏のアラビア語は「ハチャメチャ」である。一緒に動画を見てもらったロンドン在住のエジプト人ジャーナリスト(1980年代にカイロ大学の英語科を卒業)の感想は「これはStreet Arabic。エジプトで生活したかもしれないが、大学で学んだ人のアラビア語では絶対にない。日本で6か月やった程度のレベル」。


本来は格調高く、美しい正則アラビア語


 説明の前提としてアラビア語には2種類あることを憶えておいて頂きたい。一つは正則アラビア語(フスハー)という格調高く美しい万古不変の言葉で、アラビア語圏で普遍的に通じる。コーラン、政治家の演説、テレビのニュース番組などは正則アラビア語である。本、雑誌、手紙、大学の試験の答案など、アラビア語が文字で書かれる場合は、すべて正則アラビア語を用いる。したがってアラビア語圏の大学を卒業するためには、正則アラビア語の会話、読み書きに堪能でなくてはならない。


 もう一つのアラビア語は、人々が日常話している口語(アンミーヤ)で、アラビア語圏でも地域ごとに異なる。市場でおばちゃんがわめいたり、道で子どもたちがサッカーをしたり、家族や友人同士が世間話をするときなど、生活の幅広い場面で使われる。



カイロ・アメリカン大学の卒業式で修士のフードを授与される筆者(写真提供:筆者)


 私が最初にアラビア語を習ったのは20代半ばの頃、三鷹にあるアジア・アフリカ語学院の半年間の企業研修コースだった(その後、カイロに1年10ヶ月留学)。そのときの先生の一人が小笠原良治大東文化大学名誉教授だった。イスラム教に改宗し、エジプト人学生と同じ寮に住み、エジプト人学生と同じかちんかちんに硬いエーシュ(小麦粉とトウモロコシの粉を混ぜ、発酵させずに焼いたパン)を食べ、艱難辛苦の末に7年間をかけてカイロ大学文学部を卒業した小笠原先生は、格調高く、美しい正則アラビア語を、アラブ人のように正確な発音で話された。私たちは、そのアラビア語に畏敬の念を抱いたものである。



「えー」という日本語を何度も交えながら


 小池氏の最初の動画は、ドバイの衛星テレビ「アル・アーンTV」のもので、リビアのカダフィ政権が崩壊した後に、小池氏が同国のベンガジを訪問したときのものと思われる。



 小池氏は「今回の訪問は、日本リビア友好協会の長であるDr.ムクリビ(?)の招待によるものです。私は日本リビア友好協会の会長です。今回の訪問で日本と新しいリビアの関係を強化したいです。それは技術、経済、マンパワーの推進の分野などです。私たちは、日本で今、勉強しているリビア人学生を助けます」という、英検4級レベルのごく単純な単語と構文のアラビア語を「えー」という日本語を何度も交えながら、たどたどしく話している。


わずか1分10秒ほどの間に多くの間違い



カイロ大学 ©文藝春秋


 小池氏の話には数多くの間違いがある。例えば、「マンパワー」を「アル・クウワティル・バシャリーヤ」と言うべきところを「アル・クウワーティル・バシャリーヤ」と言っている(日本人には同じように聞こえるかもしれないが、アラビア語では大きな違いがある)。「クウワート」(複数形)だと「軍隊」という意味になるので「人の軍隊を推進したい」というわけの分からない発言になっている。


 また「ムムキン(可能である)」をなぜか「ムムキナ」と女性形で言い、「ヌサーイド・シャフス・ワ・シャアブ」という発言は「人と国民を助ける」という意味で言っているようだが、この「人」というのが誰のことを言っているのか分からない。


 さらに正則アラビア語で話しているのに、「勉強している(リビア人学生たち)」をエジプト口語の「ビ」を使って「ビドルスー」と言っている。正しくは、関係代名詞を使い「アッラジーナ・ヤドルスーナ」である。また「できるだけ早く(as soon as possible)」というアラビア語も出てこず、助け舟を出されている。


 おそらく事前に原稿を暗記して臨んだはずのインタビューだが、わずか1分10秒ほどの間にこれだけの間違いを犯している。



正則アラビア語とエジプト口語がごちゃまぜ


  2つ目の動画 はエジプト国営衛星放送のインタビューで、エジプトを訪問しシーシー大統領(2014年6月就任)に会うときのものである。


 小池氏は「えー、去年、私はカイロに来ました。シーシー大臣にお会いする素晴らしい機会がありました。面会は、とっても、とってもよいものでした」「大統領は、教育やセキュリティの分野における、日本とエジプトの関係に関心を持っていると聞きました。私はシーシー大統領の日本訪問が2国間の関係を強化し、早めることを期待します」というようなことを、最初の動画以上に、つっかえつっかえ話している。



シーシー大統領(写真右)と会談する小池氏(通訳を介して日本語で会話) ©時事通信社


 この種のテレビ・インタビューは正則アラビア語で話すのが当たり前で、キャスターも一貫して正則アラビア語で話している。しかし、小池氏の発言は正則アラビア語とエジプト口語がごちゃまぜである。小池氏は正則アラビア語をちゃんと話せないようだ。


「美味しい」面会?


 冒頭いきなりエジプト口語で「サナ・リファーテット(去年)」と言っている。ここは正しくは「サナ・マーディーヤ」。「私に〜があった」という意味で使っている「クント・アンティ」は口語かつ文法上の間違いで、正しくは「カーナット・アインディ」。「会う」という意味で何度も使っている「アシューフ」もエジプト口語である。正しくは「アルタキー」。「マブスータ(「嬉しい」の女性形)」もエジプト口語、「ズィヤーラ(訪問)」の後、「(場所)へ」を意味する前置詞の「リ」を使うのもエジプト口語で、正しい前置詞は「イラー」。


 アラビア語を学んだ人なら分かるはずだが、正則アラビア語の中に突然口語が混じると、途端に会話に品がなくなる。このエジプト人女性キャスターは内心唖然としていたはずだ。



カイロの街並み ©iStock.com


 単語の間違いも多い。一番驚くのは「面会は、とっても、とってもよいものでした」と言うのに形容詞の「ラズィーズ」を使っていること。辞書によっては「甘美な」という意味も出ているが、実際には食べ物にしか使わない「美味しい」という意味の語で、「面会は、とっても、とっても美味しいものでした」と話している。また「教育」という意味で「タルビーヤ」を使っているが、これは「子供を躾ける」という意味で、正しくは「タアリーム」。小池氏が日本語で話し始めたあとのアラビア語通訳者も「タアリーム」を使っている。


 小池氏は自分のアラビア語が不安らしく、1分22秒のところで「大丈夫?」とそばにいる人に訊いている。さらにアラビア語で続けられなくなって、2分35秒のところから日本語に切り替えている。しかし、その日本語の話もアラビア語訳に悩むような難しい内容ではない。



相手から正則アラビア語で慰められる


  3つ目の動画 は、クウェート国営放送の「チャンネル1」で、クウェートの女性大臣ヒンド・サビーフ・バラク・アル・サビーフ氏が小池氏を訪問したときのもの。後方に、私と同時期にカイロで学んだ現イラク大使(前職は中東アフリカ局兼アフリカ部審議官)の岩井文男氏の姿が見える。



筆者が学んだカイロ・アメリカン大学(写真提供:筆者)


 当然正則アラビア語で話すシチュエーションだが、小池氏は冒頭でいきなり「アフテケル」(私は思う)とエジプト口語で話し始めている。続いて「今日のミーティングは成功で、えー、フルートフル(これは英語)で、ヤアニイ(「つまりぃ」という意味の、言葉に詰まったときに使う口語)」と発言。


「私は日本における日本クウェイト(友好)協会の会長です。同時に、私は以前防衛大臣や環境大臣でした」。そしてアル・サビーフ大臣にすり寄り「私たちは、モンケン(可能である)……、ヤアニイ」と言葉に詰まったあと、「えー、私たちは同じ仕事(「ワザー……」と一度言い間違えそうになっている)をしており……」とようやく言って、相手に「サヒーフ、サヒーフ(合ってます、合ってます)」と正則アラビア語で慰められている(相手はきちんと正則アラビア語を用いている)。


 その後「私たちには……、一つの問題、(ここで言い直して)(複数の)問題が起こり得るでしょうが……大臣として。ムシュ・ケダ(そうじゃないですか)?」。この「ムシュ・ケダ」も典型的なエジプト口語で、正しくは「ライサ・カザーリク」。「しかし、クウェートと日本の関係については、あー、えー、とてもとてもよいです」と話している。


 発言は1分ほどだが、ほとんど意味のあることを話していない。率直に言って、アラビア語のひどさにこちらが赤面した。



エジプトで行われた世界経済フォーラム(2008年)に出席した小池氏。写真は格好良く見えるが…… ©getty


こんなアラビア語で40年以上、アラブの要人に会っていたのか!?


 小池氏はよほど自分のアラビア語に自信がないようで、普段日本語で話すときの傲然とした態度は鳴りを潜め、相手の顔色を上目遣いで窺い、舌足らずの話し方で媚を売りながら、時に消え入りそうな声で話す点は、3つの動画に共通である。


 また正則アラビア語の語彙が非常に少なく、同じような語を繰り返し使っている。


 以上の通り、小池氏のアラビア語は、カイロ大学を卒業した人のアラビア語であるとは到底信じられないレベルのものである。



(黒木 亮)

文春オンライン

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