グーグル、アップル、アマゾンは自動車をこう変える

7月2日(月)6時0分 JBpress

『2022年の次世代自動車産業』(田中道昭著・文春新書)

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米カリフォルニア州マウンテンビューのグーグル本社の駐車場を移動するグーグルの自動運転車(2016年1月8日撮影、資料写真)。(c) AFP/Noah Berger〔AFPBB News〕

 次世代自動車産業を巡る主導権争いの真っただ中にある自動車メーカーにとって、最大の脅威となっているのが、グーグル、アップル、アマゾンといった「メガテック企業」です。というのも、前回の記事『2019年が「完全自動運転元年」になる現実を直視せよ』で説明したように、これからの自動車産業は完全自動運転分野で主要な地位を占められるかどうかが成否の分かれ目になるからです。

 グーグルやアップル、アマゾンは、完全自動運転で必要となるプラットフォームの構築などの面で、自動車メーカーよりもはるかに先に進んでいると指摘されています。トヨタやGM、メルセデスなども、これからは単にクルマの躯体だけを作っているだけでは勝負になりません。彼らにとっては、メガテック企業と手を組むのか、あるいは独自のプラットフォームを築き上げるのかは、戦略上の大きな分岐点となっています。

 今年(2018年)1月、ラスベガスで開かれた「CES2018」では、スマートスピーカー分野における「グーグルホームvs.アマゾン・エコー」の戦いが注目を集めていました。


今後スマートスピーカーは「クルマの中」へ

 私が参加したセッションでは、リサーチ会社によるスマートスピーカーの動向調査が発表されました。

 アメリカでは現在、スマートスピーカーの利用率が16%を突破していますが、ユーザーに対して「次はどこで使いたいか」と聞いたところ、最も多い回答は「クルマの中」だったそうです。「ただ話しかけるだけの優れたユーザーインターフェース」である音声認識AIアシスタントがクルマに標準搭載されるのは確実です。そこに強みを持っているのが、グーグルやアップル、アマゾンなのです。

 これらメガテック企業は、それぞれが個性的なミッションを持っています。そして既存の自動車メーカーとは全く異質のこのミッションに強いこだわりを持っています。そこを理解しないと、彼らの狙いや凄みは理解できません。

 メガテック企業の中で、自動運転技術で最前線に立っているのがグーグルです。

 2009年から自動運転プロジェクトをスタートさせた同社は、その後、ネバダ州でアメリカ初の自動運転専用ライセンスを取得、2012年8月時点で50万キロのテスト走行を実施しています。

 2016年12月には、プロジェクトを進めてきた研究組織「グーグルX」による開発を終了し、代わって自動運転開発を担う子会社「ウェイモ」を立ち上げると発表、事業化に大きく舵を切りました。

 このようにグーグルが自動運転に積極的に乗り出す動機は、同社のミッションやCEOの個性と無関係ではありません。


「OK、グーグル! ディズニーランドに向かって」

 近年のグーグルのキーワードは「モバイルファーストからAIファーストへ」です。パソコンからモバイルへというデバイスのシフトはほぼ完了しました。その流れの中でグーグルはウェブブラウザやGmail、YouTubeなどで他の追随を許さぬ地位を確立してきましたが、実は収益の9割はインターネット広告に依存してきました。

 その状態を脱却するために、AIを次なる事業の柱にしようとしています。「話しかけるだけ」でスマートフォンや家電を操作できるAI「グーグルアシスタント」こそ、新しい時代の象徴だとサンダー・ピチャイCEOも述べています。

「OK、グーグル! 東京ディズニーランドに向かって」

 搭乗者はそう告げるだけで、ハンドルやブレーキ操作も一切なしで、クルマが自動的に東京ディズニーランドの駐車場まで運んでくれる。そんな近未来をグーグルは作り出そうとしています。

 グーグルは今、AIによってテクノロジー企業としてのポジションをさらに先鋭化させようとしています。同社の囲碁AI「AlphaGo」が最強棋士に勝利したことが世界的な話題となりました。それほど「AlphaGo」の開発は画期的な技術なのですが、このベースとなる機械学習技術は実はオープンソースとして公開されています。つまりグーグル、もっと言えばピチャイは、グーグルの技術を多くの開発者が活用して、1つのエコシステム(生態系)が構築されていくことを望んでいるのです。

 グーグルを理解する上で欠かせない、サンダー・ピチャイのキャラクターにも触れておきましょう。

 グーグルの共同設立者ラリー・ペイジは、2015年に持株会社「アルファベット」を設立し、自分はそのCEOに就任しました。そのとき、アルファベットの参加企業となったグーグルのCEOに選ばれたのが、ペイジの下で上級副社長を務めてきたピチャイでした。

 ピチャイは1972年にインドで生まれました。父親は部品組み立ての工場を経営していたようですが、「12歳になるまで電話もなかった」というほど貧しい環境で成長したといいます。

 しかしピチャイは優秀でした。インド工科大学で学んだ後、奨学金を得てスタンフォード大学に進学。さらにペンシルベニア大学でMBAも取得しています。2004年にグーグルに入社する前は、マッキンゼーで活躍していました。

 グーグルでは、グーグルクロームやアンドロイド、クロームOSといった主要事業を統括し、トントン拍子で出世階段を駆け上がってきました。

 ただ、幼いころ経済的に苦労したせいか、あるいは創業社長ではないという立場からか、多くのメガテック企業の経営者とは対照的に、ピチャイは非常にフレンドリーな性格をしていると言われています。人との争いを好まず、協調を重視する。

 技術のオープンプラットフォーム化も、協調性を重視する彼の性格の現れなのかもしれません。


アップルもいずれは自動車産業の総合プレーヤーに

 そのピチャイが率いるグーグルが掲げているミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」です。

 そこに収益の9割が広告収入であるという収益構造、オープンプラットフォームの事業構造を重ねて分析してみると、グーグルが自動運転で実現しようとしているのは、クルマというハードを作ることではなく、オープンなOSを広く展開することで顧客接点を増やし、最終的に広告収入を増やすことではないかと推測できます。

 グーグルに並ぶIT界の巨人、アップルも次世代自動車産業の主要プレーヤーになるでしょう。

 アップルはよく知られるように徹底した秘密主義を貫く企業です。同社がどこまで自動運転技術を開発しているのか、なかなかうかがい知ることはできません。
それでも「アップルが自動運転技術を開発している」という情報は少しずつ漏れ伝わってきていました。

 そしてついに2017年12月、アップルは公式に自動運転技術について公式に語る機会がありました。同社のAI担当ディレクターが、カメラやセンサーから収集したデータを用いて、路上のクルマや歩行者に目を付けたり、目的地まで車を案内したり、3Dマップを作成したりするプロジェクトの存在を明らかにしたのです。

 今年1月には、自動運転のテスト車両を27台に増強したことも報じられています。またトヨタのレクサスの屋根にセンサーやレーダー、カメラを搭載した同社の開発車両が目撃されたこともありました。

 どうやら現在は、クルマそのものの開発よりも、OSの開発に注力している様子がうかがえますが、最終的にはOSからハード、ソフト、サービスまで含めた総合プレーヤーの座を占めようとしているのではないでしょうか。

 そしてアマゾンです。

 先ほど、アメリカでのスマートスピーカーの利用率が16%を超えていると書きましたが、そのうちアマゾン・エコーが11%、グーグルホームが4%と、アマゾンが圧倒的な差をつけているのです。


トヨタが搭載を決めたアマゾン・アレクサ

 アマゾンは今、アマゾン・エコーをプラットフォームとして、音声AIである「アマゾン・アレクサ」が様々な商品、サービス、コンテンツを外部から取り込みながら大きな生態系を形成しています。その生態系は自動車メーカーも無縁ではありません。CES2018ではトヨタ自動車も、トヨタの車両にアレクサを搭載すると発表しているのです。

 アマゾンもまた、自動運転技術の開発競争の最前線にいるのです。

 アマゾンはもともと、物流拠点において早くから無人システムやロボットによる商品管理システム「アマゾン・ロボティクス」を導入して効率化を図ってきました。そして、自動運転の本質はロボットです。アマゾンにはその蓄積があるのです。

 私の予想では、アマゾンはまずは物流事業で完全自動運転を完成させるのではないでしょうか。そしてその経験をベースに、一般ユーザー向けの乗用車にも進出するはずです。

 アマゾンのミッションは一貫して「地球上で最も顧客第一主義の会社」です。そのために、ユーザー・エクスペリエンス向上のために「ビッグデータ×AI」をフル活用し、高い競争優位性を保っています。

 今時「顧客第一主義」はどんな経営者でも口にする言葉ではありますが、同社CEOのジェフ・ベゾスはこれをあらゆる領域で徹底的にやり切ってきた人物です。完全自動運転技術においても、ライバルを寄せ付けないようなユーザー志向のサービスを実現してくれるのではないでしょうか。

 メガテック企業の動きから目をそらすことはできません。

筆者:田中 道昭

JBpress

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