九州北部豪雨から3年 線状降水帯に備えを
2020年7月5日(日)7時2分 tenki.jp
2017年7月5日に発生した九州北部豪雨から3年。
この豪雨では、福岡県朝倉市、東峰村、大分県日田市を中心とした地域に、短時間のうちに記録的な量の豪雨が降り、土砂災害や河川の氾濫などによる甚大な被害が発生しました。この豪雨をもたらしたのが「線状降水帯」です。きのう4日には熊本県南部を中心に線状降水帯が記録的な豪雨を降らせました。九州は線状降水帯が発生しやすく、線状降水帯による大雨からいかに早く避難するかが重要です。
九州北部豪雨を振り返る
このグラフは、福岡県朝倉市の北小路公民館に福岡県が設置した雨量計の記録です。九州北部豪雨当日、午前中はわずかな雨しか観測されていませんでしたが、午後に入り、急に非常に激しい雨が降り始め、午後3時までの1時間に124ミリ、午後4時までの1時間にも114ミリという猛烈な雨を観測。その後も午後9時ごろにかけて繰り返し1時間に80ミリを超える猛烈な雨が降り、正午から午後9時までの9時間で774ミリもの雨が降りました。アメダスの朝倉では年間降水量の平年値が1860ミリほどですので、その4割を超える雨がわずか9時間の間に降ったことになります。この豪雨により、大規模な土砂災害や河川の氾濫などが相次いで発生しました。
雨が急に強まった正午ごろは線状降水帯が現れた時間帯です。その後、9時間ほどにわたって線状降水帯が朝倉市付近にほぼ停滞した状態になり、午後9時を過ぎて線状降水帯が弱まるとともに、朝倉市内の雨も急速に弱まりました。
線状降水帯の恐ろしさ
線状降水帯は、発達した積乱雲の列です。線状降水帯の先端で雲が発生し、それが風に乗って移動しながら発達。激しい雨を降らせると、次第に弱まっていきます。ひとつひとつの積乱雲の寿命は長くはなく、激しい雨を長時間にわたって降らせることはできません。しかし、線状降水帯では、次々と新しい雲が生まれ、発達しながら進んでくるため、雲のラインの下に当たる地域では長時間にわたって激しい雨が降り続くこととなります。
線状降水帯は通常、長くても数時間程度たつと弱まるのですが、九州北部豪雨の際は9時間ほども継続し、しかも位置がほとんど変わらなかったため、局地的にきわめて大量の雨が降りました。
九州は線状降水帯に特に警戒が必要
今年も九州では、線状降水帯による豪雨が相次いでいます。きのう4日には未明から熊本県南部を中心に線状降水帯が発生。これまでに経験のないような記録的な豪雨により、球磨川が各地で氾濫し、大規模な土砂災害が起こるなど甚大な被害が出ています。また、6月25日の早朝には長崎県五島付近から長崎県北部にかけて線状降水帯が発生し、佐世保市の周辺などで1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降ったとみられます。
梅雨の大雨をもたらす水蒸気は多くの場合、南西あるいは西の方角から日本列島へと流れ込んできます。九州から見ると、この方角には東シナ海が広がっており、水蒸気が初めに陸地にぶつかる場所が九州となります。このため、九州には特に多くの水蒸気が流れ込みやすく、それだけに線状降水帯が発生しやすい地理的な条件になっているといえます。
もし滝のような非常に激しい雨が降り出したら、最新の気象情報に注意するとともに、パソコンやスマートフォン、テレビのデータ放送などを利用して、気象レーダーの画像を確認しましょう。もしライン状に延びる活発な雨雲がかかっていて、特にその雨雲のエリアの動きが小さいような場合には危険が迫っているといえます。大雨により急速に状況が悪化することも多いため、急いで土砂災害や浸水などの危険が小さい場所で身の安全を確保することが重要になります。