安倍晋三「民主党の枝野さん」と山本太郎「クソ左翼死ねというお言葉」 むき出しの“参院選演説”

7月12日(金)5時30分 文春オンライン

「笑いは人間関係の潤滑油だ。ただし、他人を見下す笑いとなれば話は違う。」


一面でまさかの「お笑い論」?


 朝日新聞一面の冒頭である。一面でまさかの「お笑い論」?


 見出しは「『嘲笑する政治』続けるのか」(7月7日朝刊)。



2月10日、自民党大会での安倍晋三首相 ©AFLO


 安倍首相が2月の自民党大会以降、民主党政権を「悪夢」と言って会場の笑いを誘うあいさつを恒例にしてきたことを取り上げ、


《笑いや拍手は確かに起きた。それは、さげすみの笑いだった。》


《民主党政権の失敗と比較して野党を揶揄、こき下ろす。身内で固まってあざ笑う——。自分が相手より上位にあり、見下し、排除する意識がにじむ。》


 このような「嘲笑する政治」が6年半まかり通ってきたのではないか、と問う。


「民主党の枝野さん」と「言い間違い」をする場面が頻発


 すると当日の夕方、今度はデジタル版にこんな記事が。


「首相『民主党の枝野さん』間違い連発 演説の定番に?」(朝日新聞デジタル7月7日)


 安倍首相が応援演説する際、立憲民主党の枝野代表を「民主党の枝野さん」と「言い間違い」をする場面が頻発しているというのだ。


 ただの党名の言い間違いかと思いきや、


《その後に「毎回、党が変わるから覚えられない」などと「釈明」を加え、演説の定番文句になりつつある。》


 という。



 実際の例が書かれていた。まず6日午後の滋賀県草津市での街頭演説。


《「野党の枝野さん。民主党の、あれ民主党じゃなくて今、立憲民主党ですね。どんどん変わるから覚えるのが大変」と話すと、聴衆から大きな笑いが起こった。》


 翌7日になると、


《千葉県内と東京都内で行った計6カ所すべての街頭演説で同様に「言い間違い」をして、聴衆の笑いを誘おうとした。》


 なるほど、「言い間違えて」笑いを取ろうとしている様子がわかる。


 それにしてもこの日の朝刊一面で書かれた「嘲笑する政治」がひとつの「論」や「見立て」だとしたら、この記事は実際に直近の演説を見て書いた「立証編」とでも言うべきものだった。首相の他人を見下す笑いは、この選挙期間中こそ絶賛展開中なのであった。



安倍首相の「半分ステルス」な遊説日程も話題に


 その一方で首相の遊説日程に関しても話題に。


「首相の演説日程 党本部だんまり」(朝日新聞7月8日)


 各党のホームページには党首らの遊説日程が並ぶが「自民党総裁のものは見当たらない」「地元ではすでに告知されている遊説日程でさえ、党本部がだんまりを決め込む事態が続いている」という。


《ある党関係者は「(官邸側は)反対派が安倍首相の演説場所に来ることを相当警戒しているようだ」と明かす。2017年の東京都議選で、安倍首相が秋葉原で「辞めろ」コールを浴びた経緯があるからだ。》(朝日・同)



 つまりヤジを警戒しているらしい。


 このような首相の遊説戦略はスポーツ紙などで「ステルス遊説」と呼ばれている。突然、目的の地に現れるからだろう。


 ただ、各紙を読むと地元の議員らが事前に日程をアピールしていたり、一部の日程は、選挙広告で新聞に掲載されていたりする場合もあるらしい。報道各社に発表された日程に一部の予定が含まれないものもあるという。


 日刊スポーツはこれらを「半分ステルス」と表現していた。なんだ半分ステルスって。そんなステルス大丈夫?



 これはもしかしてトランプに言われてステルス戦闘機F35を爆買いしたはいいが、その性能は当てにならないというメッセージが遊説日程に込められているのだろうか。


 ……考え過ぎた。


「分断」、ここに極まれり


 それにしても安倍首相の一連の遊説記事をまとめてみると、


「できるだけ支持者だけが集まった場所づくりを整え」、実際に演説が始まると「党名の言い間違いなど、野党を嘲笑する」内容も含まれる。そして常に反対者のヤジを警戒する。


「分断」、ここに極まれり。


 朝日の記事には、駒沢大学の逢坂巌准教授(政治コミュニケーション論)のコメントが載っていた。


《「自民党が情報を積極的に公開しないのは時代に逆行している」。一方で、街頭演説でのヤジがここ数年でエスカレートしているとも指摘する。「訴えに耳を傾けるという寛容さが、社会から失われている。演説の場について考える必要がある」と話す。》


 まさに分断をどうするかだろう。


 朝日は「嘲笑する政治」が6年半続いたと書いたが、その結果、首相の遊説場所で「嘲笑とヤジの二極化」の現象が生まれてしまったのである。



保守層に響いている「山本太郎現象」


 現象と言えば、今「山本太郎現象」とでも呼ぶべきものが注目されている。


 政治学者・中島岳志氏の分析によれば、山本太郎の主張は「苦境にあえぐ農家や中小企業、商店主など旧来の自民党支持者たちに支持されています」(「論座」朝日新聞デジタル)という。



《山本さんは一般的に、左派的な政治家と見なされますが、実際は保守的な庶民層に届く熱量をもった政治家です。これから選挙戦が過熱化し、テレビなどで山本さんの姿と主張が取り上げられると、安倍政権に不満を持つ保守層に支持が拡大する可能性があります。》(中島岳志「論座」)


 先日SNSでまわってきた動画を見たら、街頭演説をする山本太郎に「クソ左翼死ね」という言葉が飛んでいた。今の現象を見るとクソ左翼という認識が間違いであることがわかるがそれはさておき、


 山本太郎はヤジに対して、


「ありがとうございます。クソ左翼死ねというお言葉をいただきました。ありがとうございます。死にたくなる世の中を変えたいために私は立候補してるんだ。みんなに生きていていただきたい。」


 と言っていた。反対者も含めたみんなが自分の政治の相手だと。



 こういう「度量」も、保守層を取り込む要因になっているのではないだろうか? いや保守層こそ、か。


 分断された首相の演説風景と対照的であった。笑いや冗談抜きでそう思えたのである。


 参院選の選挙戦も後半に突入する。


 政治家や候補者たちが必死で夢中な今こそ、言葉や風景がむき出しになるのでさらに注目だ。



(プチ鹿島)

文春オンライン

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