<西日本豪雨>星になった妻に誓う「息子2人立派に育てる」

7月14日(土)14時56分 毎日新聞


 みんなから愛されていたし、自分も愛していた−−。西日本豪雨で甚大な被害に見舞われた広島県呉市の会社員、河原篤さん(39)は、妻里美さん(39)を土砂災害で失った。26歳で結婚してから13年間、自慢の伴侶だった。「里美、ありがとう。子どもは立派に育てるから」。1週間前と違って星空の見えるようになった13日夜、篤さんは固く誓った。


 豪雨のあった6日午後8時ごろ、市内の勤務先を車で出た里美さんから電話があった。何らかの理由で車が進めなくなったようで、「家に戻れんけん、引き返す」と伝えてきたさなか、悲鳴が聞こえた。それが最後だった。


 篤さんはいてもたってもいられず、近くの交番に「妻が土砂崩れに巻き込まれた」と駆け込んだ。


 「兄ちゃん、絶対行くな」。警察官に制止され、その日は家で待った。「お母さんは会社で待機しとるけん」。中学1年と小学5年の息子2人にはそう言った。だが、長男は既に覚悟を決めていたようだった。


 7日は早朝から川を見に行ったり、山に登ったりし、警察や消防、消防団にも情報がないか聞いて回った。夜になり、地元の警察署から、里美さんらしい遺体が見つかったと連絡を受けた。帰宅途中の道で流されたとみられる。「指輪に石はありましたか」「マニキュアは赤でしたか」。署員の質問に答えて身元確認を進め、遺体と対面した。ほほ笑みがまぶしかった顔は傷だらけで、息子たちにはすぐに見せられなかった。


 悲しみのどん底に沈んだが、「7日は七夕だなと考え、会える気がしていた。見つからない人もいる。会えて良かった」と篤さんは言う。高校生の時から付き合い、一度別れた後、26歳で再会して数カ月して結ばれた。


 里美さんは子ども会の会長を務めるなど面倒見が良く地域から愛された。近所の実家に今春戻った同級生の女性(39)は「30年来の友人。いつも親身に相談に乗ってくれた」。


 ともに来年2月には節目の40歳。「2回目の二十歳で“W成人式”を」とメッセージを送り合ったばかりだった。


 「自分も妻に見合う夫に」。篤さんは周囲への気遣いなど努力してきたつもりだが、これからも里美さんが星空から見守ってくれると思うと心強い。息子2人は今も気丈に振る舞っている。次男は「ママのにおいがする」と里美さんの洋服を頭にかぶって寝る。けなげで余計つらいけれど、2人を立派に成人させる、それが自分の使命と思う。【松本紫帆】

毎日新聞

「豪雨」をもっと詳しく

「豪雨」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ