NATO会議 憂うべきトランプ氏の同盟観

7月14日(土)6時0分 読売新聞

 北大西洋条約機構(NATO)はソ連・ロシアの脅威に対抗し、欧州の平和を支えてきた。米欧同盟の重要性をトランプ米大統領がどこまで理解したのか、疑問が拭えない。

 NATO首脳会議が開かれ、国防費の負担を巡る米欧の溝が改めて浮き彫りになった。

 トランプ氏はNATO加盟国に国内総生産(GDP)の2%を国防費に充てる共通目標の早期実現を求めた。「最終的には4%まで増やすべきだ」とも主張した。

 加盟29か国で、2%目標を達成しているのは5か国にとどまる。米国がGDP比3・5%なのに対し、ドイツは1・24%だ。「負担を公平に分かち合うべきだ」という米国の指摘には一理ある。

 欧州諸国は、共同防衛の責任を果たすため、国防費の拡充に取り組み続けねばなるまい。

 問題なのは、トランプ氏が欧州に対する巨額の貿易赤字への不満を安全保障問題に持ち込んでいることだ。「米国は何百億ドルも払って欧州を支援し、貿易では大損している」と、持論を展開した。

 ドイツに対する非難は、とりわけ痛烈だった。海底パイプラインを建設してロシア産の天然ガスを輸入する計画に言及し、「ロシアの捕虜」と言い放った。

 NATOは、自由や民主主義などの価値観を共有する国々による集団安全保障体制だ。根幹を成す相互信頼が、トランプ氏の野放図な言動によって大きく崩れているのは看過できない。

 歴代の米大統領は、NATOを通じた欧州の安定と繁栄が国益にもかなうとして、主導的な役割を果たしてきた。トランプ氏には、その認識が欠けている。

 NATO首脳会議で採択された宣言は、加盟国が武力攻撃を受けた場合、全加盟国への攻撃とみなして反撃する集団的自衛権を「最重要の責務だ」と明記した。

 ロシアによるウクライナ南部クリミアの併合について「法の支配に基づく国際秩序を損なう」と断じ、飛行大隊や戦闘艦などによる即応態勢の向上を打ち出した。

 プーチン露大統領の「力による現状変更」を踏まえ、東欧防衛を強化するのは当然である。16日の米露首脳会談を前に、宣言を通じて、同盟の動揺を最小限に抑えようとしたのだろう。

 トランプ政権は今秋のNATO演習の中止を検討し、駐独米軍の撤収案も浮上しているという。

 ロシアが米欧の分断につけ込み、覇権的な動きを強めることにならないか。警戒が必要だ。

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