九州だけで13事例の線状降水帯が発生 令和2年7月豪雨の降水量の特徴

2020年7月17日(金)13時39分 tenki.jp

2020年7月3日から13日にかけて、九州地方を中心に広い範囲で大雨となりました。この大雨により、九州地方で13事例の線状降水帯が発生し、このうち球磨川氾濫事例では11時間以上継続。球磨川では計画降雨を超過、筑後川では計画降雨と同程度の雨量となりました。また、九州各地の被害発生箇所の多くで、各継続時間雨量または土壌雨量指数のいずれかで既往最大値に匹敵または超過する雨量となりました。

甚大な災害が発生した「令和2年7月豪雨」

2020年7月3日から13日にかけて、暖かく非常に湿った空気が流れ込み、梅雨前線が活発化した影響で、九州北部地方などの広い範囲で大雨となりました。九州では、この期間の総降水量が1000ミリを超える地域もありました。
3日から4日にかけては、球磨川流域に線状降水帯が停滞し、24時間雨量(流域平均)が400ミリを超え、球磨川などで河川の氾濫が発生しました。6日から8日にかけては、九州北部・中部を中心に線状降水帯による大雨となり、48時間雨量が500ミリを超えて、浸水害や土砂災害が発生しました。
気象庁ではこれらの7月3日からの豪雨に対して、「令和2年7月豪雨」と名称を定めました。梅雨前線に伴う大雨への警戒はなお続いています。

九州だけで13事例もの線状降水帯が発生 西日本豪雨時全体での発生数に匹敵

令和2年7月豪雨の期間中の7月3日から11日について、解析雨量(速報版解析雨量)を用いて、特定の条件を満たす線状降水帯を抽出すると、九州地方において13事例の線状降水帯を確認することができました。
球磨川で大規模な洪水氾濫が発生した事例では、球磨川流域に線状降水帯が11時間半にわたって停滞する、異例の長さの継続時間となっていたことがわかりました。
また、筑後川の上流域では、7月6日正午から7月8日正午までの48時間に3事例の線状降水帯が発生していました。
平成30年7月豪雨では、東海以西の広い範囲で15事例の線状降水帯が発生しましたが、今回は九州地方だけで平成30年7月豪雨に匹敵する線状降水帯が確認されました。
■球磨川線状降水帯のようす(動画)
https://youtu.be/JKJyDsF1BWc
■筑後川線状降水帯のようす(動画)
https://youtu.be/tWWxZVKEYp0
※線状降水帯の抽出条件
① 3時間積算降水量が80mm以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2以上)
② その面積が500平方キロメートル以上
③ 上記①の領域内の3時間積算降水量の最大値が100mm以上
抽出後に時空間的な連続性が高いものは同一のものとみなす

球磨川・筑後川では計画降雨を上回る降水量だった

決壊、越水、溢水などの被害のあった球磨川、筑後川について、計画降雨量との比較を行うと、球磨川では、12時間雨量の最大値は361ミリ(横石地点)で、計画降雨の261ミリを大幅に超えていました。この地点での12時間雨量の最大値の期間は7月3日21時から4日9時だったのですが、これは線状降水帯継続期間である3日23時20分から4日10時50分とほぼ一致していることがわかりました。
筑後川では、7月6日〜7日の2日間雨量は554ミリで、計画降雨521ミリと同程度でした。
※計画降雨量:河川整備において、超えることがあってはらない降雨量を設定したもの

広い範囲でこれまでに経験のない大雨が降っていた 「既往最大比」との比較

実際に降った降水量と、その降水量がそれぞれの場所での過去最大の降水量と比較して何割に達するのか、ということを示す「既往最大比」を算出すると、球磨川流域では12時間雨量で既往最大比120%を超えていたことがわかりました。また、九州北部では48時間雨量で既往最大比120%を超えていました。
既往最大比が100%前後に達すると、甚大な災害の発生する可能性が高まるという研究結果もあります。
九州各地の被害発生箇所の多くで、各継続時間雨量または土壌雨量指数のいずれかで既往最大値に匹敵または超過する雨量となっていて、令和2年7月豪雨では、広い範囲でこれまでに経験のない大雨が降ったことがわかります。
今週末も、梅雨前線による雨が予想されています。九州から関東は、前線に近い太平洋側の所々で雨雲がかかりそうです。前線の活動の程度によっては大雨になる可能性もありそうです。これまでの記録的な大雨によって地盤が緩んでいる所もありますので、土砂災害や低い土地の浸水、川の増水に注意が必要です。

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