豊田市・小1男児が熱中症で死亡 エアコン設置が遅れている自治体首長の「残念な発言」

7月21日(土)7時0分 文春オンライン

 日本全国で「酷暑」が続いている。各地で35度以上の猛暑日となった19日は、1日で2600人以上が救急搬送されて10人が死亡した。全国の学校では学校行事の最中に熱中症の症状を訴える子どもが相次ぎ、17日には愛知県豊田市で小学1年生の男児が学校で意識を失い、搬送先の病院で亡くなる痛ましい事故が起こった。



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 急激に進む「酷暑」化の対応に全国の自治体が苦慮している。関連する発言を集めてみた。


太田稔彦 愛知県・豊田市長

「当時はこれで様子を見ようという判断で適切だったが、こういう事態があったので見直す」


朝日新聞デジタル 7月18日


 男児の死亡事故が発生した17日の豊田市内の最高気温は37.3度で、朝から高温注意情報が出されていた。校外活動を終えて「疲れた」と異常を訴えた男児を教室の一角で休ませたが、体調が急速に悪化して20分後に意識を失った。男児がいた教室にはエアコンがなく、4台の扇風機しか設置されていなかった。


 熱中症に詳しい三宅康史・帝京大病院高度救命救急センター長は「子どもは暑い場所に長くいるのはよくない。単に日陰でなく冷房のきいた場所で『質のいい休憩』が必要」と訴えるが(毎日新聞 7月19日)、そもそも学校にエアコンがないのだから「質のいい休憩」は望めない。


 豊田市内の小中学校と特別支援学校計104校には、一部の特別教室を除いて扇風機しかなかった。太田稔彦市長は定例会見で「当時はこれで様子を見ようという判断で適切だったが、こういう事態があったので見直す」と話し、小学校の教室のエアコン設置工事を前倒しで進める方針を決めた。これまでの計画では、小学校は2020、21年度にエアコンの設置を終える予定だったという。


 男児が熱中症で死亡したことを受け、文部科学省は19日までに全国の教育委員会や大学などに、熱中症対策の徹底を要請する事務連絡を出した。文科省は、気象庁や環境省が発表する情報に留意した上で教育活動を実施し、場合によっては中止や延期を検討するよう求めている(共同通信 7月19日)。


 宮城県名取市では18日、校庭で市制60年を記念する人文字の撮影後に38人の児童が熱中症の症状を訴えて病院に搬送された(朝日新聞デジタル 7月18日)。もうこういうくだらない行事はなくなるに違いない。



熊谷俊人 千葉県・千葉市長

「都合の良い理論に飛びつかず、せめて『市民の将来負担が増えても、ここはエアコン』と言って下さい」


ツイッター 7月18日



 名古屋大学准教授の内田良氏が全国の公立小中学校のエアコン設置状況をレポートしている(Yahoo!ニュース個人 7月17日)。文部科学省によると、全国の公立小中学校のエアコン設置率は2017年までに49.6%まで上昇したが、都道府県による格差が大きく、東京都は設置率99.9%なのに対して、愛媛県は5.9%とほとんどの教室にエアコンがない。内田氏は「基本的に学校にはエアコンの設置を前提とすべき」と述べつつ、いくつかの自治体でエアコン設置が進まない背景には財政的な事情があると指摘している。


 千葉県千葉市は171校ある市立の小中学校の普通教室のエアコン設置率が0%である(NHK NEWS WEB・千葉 NEWS WEB 7月18日)。熊谷俊人市長のツイッターには、小中学校の教室にエアコンを設置してほしいという声が数多く寄せられているが、それに対する熊谷氏の回答の一つが上記の言葉だ。とにかくエアコンをつける財源がない、ということだろう。千葉市教育委員会の試算では、エアコン設置に約76億円が必要とされている(朝日新聞デジタル 2014年6月26日)。


 熊谷氏はツイッターで「エアコン整備の必要性は私達も認識しています」としつつ、「学校施設の老朽化に多大な費用を投じている中で、さらにエアコン整備をする場合の財源調達等について市民の将来負担を考え真剣に研究・検討をしています」と回答している。


 一方、豊田市の死亡事故については「例の件はエアコン整備の問題ではなく、各教員の熱中症対策が適切に行われていたかが焦点」とし、別のツイートでは「屋外活動等が児童生徒には存在しており、既にエアコンが導入された自治体においてデータ上有意に熱中症発症率が減少したデータは存在しない」とも述べている。それなら酷暑時の屋外活動はやめればいいのではないだろうか? 日本スポーツ協会の「熱中症予防運動指針」では、暑さ指数が31度以上で「運動は原則中止」とされている(朝日新聞デジタル 7月20日)。


 2014年6月25日、千葉市議会は市立の小中学校などにエアコンの設置を求める請願を不採択としている。請願書は熱中症予防策としてエアコン設置を求めていたが、本会議に先立って請願を審査した12日の教育未来委員会では共産党を除く全会派が反対に回っていた。自民党議員が「環境への適応能力をつけるにはある程度、耐える能力を鍛えることも必要だ」と発言していたことが報じられると、批判が相次いだ(朝日新聞デジタル 2014年6月26日)。


 千葉市ホームページの「市民の声」には「市立小中学校にエアコンを設置してほしい」という要望が寄せられていたが、「現在、落下すると危険な校舎の外壁改修や、毎日使うトイレの洋式化改修等の老朽化対策工事を優先的に実施しております」と回答されている(2017年10月6日)。大阪北部地震では小学校のブロック塀が倒壊して小学4年生の女児が死亡しており、たしかに老朽化した建物を改修することは必須だろう。


 熊谷氏はツイッターで「既に1年前の選挙で共産党の対立候補が多くの市政課題がある中で、エアコン設置を最大課題として提示して選挙が行われ、私が当選しています」とも語っているが、だからといってエアコン設置を後回しにすればいいというわけではない。どちらも小中学生の命にかかわる問題なのだから。



藤本正人 埼玉県・所沢市長

「快適な生活が多くの犠牲で成り立つことを原発事故で知った今、その追求をやめるべきだ。家でも学校でも冷房の中では、子どもの身体機能も弱まる」


朝日新聞 2012年6月24日



 首長の主義主張でエアコン設置が中止になるケースもある。2011年に埼玉県所沢市長に就任した藤本正人氏は、2006年、所沢市が自衛隊機の騒音のために窓を閉めきる市内29校へのエアコン整備計画を決めたが、「東日本大震災を経験し、私たちは便利さや快適さから転換すべきだ」(ハフィントンポスト 2015年4月2日)、「東日本大震災を機に自然と調和した生き方への転換を」(共同通信 2015年2月16日)などとしてエアコン設置工事を中止した。


2015年2月には市立小中学校へのエアコン設置の是非を問う異例の住民投票が行われ、賛成5万6921票、反対3万47票となった。藤本氏は同年4月、投票結果を受けて、最も騒音がひどい地域にある2校のみにエアコンを設置する方針を表明している。それにしても反対する人が所沢市だけで3万人もいることに驚かされる。


 なお、所沢市は今年2月、エアコン設置をめぐる調査費350万円を予算案に盛り込んでいる。大きな方針転換を強いられた藤本氏は会見で「教育イコールエアコンと信じてやまない人たちがいる」と皮肉った(毎日新聞 2月14日)。


「便利さや快適さから転換すべき」と考えるなら、まずは大人が集まる場所から始めるべきだろう。自分の考えで子どもの健康を害するべきではない。


橋下徹 前大阪市長

「これから全国の自治体で、エアコン設置『調査』が流行るだろう。調査や検討は要らない。やるだけだ」


ツイッター 7月20日







 相変わらず煽るのが上手い。



(大山 くまお)

文春オンライン

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