面白政党「れいわ新選組」「N国党」が拓いた、日本政治絶望組を誘う未来

8月1日(木)5時30分 文春オンライン

 ハーメルンの笛吹きみたいな泡沫政党が元気で、ああ、ノイジーマイノリティってこんなに面白かったんだと「れいわ新選組」や「N国党」を見ていて思うんですよね。


 かつて、選挙における泡沫と言えば羽柴誠三秀吉さんが何かが燃えて得られた軍資金を元手に津々浦々の選挙戦に参画しては無事落選し、東京では又吉イエスさんがカルト的な人気を誇る泡沫戦線を守り抜き、一紙入魂の選挙ポスターで異様な存在感を誇った後藤輝樹様はバイトして出馬資金を集めては面妖な選挙戦を繰り広げる。いいですね、泡沫候補、本当にいいですよね。



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 しかしながら、これらの泡沫候補の時代は高度成長が歴史の1ページへと遠ざかるごとに怪奇さを失い、そしてスマイル党党首のマック赤坂さんが泡沫候補常連としてのプライドをかなぐり捨てドクター中松さんに先駆けてついに港区区議選に勝利してしまうと、著名泡沫論争は平成の風景として忘れ去られる運命を辿りました。残念でなりません。もはや千葉ロッテ以外信じられなくなりました。


 今回の選挙でも、歴戦の泡沫・野末陳平さんが東京選挙区で敢然と参院選に立ち向かう事前報道があり泡沫界もほんのり湧き立ちましたが、日本の政治ももう駄目なのかな、政治の舞台を使ったカルト的な表現の場は、もう外山恒一さんのあの伝説の政見放送を最後に冬の時代を迎えるのかなと思ったんです。


泡沫界・冬の時代かと思いきや、颯爽と登場した「N国党」


 そしたら、「NHKから国民を守る党」が颯爽と登場。いやー、かなり頭おかしくて最高ですね。私、大好きですこういうノリ。しかも、政党として丸ごと馬鹿馬鹿しいというのが素晴らしい。いままでは候補者単品で変人が泡沫候補として登場し、創意工夫を凝らした個性的な選挙戦を展開し、そして開票速報では当落線に1ミリも絡むことなく見事落選し、供託金とともに散り、そして伝説を残すのが定番でした。



 しかしながら、そういう点在する泡沫候補が持つ才能の、点と点とを繋いで線を引き、そればかりか墨汁たっぷりの極太の筆で上書きし、泡沫候補が心おきなく公認候補として立候補できる壮大な集金システムの、「政党そのものが泡沫のためにある」という幻想的な一大組織を築き上げてしまったのです。凄い。これは凄いことだと思うよ。


メディアの制約をうまく突いたN国党の戦略


 出てくる候補者は選挙区で全部落選する、それも従来の泡沫候補と変わらず何一つ選挙戦でいいことなく惨敗する。ただ、NHKで、各民放で、選挙速報のサイトで、すべての候補者をきちんと公平に扱うというメディアの制約をうまく突き、過疎化が進んで候補者擁立を絞らざるを得ない地方の一人区で自民党と野党統一候補に並んで「N国党」なるインディー団体の知らない候補者の名前が晒され続けるという凄まじい事態が、ほとんど放送事故のように延々と続けられることになります。固唾を飲んで開票状況を眺める日本の心ある有権者の脳裏に刻まれ続ける、N国党の3文字。もうこれだけで泡沫を愛する心がざわざわと湧き立つんですよ。




N国党的なマインドを持つ有権者が何%かいておかしくない


 最終的に、なんだかんだ大騒ぎした結果として、N国党は党首である立花孝志さんが比例代表で1議席を取って、国会の赤絨毯を踏むことになってしまいました。大変なことだと思うよ。「政治はもっとまじめにやれ」と思っている真面目な有権者は顔真っ赤にして怒ってる事態だと思います。こんなやつが、なぜ政治家に、と。NHKに勤めている友人に「N国党が一議席取りましたが、ねえいまどんな気持ち?」ってFacebookで気軽にメッセージを送ったら、既読スルーされました。まあ、気持ちは分かる。


 でも実際には政治ってものは数の論理であり、有権者に平等に与えられた権利(1票の格差が放置されているのは良くないと思うけど)を行使した結果として議席が配分される仕組みである以上、我が国の国民においてもN国党的なマインドを持つ有権者が何%かいておかしくないということだと思うんですよ。


 読者の皆さんの身の回りにも、政治に興味のない頭のおかしい人たちって一定の割合でいるでしょ。そういう人たちが、自分たちの真の代表を国会に送り込んだ、と考えれば理解できると思います、このヤバさが。国民の既存政党に対する失望感が、日本社会にたゆたうN国党感という情念をもたらした。


 そして、いままでそういうN国党感を抱く国民が、面白おかしく投票する先がなかった。意志を表示する先と言えば、自民党は嫌いだ、従来型の野党に票を投じるのもだるいと思っている以上は、棄権するか泡沫候補に面白半分で投票する以外なかったんでしょう。しかし、いまやN国党がある。そりゃ泡沫候補の総合商社みたいな政党ができたら、既存政党に興味のない有権者は面白半分に票を投じますよね。


面白議員の駆け込み寺



 さらに、1議席確保したという単なる泡沫政党の面白半分で終わらず、さらにN国党としてスキャンダル議員をかき集め政党になろうと頑張って行動しているわけであります。その中心に立花孝志さんがいて、ロシアと戦争したい丸山穂高さんがいて、「忍者」渡辺喜美さんがいる。次々と点と点が繋がり、太い線となり、泡沫界期待の新星、N国党が無党派の失望を胸いっぱいに吸い込んで成長しているのです。 既存政党を追われたスキャンダラスで危ない議員のみんな、どんどん集まれ! 


 まさに政界のゴミ箱のようでありながら、既存の政党では収まらない面白議員の駆け込み寺として、泡沫なりに数の論理を追求し、なりふり構わず政党になってしまえばまた次の選挙でもお金の続く限り泡沫候補を津々浦々に立て、愉快な政見放送をたくさん流し、NHK幹部や職員を顔真っ赤にさせながら中指を立てて浮動票をかき集めるわけです。


N国党、「政党」へ着々勢力拡大 「政治は数」なりふり構わず

https://www.sankei.com/politics/news/190729/plt1907290035-n1.html


 この泡沫出馬のシステム化を果たしたという一点で、開かれた日本の民主主義の形態を力強く示していると思うんですよ。どんな奴が政治参加してもいいのは民主主義の基本だからねしょうがないね。



新しいことをやってくれそうという期待だけで票を集めたれいわ新選組


 一方、れいわ新選組もノイジーマイノリティなりに存在感を発揮し、2議席確保というまあまあの躍進を果たしました。議席増ならそれでいいんですよ。肝心の山本太郎さんは候補としてはリスト3番目でしたから落選しとるわけですけど、どうせ衆議院選挙にどこかの選挙区で出るでしょうから、政党要件を満たしたれいわ新選組の党首として目立っておけばどうにかなるんですよ。


 ぶっちゃけ、来年東京都知事選もありますし、ぜひ山本太郎さんにはご出馬願いたいと思う次第です。自民党が小池百合子さんみたいな緑の狸ではダメだ独自候補で行くぞと対抗馬でも立ててくれれば、東京都民の保守票が割れて俄然山本太郎都知事爆誕の可能性がマキシマムになってきます。凄いことだと思うよ。もうほんとどうにでもなれっていう一向一揆のノリでアベ政治も打破できるんじゃないかという気になります。



 れいわ新選組を支持する人たちの騒がしさの割にはたいして票を伸ばさなかったのは、立てた候補者の数が多くなく、全国比例も特定枠で出た山本太郎さんが山田太郎さんに間違われながらも100万票近く獲得しているという山本さん個人への期待感によるものです。やっぱ城から呂布が出てきてすげー強いけど戦争には負けるってのと似たような感じになっててウケます。


 まさに一騎当千のノリですが、獲得票の中身を見てみるとN国党と同じく政権批判票の中でも既存の政党に投票したくない、新しい風を政治に呼び入れたいと思う有権者の熱量があっての票獲得であり、石戸諭さんも思い切り「左派ポピュリズム」と評してますけど、その通りじゃないですかね。N国党もれいわ新選組も、挙げた公約のどれ一つとして達成できるものはないけれど、なんか新しいことをやってくれそうという有権者の期待感の盛り上がりひとつで泡沫からここまでやってこられたというのは大きい。


前新潟県知事の米山隆一は「中間的な結果」と評価


 ずっとれいわ新選組を見てきた前新潟県知事の米山隆一さんも、論考として「『躍進』はしたけれど、『大躍進』はしそこなった、いわば『停滞』であるとも評価できる中間的な結果であった」と評しています。


山本太郎、れいわ…左派ポピュリズムの衝撃とどう向き合うか?(石戸諭) - Y!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidosatoru/20190722-00135238/


大躍進し損ねた山本太郎・れいわ新選組に必要な事 - 米山隆一|論座

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019072300006.html



 基本的に、れいわ新選組は投票結果と出口調査を見るならばむしろ取った票は共産党に入っていた浮動票が中心であり、東京選挙区から出馬した野原善正さんは元から山本太郎さんに投票していた人の3分の1ぐらいしか票を確保できず、概ね吉良よし子さんや塩村文夏さんに票が流れていってしまいました。


 みんな山本太郎さんが面白いから投票してるんですよね。だから、100万票取れる山本太郎さんがせめて公明党のように比例で600万票以上、議席で8つ9つ取って野党としての実力を示し影響力を出そうとすると、100万票取れる山本太郎から山本九郎ぐらいまで必要になってしまいます。絶対に一つの党の中でまとまらなさそう。



今後の集金システム化、組織化、議員の選抜・育成が肝に


 ここから先は、「泡沫政党として議席確保しました!」というハードルから、一歩進んで政党全体として全得票数の10%を狙うにはどうするか、という戦術の問題になってくるので、俄然ゲームのルールが変わってきます。


 なぜかれいわ新選組は共産党と組んで消費税反対で共闘するようですが、爺さんしか投票しなくなった共産党と、若い人も左派ポピュリズムで集まってくるれいわ新選組とが並び立つと、共産党が勝手に滅んで集金装置が死んでしまうことになります。っていうか、共産党もいったい何年志位和夫さんを書記長にしたまま引っ張るんだよ。山本太郎責任編集で赤旗が配られたりする日が来るんじゃないかと思うとワクワク感が止まりません。どんな先鋭的な主張をして支持者を熱狂させ、またどうでもいい層をドン引きさせてくれるのでしょうか。



 いずれにせよ、れいわ新選組もN国党と同様に泡沫以上の何かを目指して頑張るのは良いとして、どこかで集金のシステム化と、多くの候補者を立てて党運営ができる組織化、そして有力な議員を選抜・育成する仕組みを用意しなければならなくなります。政治がつまらなくなる瞬間ですよね。まさに橋下徹さんが大阪維新を国政政党にしようとして石原慎太郎さんと野合した結果、たいして面白くもない政党になってピークを打ってしまったのと同様、山本太郎はいつまでも山本太郎のままで、立花孝志や森山穂高はすべすべのお肌であり続けて欲しい。インディーだから喜んで支持していたのに、メジャーになってから醒めるファン心理をうまく使っていただけるよう願うのみです。


世の中いろいろと末期的だなと思うわけなんですが


 48%台の低投票率に終わった今回の選挙ですが、政党ごとの得票%で言うならば、結局は安倍晋三総理率いる安倍政権の支持率通りにほぼ与党は得票し、野党は残りの票の中でコップの中の嵐をしていることになります。れいわ新選組が躍進すれば、ほぼ同様に旧民進党や共産党の確保していた浮動票が減っているというだけのゼロサムゲームである以上、やはり野党は一致して「アベ政治を許さない」と言いながら政権支持率を削るしか方法がないんですよね。



 社民党もなんだかんだ2%の得票ラインを維持して政党としてはギリギリ死なず、国民民主党も玉木雄一郎さんが「生まれ変わりました」とかいって憲法改正論議に名乗りを上げたり、まあ世の中いろいろと末期的だなと思うわけなんですが、野党を野党たらしめてきたイデオロギーが死滅しつつあるいま、こういう泡沫政党の奮闘の中から新たな歌声が生まれることを期待してやみません。


 たとえそれが、ハーメルンの笛の音色みたいなものだったとしても。



(山本 一郎)

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