宮古島ルポ 自衛隊ミサイル基地に抗う島人たちの本音

8月12日(日)20時0分 週刊女性PRIME

宮古島で進む軍事配備の状況

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 沖縄本島から南へ約290キロ。透き通った「宮古ブルー」の海が広がる宮古島は、南西諸島の南西部、先島諸島にある。

 人口5万2000人の美しい島はいま、国策に揺れている。陸上自衛隊のミサイル基地建設が進められているのだ。700人〜800人の隊員が配置され、地対艦・地対空ミサイルを配備するほか、弾薬庫などの施設、射撃訓練場などが設置される計画だ。



 宮古島市の医師、岸本邦弘さんは沖縄戦の戦跡めぐりから帰宅した翌日、この陸自配備計画の存在を地元紙の報道で知った。2015年5月のことだ。

「中国や台湾からの観光客が多く訪れ、大型クルーズ船が毎日のように停泊している。これで脅威があると言えるのでしょうか? 危険と思うなら島民みずから助けてほしいと言いますよ」(岸本さん)

 昨年11月20日、防衛省沖縄防衛局は基地建設の工事に着手した。元ゴルフ場だった『千代田カントリークラブ』跡地にはフェンスが張りめぐらされ、ひっきりなしにトラックが行き交う。

 朝8時30分。台風一過の強い日差しが照り付けるなか、基地建設予定地のゲート前には4人の女性がいた。抗議活動を行っている住民たちだ。

「1時間に12〜13台のトラックがゲートに入っていく。先日は18台の生コン車が入っていくのを見ました。作業員のおじさんも、こんな急ぎの工事は見たことがないと言って不思議がっていますよ」

 とは、上原百合子さん(仮名)。来島して今年で23年。自然豊かな環境に惹かれて移住した上原さんに、島のおばあさんたちは、伝統織物の技術を快く教えてくれた。こんな言葉を付け加えながら。

「戦争のとき、日本軍が来て大変だった、と。覚えておいてねと言って戦争体験を話してくれました」

 基地ができたら、島を離れることも考えていると話す。

「どんな戦争につながることにも加担したくない」

 そう話す清水早子さんは、『ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会』の事務局長を務める。平日は8時からゲート前に立ち、また土曜日は市役所前でも抗議活動を行う。

「すでに航空自衛隊のレーダー基地があり、海上保安庁の射撃訓練場も作られる予定。軍事利用が懸念される衛星を使った測位システムの管理局も完成しています。宮古島が軍事要塞化されていくのを止めたいんです」(清水さん)

 抗議する女性たちに話を聞いていたそのとき、軽トラックの運転席から怒鳴る、男性の声が聞こえてきた。

「中国が攻めて来たら自衛隊が守ってくれるのに、なんで反対するんだ!」

 聞けば、男性もまた住民だという。隣国の脅威を理由に軍拡を求めるのは男性ばかりではない。防衛省は「安全保障環境が厳しさを増している」として、宮古島への自衛隊配備の必要性を説いている。

「抑止力のひと言でなんでも説明しようとしている」

 自身の畑が基地建設予定地のすぐそばにある、メロン農家の仲里成繁さんが言う。

「市長は1度も住民と面談していない。800人もの隊員が来ると人口構成が変わり、行政にも影響が出る。賛成と反対で住民同士が分断される事態も出てくるのでは?」

 と仲里さん。自衛隊そのものに反対なのではない。他国への攻撃力をもつミサイル基地によって、「ふるさとが戦争ゲームに加担させられるのがいちばん嫌!」と嘆く。仲里さんの暮らす野原地区は当初、区として自衛隊配備に反対する決議を出していたが、今年に入り撤回している。

「内心は嫌でも、着工してしまったからとあきらめている人が多い。受け入れて配慮を引き出そう、と。基地にはかかわりたくないというのが島民の本音だと思う」(仲里さん)



■「’15年の安保法成立が大きい」



 生活に直結する重大事に検証を尽くすことなく、専門家の訴えを無視する形で、基地建設工事は進められている。

 とりわけ問題なのが地下水だ。宮古島は飲料水のすべてを地下水に依存している。島全体が琉球石灰岩でできていて、土壌は浅く保水力がない。雨の半分が地下に流れ込み、地下水として保存されるという特殊な地形を持つ。

「ひとたび汚染されたら回復できないと言われています」

 と清水さんは危惧(きぐ)する。そのため市は地下水保全条例を定めており、影響を及ぼすおそれがあれば、地下水審議会にかけなければならない。

 その審議会の学術委員らが、市民主催のシンポジウムで驚くべき事態を暴露した。

「水質を汚染するおそれがあるとして配備反対とした結論を、市長は市民に隠し、改ざんまで迫っていたことが発覚したのです」(清水さん)

 仮に地下水の流域外であったとしても影響を受けやすく、汚染リスクがあることから基地建設には適さないと学術委員は指摘する。活断層の密集地があり、大地震や津波のおそれもあるという。

 懸念はまだある。弾薬庫の建設予定地である保良鉱山から民家までは、最短200メートルの距離しかない。

 ミサイル基地建設に反対する『てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会』共同代表の楚南有香子さんは、弾薬庫の安全性について、実証実験を行っていないとの回答を防衛省から引き出した。

「火薬類一般のデータではなく、きちんと実証実験を行ってから安全だとする根拠を示すべきでしょう。オスプレイ配備についても、防衛省は、“恒常的に離着陸する予定はない”と含みのある言い方をしていた。では、緊急時や恒常的ではない頻度で運用されるおそれはあるのか。とうてい説明責任を果たしているとは言えません」(楚南さん)

 基地配備が進むのは宮古島だけではない。7月17日には石垣島でも陸自部隊の受け入れを発表。【図】のような基地配備や軍備増強が先島諸島で進められている。一帯を「防人の島」に塗り替えていくかのようだ。



 軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、「’15年の安保法成立が大きい。日米の軍事一体化が進み、専守防衛の枠を逸脱するような軍拡に走っている」と指摘する。また、尖閣諸島が国有化されてからは、日本列島と南西諸島を防波堤にして中国を封じ込めるアメリカの軍事戦略『エア・シー・バトル構想』もあり、南方重視に変わったと話す。

「北朝鮮の脅威が使えなくなり、相対的に中国の脅威が前景に出てきていますが、領空侵犯や領海侵犯が増えているわけでもありません。脅威をあおるほど、むしろ緊張を高め危険にさらすことになります」(前田さん)

取材・文・撮影/本誌「基地と戦争」取材

※週刊女性2018年8月14日号(7月31日発売)より転載

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