就活解禁でも「レベルの高い学生が全然いない」 ある大手企業人事部のため息——2019上半期BEST5

8月16日(金)11時0分 文春オンライン


2019年上半期(1月〜6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ビジネス部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年3月9日)。



*  *  *


 あなたは、次の就活生の質問をどう評価するだろうか。


質問(1)「御社の年間休日は何日ですか?」

質問(2)「TOEICは何点取っていれば大丈夫ですか?」

質問(3)「もし面接で、御社とライバル企業の違いを聞かれたら、私は何と答えるべきですか?」


 これは就活解禁日、3月1日の大型合同企業説明会(幕張メッセ)で、就活生が人気企業A社へ質問した実例だ。


 ちなみに就活解禁日とは、経団連による就活ルール「採用選考に関する指針」に決められた、会社説明会などが解禁される3月1日のこと。例年この日から、一気に意欲の高まった就活生たちで会場はヒートアップし、入場制限がかかることもあった。



就活解禁日の3月1日に幕張メッセで開かれた合同会社説明会 ©共同通信社


「まるで消化試合の雰囲気だった」


 ところが今年は様相が違う。まず来場する就活生が昨年より少ない。


「今年は解禁日という感覚がなかった。まるで消化試合のような雰囲気だった」


 私の知人のB社人事はこう嘆いた。そしてこれらの質問である。もちろん、これらは就活生にとって大切な質問だ。しかし人事の前で聞いたら不利になるし、立場上、人事は本音を伝えられない。それをわかっている用意周到な就活生はOBOGに聞き、人事には聞かない。それがいわば“就活の常識”だ。 


 このA社ブースを訪問した、意欲の高い私の知人学生はこう感想をもらした。


「質問の半分ほどは、このようにレベルが低いか、非常識な質問でした。びっくりしました」


 どうやら会場の半分ほどは意識の低い学生で占められていたようだ。これには人事も驚いたことだろう。



冒頭の「3つの質問」はなぜダメなのか


 さて冒頭の質問だが、就活生が聞くと、人事は次のように考えることがほとんどだ。


質問(1)「御社の年間休日は何日ですか?」→仕事の中身より先に、休むことばかり考えている。仕事のやる気はあるのだろうか?

質問(2)「TOEICは何点取っていれば大丈夫ですか?」→TOEICの目標点数はサイトに出ているのに、事前に見てないんだな……。

質問(3)「面接で、御社とライバル企業の違いを聞かれたら、私は何と答えるべきですか?」→なぜ、それを教えてもらえると思うのだろう? 自分自身でリサーチし、考えるべきことでしょう。


 つまり、このような質問をすること自体、逆アピールになってしまう。それに気づかないことが残念である。


就活解禁日なのに、学生の意識が低い理由


 前述のように、例年なら就活解禁日には意欲が高い学生が多かったが、今年はそうではない。その理由を考える上で、B社の人事のコメントが参考になる。


「大学3年生向けに、昨年6月にインターンシップ合説(合同企業説明会)に参加しました。そこでは、優秀な学生が多数でした。その後の10月では普通の学生が増え、1月になったら意識の低い学生が多数になってしまいました。来年度は、遅い時期の合説の参加をやめるかもしれません」


 つまり優秀な学生ほど動きが早く、インターンシップ(就労体験)で企業と接触し、水面下で選考が始まり、一部はすでに内定を得ている。あるいは面接が始まっており、就活解禁後の合説には来なくなる。ゆえに3月1日の時点で意識の低い学生ばかりが目立ってしまったのだ。


 またこの数年、インターンシップに参加する学生が増加し続けていることも、夏から冬にかけて全体のレベル感が下がっていく要因の一つだろう。



解禁1ヶ月前の段階で、40%の就活生が選考を受けている


 この傾向はデータでも確認できる。


「キャリタス就活 2020 学生モニター調査結果」(2018 年12 月)によれば、大学3年の11月下旬の時点で「自分の中ですでに就職活動は始まっている」と回答した学生はなんと85.8%だ。始まった時期は「3年生の6月」という回答が多い。


 つまり実質的に就活は昨年6月から始まっていたのだ。すでに半年以上経っていることを考えれば、消化試合の雰囲気になるのも自然な流れだ。


 また19年2月の同調査では、2月1日時点で「本選考を受けた」学生は39.9%であり、「内定を得た」学生は8.1%(前年同期4.6%)と昨年比で倍増している。就活解禁の1ヶ月前の段階で、4割の就活生が面接などの選考を受けており、8%は内定を得ているのだ。3月1日解禁という就活ルールはすでに形骸化していることがわかる。



経団連の就活ルール廃止で「もう何でもありだ」


 今年、就活がここまで前倒しされたのは理由がある。昨年9月、経団連の中西宏明会長が就活ルール廃止の意向を示し大きな話題になった(私もニュースサイトやBS番組など、複数メディアで批判的なコメントをした)。


 この就活ルール廃止は来年度(2021年3月卒)から適用されるが、人事の多くは「1年早く、今年(20年卒)から前倒ししてもいいだろう。もう何でもありだ」と認識したと私は推測する。


 就活ルール廃止後も、大学3年の3月1日解禁〜大学4年の6月1日選考開始という従来通りのスケジュールが、経団連に代わり政府により設定されるが、罰則もなく形骸化するとみられる。


新3年生は今年の秋から冬にかけて内定が出る?


 想像以上に厳しい解禁日の就活生を見て、多くの人事は次のような感想を抱いている。


「ここまでレベルが下がるとは思っていなかった。困った」

「3月1日からの採用活動スタートでは優秀な学生は絶対に採用できない。大学3年向けの夏期インターンシップから早期選考するしかない」

「早ければ早いほど優秀な学生と会える」


 そして、間接的ではあるが信頼できる筋から私は次のような情報を得た。


「例年、3年向けにリクナビなどの就職ナビがインターンシップ用に6月1日にプレサイトをオープンしますね。ある大手金融では、今年の母集団形成が難しかったことから、その日を待てないそうです。いち早く今年の5月から自社サイトで独自に応募受付を始める事を検討しています。そのための準備も始めたみたいですよ」


 今年は大手企業ですら大胆な行動に出るかもしれない。就活ルール廃止の初年度となる、新3年生(21年卒)向けのインターンシップは今年の夏から始まる。それをきっかけとして堂々と選考が行われ、3年の秋から冬にかけて内定が出るのではないか。私はそう予測する。


 今まで、このような早期選考は外資系企業や一部ベンチャー企業がおこなっていたが、日本の大手企業も追随するだろう。大手は、GAFAや戦略コンサル、外資系投資銀行に優秀な人材を奪われてきた。それだけ現場の人事の危機感は強いのだ。



(福島 直樹)

文春オンライン

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