「日本の地図を作っているのは俺たちだ!」 グーグルマップ混乱でわかった「ゼンリン」の底力——2019上半期BEST5

8月16日(金)5時30分 文春オンライン


2019年上半期(1月〜6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ビジネス部門の第5位は、こちら!(初公開日 2019年4月20日)。



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スマホの定番アプリ


「我が家が消えている!」


「どうしてここに道路があるの?」


 3月下旬から「グーグルマップ」にトラブルが次々生じ、ネット上でパニックが起きた。その原因は、グーグルに地図データを提供していた「ゼンリン」との契約変更にあったとの見方が強まっている。知られざるゼンリンの底力とは。


◆◆◆


 グーグルマップをめぐるトラブルについてIT担当記者が解説する。


「3月21日の夜から、ネット上で『グーグルマップがおかしい』という声が上がり始めました。存在するはずの道路や建物が消滅していたり、有り得ない場所に湖が出現したりしていました。



 グーグルは日本で地図サービスをスタートした05年から、ゼンリンのデータ提供を受けてきた。しかし3月6日、グーグルは『最新の機械学習技術などを活用し、新しい地図を開発した』と発表。現在のグーグルマップには、それまであったゼンリンのコピーライト表記が消えています」


 ゼンリンは北九州市に本店を置く1948年創業の老舗地図メーカーだ。全国の住宅地図を網羅し、グーグルのほかマイクロソフトやヤフーなどにも地図データを提供。グーグルの“新しい地図”が多くの不具合を起こしたことで、ゼンリン地図の正確性を賞賛する声が沸き上がっているのだ。


 地図専門店「ぶよお堂」の峰村和孝さんが語る。


「ゼンリンの正確性は随一です。警察、消防、法務局などがゼンリンの地図を使用しているのが何よりの証拠です。また災害時の対応や救急車の出動にも欠かせない存在となっています」


 ゼンリン地図の正確性の秘密はどこにあるのか。



毎日6時間以上歩いて地図を書いている


「足を使っていない企業にゼンリンが負けるわけありません」と自信満々に語るのは、元ゼンリン社員だ。



「ゼンリンでは数年に一度、地図の改訂を行ないます。その改訂にむけて、毎日、全国に約1000人いる調査員が一軒、一軒、6時間以上、歩いて地図を書いているのです。山の中でもそこに道があれば歩いて行きます。日本は狭い道が多いのですが、『両手が広げられる』という条件を満たしていれば、歩道としてカウントし、地図に記入します。都心では構内調査というのがあり、地下鉄駅内の経路も調べ上げる。そうした作業を繰り返すことで地図の正確性を維持し続けるのです」


 地味な上に、体力勝負の仕事だという。


「表札の掲載をめぐって、住民と警察沙汰になることも少なくありません。正直、給与はかなり低く、割に合いませんが、それでも続けられるのは、『日本の地図を作っているのは俺たちだ!』という自負があるからです」(同前)


 グーグルに取材を申し込むと、次のように回答した。


「ユーザーの皆様にはご不便をおかけしておりますことをお詫び致します。個別の契約やデータプロバイダについてはコメントしておりません」


 ゼンリンの広報担当者は「今後も変わらず、正確な地図を作っていくだけです」と言葉少なに答えるのみ。


“4000万歩の男”伊能忠敬も喜んでいるはずだ。



(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年4月11日号)

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