全国で戦没者慰霊碑743基が倒壊、ひび 遺族の高齢化などで多くが放置

8月16日(金)19時37分 毎日新聞

熊本県甲佐町にある戦没者慰霊碑は熊本地震以来、3年以上倒れたままになっている=同町津志田で2019年8月11日午後2時27分、平川昌範撮影

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 民間が建立した戦没者慰霊碑の状況を厚生労働省が調べたところ、倒壊していたり、ひびが入っていたりと維持管理に問題がある慰霊碑が全国に743基あることが判明した。各地に点在する慰霊碑を対象にした大規模調査で、管理していた遺族の高齢化などで多くの慰霊碑が放置されている実態が浮かび上がった。厚労省は、移設や埋設する場合の補助制度を設けており、今年度から対象を拡大して制度利用を促している。


 調査は自治体が昨年10〜12月に実施。太平洋戦争に限らず過去に戦没した軍人・軍属を慰霊する民間建立の慰霊碑で「忠霊塔」「忠魂碑」「招魂塚」などの名称は問わず対象とした。


 厚労省が結果をまとめたところ、全国に少なくとも1万6091基の慰霊碑があり、このうち状態や維持管理が「おおむね良好」と判断されたのは85%の1万3705基あった。


 一方で、碑にひびが入っているなど状態が「やや不良」が526基、既に倒壊しているなど「不良」と判別したのが217基あり、維持管理に問題がある慰霊碑は計743基に上った。資料で所在は把握できたが現地調査できなかったなど「不明」とされたものは1643基あった。


 厚労省は16年度から、建立者や管理者が不明で適切に維持管理されておらず、倒壊の危険などがある慰霊碑を対象に、移設もしくは土中に埋設する場合の費用の半分(上限25万円)の補助を始めた。しかし、利用は18年度までに6件で、目標としていた計173件の3%にとどまった。


 管理してきた地元遺族会などの高齢化を背景に維持管理できなくなっている事例があるため、厚労省は今年度から、建立者や管理者は判明しているが事実上管理できない場合も対象に加え、補助の上限を50万円に倍増した。しかし、ある自治体の担当者は「移設には移設先の確保が必要で、埋設は遺族が納得しなければできない。いずれもハードルは高い」と漏らす。


 厚労省は「743基が多いか少ないかは評価が難しいが、倒壊による事故防止の観点などから対策を進めていく」としている。


 中京大の檜山幸夫名誉教授(日本近代史)は「慰霊碑は戦争の歴史を刻む重要な史料で、国や自治体が積極的に維持管理すべきだ」と話している。【平川昌範】

毎日新聞

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