戦後74年 記憶を風化させない努力を

8月16日(金)5時0分 読売新聞

 日本の平和と安全は、戦後の努力の積み重ねの上にあることに、改めて思いを致したい。

 政府主催の全国戦没者追悼式が、天皇、皇后両陛下をお迎えして開かれた。

 天皇陛下はお言葉で、「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願う」と述べられた。

 「深い反省」という表現は、戦後70年の追悼式で上皇さまが初めて用いられた。天皇陛下は、令和の時代となっても、戦争を知る世代である上皇さまの思いを引き継がれる考えなのだろう。

 戦後74年を迎え、遺族の高齢化が進んでいる。式典の参列者のうち、戦後生まれが初めて3割を超えた。政府は式典で、小学生らが献花者に花を手渡す方式を導入している。平和への志を若い世代に継承する狙いがある。

 各地で、戦没者を慰霊する遺族会の会員が減少し、組織の解散が相次いでいる。戦争体験者の手記の出版など、記憶を風化させず、慰霊の心を引き継ぐ取り組みを続けていくことが大切だ。

 日本が独立を回復したのは、1952年に発効したサンフランシスコ講和条約に基づく。

 外務省創設150年を記念し、外交史料館で特別展示が開かれている。講和条約締結時の吉田茂首相の演説文が展示されている。

 巻紙に記した演説は、世界の平和と繁栄に貢献する考えを訴えた長文で、欧米からトイレットペーパーのようだ、と揶揄やゆされた。

 その後、日本は政府開発援助で途上国を支援し、自衛隊は海外で人道復興支援にあたってきた。世界に貢献する平和国家としての歩みを続けなければならない。

 講和条約では、韓国の政府や国民の日本に対する請求権は協定で処理できると定められた。日韓請求権・経済協力協定の根拠だ。

 協定は、請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記し、日本は韓国に5億ドルの経済協力を行った。韓国人元徴用工が日本企業に損害賠償を求めた問題は、協定によって決着している。

 戦後積み残された懸案の解決は、今なお道半ばにある。

 北方領土は、ロシアによる不法占拠が続く。過去の多くの政権と同様、安倍内閣の領土交渉も難航している。地道に協議を重ね、粘り強くロシアの譲歩を促していくことが求められる。

 戦地に眠る遺骨の収集は、国の責務だ。政府は2025年3月までを集中実施期間と定める。着実に収集を進めねばならない。

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