文在寅「放射能カード」は第2の慰安婦問題になる!

8月25日(日)19時50分 文春オンライン

「不当な経済報復に相応の措置を断固取る。真っ向対応する方法がある。日本も大被害を甘受せねばならない」


 日本政府が韓国を「ホワイト国」リストから除外する措置を閣議決定した8月2日、韓国の文在寅大統領はこのように語って、怒りを露わにした。


 いま、その報復が次々と形になりつつある。


 韓国の「ホワイト国」リストから日本を除外したことをはじめ、すでに韓国政府が打ち出してきた「経済措置」は、日本が輸出管理厳格化で打ち出した措置の数を上回っている。そして、韓国政府関係者さえも「そこまでやるのか」と驚いていた日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定。8月25日には、韓国海軍が竹島での軍事訓練を始めた。


 だが、さらにもう1つ、文大統領の言う「真っ向対応する方法」の中心になりつつある政策がある。それが福島第一原発をめぐる「放射能カード」だ。



「光復節」式典で演説する文在寅大統領 ©共同通信社


文在寅が始めた「放射能問題狙い撃ち」


 福島第一原発の問題について、韓国政府が8月に取った措置や動きを振り返ってみよう。 


8日 ほぼ全量を日本から輸入する石炭灰の放射性物質の検査強化を発表


13日 韓国外務省が福島第1原発の処理水の情報公開を日本に求め、「国際機関や(処理水放出で)被害を受ける可能性がある国と緊密に協力する」との方針を表明


16日 韓国環境省が日本からの廃プラスチックなどリサイクル用廃棄物を輸入する際、放射性物質と重金属の検査を強化することを発表


19日 韓国外務省の権世重・気候環境科学外交局長が在韓国日本大使館の西永知史公使を呼び、福島第1原発の放射性物質を含む処理水に関して、海洋放出計画の有無の事実関係確認や今後の処理計画などについて、日本政府の公式回答を要求


20日 東京都内での東京五輪関連の会議「選手団団長セミナー」に出席した韓国オリンピック委員会代表者が、福島産の食材の安全性について懸念を表明


21日 韓国食品医薬品安全庁が日本産の一部の加工食品や農産物など計17品目に対する放射性物質の検査について、23日からサンプル量と検査回数を2倍に強化すると発表


 韓国はこのように立て続けに、福島第1原発の放射能問題に関与し始めているのだ。



テレビでも東京五輪と放射能を結びつけて特集


 韓国政府は2011年の福島第1原発の事故を受け、福島など8県産の水産物の輸入禁止措置を続けており、その他の日本産食品についても、輸入のたびに放射性物質の精密検査をしている。


 そのプロセスで問題が起きたわけでもないのに、なぜ今ごろになって原発問題にかかわる問題を持ち出すのか。日本への報復であることは明白だ。


 8月19日には、韓国外務省の権局長が、在日本大使館の西永公使にこう伝えたという。


「汚染水処理の結果が両国民の健康と安全、さらに海でつながる国全体に与える影響を非常に重く認識している」


「汚染水放出に対する報道や国際環境団体の主張に関し、事実関係確認や今後の処理計画などについて日本政府の公式回答を要請する」


「国際社会にも計画や対策をより透明で具体的に説明するように」


 まるで命令のような内容なのだ。



 韓国メディアも、文政権の動きに連動して、この問題を執拗に報じている。東日本大震災からの復興に努力してきた日本国民を刺激する内容で、もはや悪質な嫌がらせのレベルだ。


 8月23日夜の韓国SBSテレビのニュースでは、来年の東京オリンピックと放射能問題を結びつけて特集し、キャスターや記者の口からは次のようなコメントが飛び交った。


「聖火が福島県のナショナルトレーニングセンター、Jヴィレッジでスタートする」


「子供の健康に害はないでしょうか」


「食品に問題は?」


 韓国の国民の不安を十分にあおる内容だった。放射能汚染への不安をかき立て、韓国のお茶の間と思いを共にする。こうした放射能問題を使用した日本叩きに、日本への優越感や快感を覚えているかのようだった。



「歴史カード」も「放射能カード」も韓国は被害者?


 韓国政府は、なぜいま放射能問題をくどいほど持ち出すのか。それは、この問題が「日本の弱み」だと認識しているからだ。原発や放射能の問題を持ち出せば、日本は反論してこない。韓国はそこを突くことに力を注いでいる。「韓国国民は放射能問題の被害者なのだ」と訴えることで、黙り込む日本に対して自らを優越した立場に置くことができると考えているのだろう。


 実際に韓国のテレビは、権局長からの苦言を西永公使が困ったような表情で聞いている様子を、殊更に何度も放映していた。日本政府関係者によると、日本は韓国から要求があった放射能問題に関係する情報は逐次伝えているが、日本側が対応しているその事実すら認めようとしないという。


 この放射能問題をちらつかせる韓国の手法は、何かと似ていないだろうか。慰安婦や徴用工などの歴史問題である。これらの歴史問題では「人権」を盾に、日本との合意や協定で解決済みの問題であるにもかかわらず、文在寅大統領自ら「解決していない」と蒸し返し続けている。



 放射能問題では「韓国国民の不安と健康と安全」を掲げている。「歴史カード」も「放射能カード」も“韓国が被害を受けた”と強調する。


 GSOMIAの破棄は日本だけでなく、韓国側にもデメリットがある。だが、福島の放射能問題は韓国にとって、ひたすら日本を従わせることができる好材料なのだ。韓国は「放射能カード」にうま味を感じ始めている。



朴槿恵「告げ口外交」の再来


 慰安婦問題の時と同じく、韓国は日本の放射能問題を国際社会に訴え、拡散しようとしている。韓国外務省は「国際機関や被害を受ける可能性がある国との緊密な協力」を方針に掲げている。早い話が、慰安婦問題で見せた「告げ口外交」の再来である。


 東京都で8月20日に行われた東京五輪の選手団団長セミナーでは、韓国オリンピック委員会代表者が、福島産の食材の安全性について懸念を表明。関連会議に先立ち、韓国は東京大会組織委員会に、福島第1原発事故の影響を念頭に、食の安全や選手の健康を懸念する事前通知を送付した。そこには、「選手村の建築木材に放射能汚染の影響はないのか」などの内容が盛り込まれていたという。



 韓国は、他国のオリンピック委員会に対しても、放射能汚染に伴う食の安全性への懸念などについて、賛同を求めたが、支持は広がらなかった。韓国は国際オリンピック委員会(IOC)に対して、客観的かつ専門的な国際機関に依頼し、放射能の安全性に対する信頼できる情報を提供するよう求めるつもりだったというが、今回はそのもくろみは頓挫した。


 ただ、この程度で諦めないのが韓国だ。文大統領は、東京五輪に北朝鮮と共に参加し、朝鮮半島の平和をアピールしたいようだ。その一方で、五輪閉幕まで、日本へ「放射能カード」を切り続ける可能性は否定できない。



(名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)/週刊文春)

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