安倍首相が『西郷どん』を利用してNHKとコラボの総裁選出馬表明! 浅薄な明治礼賛と茶番の改憲隠しも

8月28日(火)7時0分 LITERA

安倍晋三公式サイトより

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 またも安倍首相がとんだ茶番を打った。昨日、視察で訪れていた鹿児島県で「あと3年、自由民主党総裁として、内閣総理大臣として、日本のかじ取りを担う決意であります」と述べて正式に自民党総裁選への出馬を表明した件だ。


 そもそも安倍首相は、7月の豪雨災害の最中に「赤坂自民亭」に参加したり、無派閥議員を首相公邸に集めた"極秘会合"をおこなうなど、災害対応そっちのけで総裁選に向けた根回しに全力をあげてきた。なのに、正式な出馬表明を引っ張り倒してきたのは、対抗馬である石破茂・元幹事長との討論から逃げるためだと言われてきた。挙げ句、その出馬表明も東京ではなく地方を選択。これも、記者が大勢集める東京で不都合な質問が飛んでくることを避けたとしか考えられない。


 そんななか、鹿児島を選んだのには理由がある。鹿児島は石原派(近未来政治研究会)の森山裕国対委員長のお膝元だからだ。


 石原派は最高顧問である山崎拓・元副総裁が反安倍・石破氏支持を打ち出していたが、これを安倍首相支持に転換させるのに尽力したのが森山国対委員長だったという。実際、今回の安倍首相の鹿児島視察には森山国対委員長も同行、森山国対委員長の国政報告会にも安倍首相が出席した。


 さらに、露骨だったのは、出馬表明する安倍首相の背景に、鹿児島を象徴する桜島がドーンと映し出されたことだろう。現在放送中のNHK大河ドラマ『西郷どん』を意識していたことはミエミエで、その上、同夜に放送された回は「薩長同盟」が締結されるというストーリーだった。


 もちろん、安倍首相もこのことを織り込み済み。安倍首相は鹿児島での会合で、「ちょうど今晩のNHK大河ドラマ『西郷どん』(のテーマ)は『薩長同盟』だ。しっかり薩長で力を合わせ、新たな時代を切り開いていきたい」(産経ニュースより)と講演していた。


 まさか、この「薩長同盟」回の放送にあわせて出馬表明したとは思えないが、『西郷どん』人気を利用しようとしたことは間違いなく、事実、安倍首相は今年の年頭所感でも〈本年は、明治維新から150年の節目の年です〉と打ち出し、明治時代の日本を手放しで称賛、なんと明治の精神をこれからのモデルにしようと国民に呼びかけている。ようするに、『西郷どん』人気に便乗し、「明治=大日本帝国を取り戻す」という戦前回帰志向を"改革に邁進するリーダー"に置き換えて印象づけようとしたのだろう。


 こうした安倍首相の姑息な目論見に対しては、作家の島田雅彦氏も〈西郷どんにあやかるつもりなら、政争に敗れ、下野し、日本最後の内戦を引き起こし、自決という結末になります〉と的確なツッコミをツイートしていたが、ともかく、美化された明治維新プロパガンダを総裁選でもおこなうとは、まったく呆れてものが言えない。


 だが、この出馬表明が「茶番」だった理由は、これだけではない。その出馬理由もまた、ツッコミどころ満載の大嘘ばかりだったからだ。


「『日本を取り戻す』。この志のもと、党一丸となってこの5年8カ月、内政、外交に全力を尽くして参りました」
「誰にも働く場所がある、まっとうな経済を取り戻し、外交においては日本の大きな存在感を取り戻すことができました」
「(2020年には)東京五輪・パラリンピックが開催されます。まさに日本は大きな歴史の転換点を迎える。いまこそ日本の明日を切り開くときです。平成のその先の時代に向けて、新たな国づくりを進めていく。その先頭に立つ決意であります」


●「誰にも働く場所がある」「外交で大きな存在感」、嘘だらけの出馬表明


「日本を取り戻すために全力を尽くした」って、その実態は「アメリカへの従属、お友だちへの優遇に尽力した」ではないか。だいたい、この約6年間に安倍首相がやったことといえば、権力にものを言わせてメディアや官僚を掌握し、安保法制や共謀罪、カジノ法など国民の多くが説明不足を理由に反対するなかで強行採決を連発したり公文書改ざんや自衛隊日報を隠蔽したり、国民への背信行為ばかり。


 しかも、「誰にも働く場所がある、まっとうな経済」などと言うが、有効求人倍率の上昇は生産年齢人口が激減しているのだから当然の話だ。それどころか、非正規雇用は増加の一途を辿り、実質賃金は低迷する一方で、現実は「格差と貧困を拡大させる経済」「大企業と富裕層のための経済」ではないか。


 笑わせるのは「外交」だ。「日本の大きな存在感を取り戻すことができた」などと言うが、トランプとプーチンからは金をむしられてばかりの言いなり状態。北朝鮮問題も日朝首脳会談の開催は目処が立たず、拉致被害者の帰国にはほど遠い。「存在感」などゼロに等しいのが実態だ。


 それが、約6年も総理大臣をやっておいて「新たな国づくりを進めていく」などと言い出すとは......。逆に言えば、約6年間の「無能さ」を認めているようなものだろう。


 しかし、この総裁選出馬表明のなかでもっとも注目すべきは、憲法改正についてだ。じつは安倍首相、出馬表明では一度も改憲にふれていないのである。


 安倍首相は今月12日、地元・山口県下関市でおこなわれた長州「正論」懇話会での講演で、「自民党としての憲法改正案を次の国会に提出できるよう、取りまとめを加速すべきだ」と述べ、秋の臨時国会に憲法改正案を提出する考えを示したばかり。これはあきらかに、「9条については国民の深い議論が必要」と慎重な姿勢を見せている石破氏を意識しての発言だった。なのに一転、安倍首相は出馬表明で改憲には一言もふれなかったのだ。


●麻生派に「来年夏前に改憲の国民投票を」と提案させる茶番


 だが、もちろん安倍首相は改憲を引っ込めたわけではない。


 事実、本日おこなわれた自民党福井県連の会合で、安倍首相は「憲法改正に取り組むときが来ました」、「違憲論争に終止符を打とうではありませんか」と講演している。


 NHKの生放送で流れた出馬表明では憲法のケすら口にしなかったのに、翌日には改憲を自己アピールに使う──。共同通信社が25・26日に実施した世論調査でも、秋の臨時国会で改憲案を提出したいという安倍首相の意向は「反対」が49%にのぼる一方「賛成」が36.7%にとどまっているが、ようするに、安倍首相は国民向けには「新しい国づくり」などのフレーズで改憲を隠し、自民党内部では改憲を総裁選の争点にするというお得意の"二枚舌"を使っているのだ。


 さらに注意すべきは、本日午前におこなわれた自民党麻生派の議員らと面談だ。そこでは、麻生派顧問の甘利明・元経済再生担当相が〈来年夏の参院選前に憲法改正の国民投票を実施する〉などの政策提言書を手渡している。これに対し、安倍首相は「基本的な考え方は全く同じだ」と応じたという(時事通信より)。


 2020年に憲法改正するというのは、安倍首相が昨年の憲法記念日に打ち出したプランであり、「東京五輪開催の年に自分が歴史に名を残す」という私的欲望に基づいたものだ。そのためには、なんとしても来年の夏までに国民投票を実施する必要がある。だが、改憲を急げば、石破氏をはじめ、国民からも「自分の悲願のために改憲をするのか」「急ぐ必要はない」という批判があがるのは目に見えている。つまり、"党内から要望を受けた"という既成事実をつくることで、そうした批判をシャットアウトしようとしているのである。


 まったく姑息にも程があるが、正式に出馬表明をした今後、総裁選で安倍首相は手段を選ばない卑怯な手をあれこれ繰り出すことは必至だ。その言動に、国民は注意を向けていく必要があるだろう。
(編集部)


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