北海道胆振東部地震から5年 震度7地震で日本初の“ブラックアウト”

2023年9月6日(水)4時50分 ウェザーニュース

2023/09/06 05:05 ウェザーニュース

今から5年前の2018年は、西日本豪雨や多くの台風の上陸・接近、大阪北部地震の発生など、自然災害が相次いだ年でした。
9月6日に発生した最大震度7の平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震では多くの人的・物的被害に加えて、道内全域が長期にわたり、「ブラックアウト」と呼ばれる大規模停電が起こりました。
胆振東部地震の被害状況を再確認のうえ、停電が発生した時、さらに二次災害を防ぐために私たちがなすべき正しい行動などについて、まとめてみました。

日本で初めて道内全域でブラックアウト発生

北海道胆振東部地震は胆振地域中東部を震源とするマグニチュード(M)6.7の地震で、2018年9月6日午前3時7分に発生しました。
最大震度は、胆振地域の厚真(あつま)町が7、安平(あびら)町・むかわ町が6強、隣接する日高地域の日高町・平取(びらとり)町と石狩地域の札幌市東区・千歳市が6弱、道央・道南の広い範囲で震度5弱も観測されています。
北海道で震度7が観測されたのは観測史上初めてで、全国的にも2016年の平成28年熊本地震以来、観測史上6回目となりました。
内閣府のまとめによると、人的被害は厚真町の36人を最多に苫小牧市・札幌市など2市3町で死者計42人、重軽傷者計762人でした。住家被害は全壊462棟、半壊1570棟、一部破損1万2600棟に及びました。断水は道内44市町村で最大約6万8000戸、全域での解消は約1ヵ月後でした。
これら人的・物的被害もさることながら、胆振東部地震の被害として特筆されるのが、日本で初めてとなる大規模広域停電「ブラックアウト」です。北海道電力が管轄する道内全域で、最大約295万戸が停電。道内ほぼ9割に電気の供給が開始されるまででも、丸2日近い約45時間を要したとされています。

停電が発生したらどうする?

まず、大規模な地震の際には本震と同程度の余震が繰り返される可能性が高いことを念頭に置いて、以後の行動を判断することは必須です。
危険性がないと判断できれば、最初にやっておきたいことが4つあります。
まず、家の中の電気の一部が消えているのかすべて消えているかを確認します。さらに、自宅だけでなく周辺一帯が停電していた場合、自身の命に危険が及ばないような状況でしたら、まずスマートフォンや携帯ラジオなどで、原因や復旧の見通しなどを確認してください。
最初に自宅で使っている電化製品のプラグをコンセントから抜くことを心がけましょう。復旧した際に通電した電気ストーブやアイロンなど発火性がある器具が燃え出して、火災の原因になってしまうことを防ぐためです。
自宅に留まる場合は、家族全員がリビングなどどこか1ヵ所に集まって、懐中電灯やランタンなど、非常用の明かりを共有するようにしてください。蓄電池などを備えていたとしても、地震や水害など自然災害が原因の停電の際は復旧に長い時間がかかることもあります。できる限り電気の節約が必要です。
冷蔵庫は開かずにそのままで。閉じたままのほうがより長く冷やしておくことが可能になるからです。冷凍庫も応急的な保冷機能を有していますので、あわてて冷凍食品をクーラーボックスなどに移す必要はありません。ただし、停電が長時間に及んだら、適宜移すようにします。
自宅を離れて避難する際は、ブレーカーを切っておくことも忘れないでください。これもコンセントを抜くことと同様の理由で、通電火災予防につながります。

火災などの二次災害予防に努める

停電が復旧したら、「二次災害」の可能性が高く被害を大きくする原因となる火災の予防が、最重要ポイントになります。先に述べた、通電火災の原因となる「すべてのコンセントからプラグを抜く」ことと「自宅を離れるときはブレーカーを切っておく」ことは必須といえます。
さらに電化製品、とくに伝熱器具の上に布や紙などの燃えやすいものがかぶさったり、近くに置いておいたりしないように心がけておくことも大切です。
また、停電の際、自家発電機を絶対に屋内で使用しないでください。発電機を運転した際に出る排気には、一酸化炭素が多く含まれています。中毒によって命に危険を及ぼす可能性があります。
停電が復旧したり、帰宅してブレーカーを復旧させたりする際の手順は、ブレーカーのスイッチがすべて「切(OFF)」になっているかを確認し、「入(ON)」があったら「切」にします。「アンペアブレーカー」(付いていない機器もあります)を最初に「入(ON)」へ。続いて「漏電遮断器」を「入」にします。
続いて「安全ブレーカー」を一つずつ「入」にしていってください。安全ブレーカーを「入」にしても漏電遮断器が自動的に「切」になってしまう場合は、漏電の恐れがあるので、すべてのスイッチを「切」にしたのち、電気工事店などに連絡してください。

停電時に役立つ、家庭でできる備えとは

停電に備えて普段からしておくべき「自宅でできる停電対策」として、次の7つのポイントが挙げられます。
▼リビングや寝室に懐中電灯を置いておく
場所を取らず携帯しやすい懐中電灯は、地域全体の停電時はもとより、自宅のブレーカーが落ちた時の確認用にも重宝します。
家族が集まるリビングに加えて寝室に置いておけば、急な寝起きでもあわてずに済みます。手持ち用のほかにランタンタイプなども含めて、複数用意しておくのがいいでしょう。
▼蓄光テープを危険箇所に貼っておく
暗くなると光る蓄光テープを段差や障害物がある箇所に貼っておくと、リビングに集まったり屋外へ避難したりする際に安全です。
▼携帯ラジオを用意しておく
AC電源を必要としない乾電池タイプの携帯ラジオは、充電式のスマホやパソコンに比べてはるかに長持ちします。さらに真偽もはっきりしないSNSなどに比べて、放送局が発信するラジオの情報は確実です。
最近ではライトが付いていたり手回しやソーラー充電ができたりする「防災ラジオ」も多種市販されています。スマホへの充電機能を持ったラジオもあります。
▼ランタンを自作する
停電の際にランタンを持っていない人は、手持ちの懐中電灯に水の入ったペットボトルを載せるだけで、光を乱反射して周囲を十分に照らすことが可能な自作のランタンになります。
懐中電灯が小さい場合は深めのコップに懐中電灯を入れて、その上にペットボトルを載せるようにしましょう。
▼飲料水や食品を備蓄する
飲料水は、1日あたり1人3リットルを目安に、3日分を用意しましょう。食品は、ご飯(アルファ米など1人5食分を目安)、ビスケット、板チョコ、乾パンなど、1人最低3日分の食料の備蓄を心がけましょう。
▼断水に備える
停電を引き起こす自然災害の際は、同時に水道管の破損による断水の可能性も高まります。
ペットボトル入りのミネラルウォーターや水道水を常に準備しておいて、ローリングストックも心がけましょう。
▼自家発電機を備えておく
工場や病院などに備えられている自家発電機ほど大規模でなくとも、小型の家庭用の製品が市販されています。ただし、先に述べたように屋内での使用は厳禁です。ラジオやスマホの充電なら、手回し式の物で十分です。
自宅の屋根や庭の空きスペースにソーラーシステムの設置を考慮してもいいでしょう。
▼蓄電池を備えておく
蓄電池には室内でも使える据え置き型やポータブルタイプの製品も市販されています。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)には、車体に搭載されているACコンセントに家電製品を接続できるタイプもあります。
最後に、住居が被害を受けた時は片づけや修復に取り掛かる前に、被害の状況をカメラやスマホで撮影しておいてください。自治体が発給する罹災証明書の取得、損害保険の請求などの際に役立ちます。
身の危険がない限り、撮影はなるべく建物の四方向から、浸水被害が生じた場合には水深がわかるようにしてください。車や農機具、物置などの撮影も忘れずに。
屋内では被災した部屋ごとに全景を撮り、被害箇所はアップで。キッチンや洗面台など住宅設備や、家電製品の被害状況も撮影しておきましょう。
今年の9月は北海道胆振東部地震から5年、関東大震災から100年の節目にあたります。また、長引く残暑に伴うゲリラ雷雨の可能性も高く、例年同様に本格的台風シーズンも始まっています。
これを機会に、停電など自然災害による被害への備えを改めて考え、実行に移してみてはいかがでしょうか。

参考資料など

資源エネルギー庁「あらためて学ぶ、停電の時にすべきこと・すべきでないこと」、政府広報オンライン「住まいが被害を受けたとき最初にすること」、同「災害時に命を守る一人ひとりの防災対策」、東京電力「【停電対策】家庭でできる備えや対処法とは?」

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