麻生氏「限られた障害者取り合うと弊害起きる」 障害者雇用水増しに関する問題発言

9月8日(土)7時0分 文春オンライン

 中央省庁による障害者雇用の水増し問題が拡大の一途だ。8月28日に行われた厚生労働省による発表をきっかけに、中央省庁をはじめ、国会、裁判所、地方の行政機関などで次々と障害者雇用の水増しが明らかになっている。


 過去に死亡した職員や強度近視の職員を障害者として参入するなど、悪質な手口も明らかになった。閣僚をはじめとする当事者は今回の事態をどう捉えているのだろうか? 声を集めてみた。



加藤勝信厚労相 ©文藝春秋


加藤勝信 厚労相

「率先して障害者を雇用すべき立場にありながら、こうした事態となったことは誠に遺憾であります。また、障害者雇用政策を推進する立場としても深くおわびを申し上げます」


テレ朝NEWS 8月28日


 先月28日の厚生労働省の発表によると、国の33の行政機関のうち27機関で3460人もの障害者雇用が水増しされていた。これまで中央省庁が障害者として雇用していると公表していた約6900人の職員の半数以上にあたる。


 障害者雇用促進法では、行政機関に対して障害者を2.3%以上雇うように義務付けているが、実際の雇用率は1.19%に過ぎなかった。法定雇用率を下回った場合、民間企業は不足者1人につき納付金を月に5万円支払わなければならないが、国や地方の行政機関にはこのような罰則はない。範となるべき省庁が率先してルールを破っていたことになる。


 加藤勝信厚労相は同日の記者会見で「誠に遺憾」と謝罪したが、原因については「故意か誤解に基づくものか、今の段階で判断するのは困難」と言及を避けた(中日新聞 8月29日)。原因究明は弁護士ら第三者の検証チームに委ねることになる。


水増しは全国の教育委員会や、行政機関でも


 今後については「今年中に雇用率に満たない人数を雇用する努力をしてもらいたい」と強調したが、実際はそれどころではないだろう。障害者雇用の水増しが発覚し続けているからだ。



 7日、新たに衆参両院と国会図書館、裁判所などで計400人以上の水増しが行われていたことが明らかになった。


 そのほか、全国の教育委員会や行政機関でも水増しが続々と発覚している。埼玉県教育委員会では143.5人、千葉県教育委員会では82人、奈良県教育委員会では54人、栃木県教育委員会では39人、大分県教育委員会では66人、神奈川県では知事部局と県教育委員会の合計144人、熊本県でも県職員と教育委員会の合計38人……と、数えるとキリがないほどだ。現時点では少なくとも37府県で不適切な算入が行われていたという。一体なぜこんなことが起こったのだろうか?



水増しが起こったのかは「いつからか検証できない」


中川雅治 環境相

「いつからか検証できないくらいであって、長い間のやり方を踏襲してきた」


『報道ステーション』 8月28日



 31人の水増しがあった環境省の中川雅治環境相は、「長い間のやり方を踏襲してきた」と明かした。実際、各省庁でこのような水増しがいつから始まっていたのか、まったくわかっていない。


 また、中川氏は「障害者手帳の有無を確認する必要性を認識していなかった。認識が不十分なまま長年、(有無を確認しない)やり方が続いていた」「個人情報もあって確認しづらかった面もあると思う」と釈明した(朝日新聞デジタル 8月28日)。


 福島大学の長谷川珠子准教授は「対象となる障害者は原則、障害者手帳を持つ人ということは国が障害者雇用促進法を改正するたびに説明している。各省庁の理解していなかったという理由は信じがたい」と指摘している(日本経済新聞 8月28日)。


「人のせい」×「勝手な基準」の合わせ技


小野寺五典 防衛相

「厚労省からしっかりとした指導を受けていない中で、健康診断とかそういうものを合わせて人数としてカウントしていた」


『報道ステーション』 8月28日



 315人の水増しがあった防衛省の小野寺五典防衛相は「厚労省からしっかりとした指導を受けていない」と釈明し、健康診断の結果にもとづいて障害者を水増ししていたことを明らかにした。人のせいにした上で、よくわからない勝手な基準を持ち出している。


 小野寺氏は「対象となる障害者の範囲について、厚労省と防衛省の認識の共有が十分でなかった」とも釈明しているが(朝日新聞デジタル 8月28日)、だから「障害者手帳を持つ人」なんだってば。


石井啓一 国土交通相

「数が多いのは、母数が多いということにもよるかと思います」


国土交通相ホームページ


 障害者雇用人数の不正算入が約600人に上った国土交通省の石井啓一国交相はで「あってはならないことと重く受け止めており、深くお詫びを申し上げます」と謝罪。


 原因については「厚生労働省のガイドラインと異なり、幅広く捉えて、障害者手帳等の確認を行わずに計上していたことによるものと報告を受けております」と他の省庁と同じく障害者手帳の確認を行っていなかったと話したが、国土交通省が2番目に水増しの人数が多いことを指摘されると「母数が多いということにもよる」とかわした。



もはやクオリティが安定している麻生太郎氏の失言


麻生太郎 副総理兼財務相

「障害者の数も限られていますから、この数を取り合うみたいな形になると、また別の意味での障害、弊害が起きる」


『報道ステーション』 8月28日



 今後、政府は目標の雇用率達成を目指して障害者を雇用していく方針を明らかにした。それに冷水をぶっかけたのは麻生太郎財務相だ。


 水増し数がもっとも多かった国税庁を所管する麻生太郎財務相は「あってはならないことで重く受け止めている」と述べる一方(朝日新聞デジタル 8月28日)、記者会見ではこのような発言を行った。障害者雇用する気がさらさらないように見える。


 そもそも中央省庁が障害者雇用の水増しについて政府が調査を始めたのが8月16日のこと。共同通信の取材に対して不適切な算定を明確に否定したのは警察庁だけで、農林水産省、総務省、国土交通省の三省は不適切な算定の可能性があると回答したものの、大半の省庁は「コメントできない」(財務省)、「厚労省の公表までは回答しない」(法務省)、「申し上げる段階にない」(防衛省)と言葉を濁し続けた(中日新聞 8月18日)。


 安倍晋三首相が加藤勝信厚労相から報告を受けたのは発覚から1週間以上経った24日で、公表が行われたのは28日だった。とてもスピード感のある対応とは思えない。


「自分たちが国の戦力ではないと言われているような出来事」


 水増し問題について、厳しい批判が相次いでいる。日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は「障害者への裏切り。民間企業での雇用促進にも冷や水をかけるものだ」と指摘(YOMIURI ONLINE 8月31日)。障害者を雇用する生花店ローランズの福寿満希代表は「自分たちが国の戦力ではないと言われているような出来事」と厳しく批判した(『報道ステーション』8月28日)。


 自身も脳性まひの子どもを持ち、『障害者の経済学』などの著書がある慶應義塾大学の中島隆信教授は、「嘘をついたのが一番良くなかった」「民間企業でもかなり工夫し、苦労している中、役所に“雇え、雇え”と言うだけでは、なかなか難しい。労働時間が長く働き方も変則的で、人事が硬直的なところにどうやって入れていくかという知恵もセットで出していかないといけない」とコメントしている(AbemaTIMES 9月3日)。10月に発表される第三者委員会の検証結果に注目したい。



(大山 くまお)

文春オンライン

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