【お寺の掲示板70】「ぴえん」もご縁、超えてご恩

9月14日(月)6時0分 ダイヤモンドオンライン

永明寺(福岡)投稿者:matsuzakichikai  [2020年7月8日]

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「ぴえんこえてぱおん」の受け止め方


 今回は「輝け!お寺の掲示板大賞2019」で大賞を受賞した永明寺の掲示板です。住職の松崎智海師がこのことばに説明文を添えてツイートしたところ、約19万5000件の「いいね!」が付き、ネット上で大変話題となりました。説明文でその言わんとするところを多くの方が理解し、共感したのだと思います。以下が松崎師の説明になります。


“ぴえん”は若者の間で流行している泣き声を表す擬態語で、嬉しいことや悲しいことなど泣きたいほどの感情を伝える言葉です。より度合いが強い派生語としての“ぱおん”という表現も生まれ、“ぴえん”と組み合わせた『ぴえんこえてぱおん』は、「JC・JK流行語大賞2020年上半期」流行語大賞コトバ部門で5位にランクインしています。


 この法語が分かりにくい時は『ぴえん』を『悲しみ』と読み替えてみてください。辛いことが続くこの人生ですが、『悲しみ』もまた『ご縁』として受け止め、いつか『ご恩』として感じることができる日が来ることを願っております。永明寺住職


 JCは女子中学生、JKは女子高校生のことです。この説明で意味を理解されたのではないでしょうか。わたしたちは誰しも人生の中で辛く悲しい事態に見舞われることがあります。それは個人的な問題から自然災害まで実にさまざまなケースが考えられますが、今回はアップルを創業したスティーブ・ジョブズの身に振りかかった辛い出来事をご紹介します。


 ジョブズは自らも参画して創業した会社から、30歳の時、突然クビを宣告されました。共同経営者とアップルの方針を巡って争いとなり、追放されてしまったのです。それまでのすべてが失われたことにぼう然自失となり、あまりのショックで数カ月間途方に暮れたそうです。このときのことを、晩年にスタンフォード大学で行った演説の中で、「人生には時としてレンガで頭をぶん殴られるようなひどいことも起こるものなのです。だけど、信念を放り投げちゃいけない」と表現しています。


 ジョブズはここで終わりません。その後5年の間に2つの会社を立ち上げ育てています。


 1つは世界でも有数のアニメスタジオに発展したPixar(ピクサー)で、現在はウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下にあります。長編フルCGアニメーション映画『トイ・ストーリー』などでおなじみですね。


 もう1つは、オブジェクト指向型のオペレーティングシステム(OS)などを開発したNeXTです。こちらは1996年末にアップルにより買収されたことで、41歳のジョブズは古巣のアップルに復帰しました。このOSがアップル復活の大きな原動力となるのです。


 同じ演説の中で、「アップルをクビになったことが結局人生最良の出来事だった」と述べています。自身を絶望に陥れた出来事が、長い時を経て、心の中で最良の出来事へと転換されたのです。


 以前の連載の中で精神科医エリック・バーンのことば「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」をご紹介しました。この言葉の通り、自身の人生の過去に起こった出来事を変えることは決してできません。しかし、わたしたちはジョブズのように心の中で過去の出来事の意味付けを変えることはできるのです。


 お釈迦様が「一切皆苦(人生は思い通りにならない)」とおっしゃっているように、人生は思い通りにならないことの連続です。ご縁にはさまざまなものがあり、時としてレンガで頭をぶん殴られるようなひどい事態にも直面します。


 過去の出来事をおかげさま(ご恩)と受け取れるようになるためには、結局のところ、その出来事をあるがままに受け止め、そこから謙虚に学ぶマインドが不可欠となります。そのためには当然長い時間が必要となりますが、仏教はその心の持ち方を教えてくれます。


 心をしっかり保ちながら、置かれた環境の中で真摯に生活を送っていれば、いつの日か辛く悲しい過去の出来事を「おかげさまで」と受け取れる日が来るのではないでしょうか。


「輝け!お寺の掲示板大賞2020」
ただいま皆さんのご応募を受け付け中です。


当連載をまとめた書籍『お寺の掲示板』が2019年9月26日に発売され、現在8刷となっております。お手に取ってご覧いただければ幸いです。

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