東名「あおり運転」死亡事故 なぜ「無罪」の可能性があるのか?

9月16日(日)7時0分 文春オンライン

「両親のことを思い出すだけで心が折れそうになります」


 昨年6月、東名高速で「あおり運転」をされた車が大型トラックに追突されて夫婦が死亡した事故。発生から1年後、長女はコメントを発表した。


 この事故ではパーキングエリアの通路に車を止めていた石橋和歩被告(26)が静岡市清水区の萩山嘉久さん(当時45)から注意されて立腹し、一家のワゴン車を執拗に追跡。追い越し車線に無理やり停車させて追突事故を引き起こし、萩山さんと妻(同39)が死亡。同乗していた当時高校生と小学生の姉妹も軽傷を負った。



事故直後の萩山さん一家が乗っていた車 ©共同通信社


 残された姉妹は勇気を振り絞って警察に事故直前の状況を訴え、経緯が明らかに。石橋は昨年10月、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などで起訴された。


 そして9月7日、横浜地検は予備的訴因として監禁致死傷罪を裁判所に追加請求したことが明らかになった。


 司法担当記者が解説する。



別の車に追突されたので有罪は取れない?


「神奈川県警は元々、過失運転致死傷容疑で逮捕したが、横浜地検は遺族感情や社会の関心の高さも考慮し、より法定刑の重い危険運転致死傷で起訴した。最高刑は過失運転致死傷が懲役7年、危険運転致死傷が同20年です。しかし危険運転致死傷は本来、危険運転と死傷が直結することが必要。この事故で、萩山さんの車は停止してから3分後に別の車に追突されており、同罪が適用される典型ケースではありませんでした」


 検察側は今回、初公判に向けた公判前整理手続きで裁判所や弁護側と争点などを整理する中、危険運転致死傷では有罪が取れない可能性があると判断したとみられる。監禁致死傷も危険運転致死傷と同じで最高刑が懲役20年だが、「進路を塞いで車を停車させた行為が、法律上の監禁に当たるとする解釈も、決して一般的ではありません」(同前)


 長女は今でも家族で食事をしたり、車に乗ったりしている夢を見ると明かし、「両親は死んでいるはずなのになんで生きているのだろう、これは夢なんだと思っている自分がいるのです」と訴えている。


 事件は今後、裁判員裁判で審理される。どの罪状で有罪となるのか、いずれの適用も無理があるとして無罪となるか——。裁判員制度の趣旨である「健全な市民感覚」がどう反映されるのか注目される。



(「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年9月20日号)

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